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第573話 まだあげ初めし (13)
「冷蔵庫見たら、材料、あんまりなさそうだったけど。」
「おまえが来てから買い物に行く方が効率的だと思って。」
「喜んでいいのか? それ。」
「おまえを優先してるんだ。喜べ。じゃ買い物行く?」
「今? 帰ってきたばかりなのに。」
「お茶飲んで休憩しただろ。」
「それだけだろ。」
「キスもした。」
「キスしかしてない。」
和樹は呆れた顔で涼矢を見た。「それ以上は、後で。」
「買い物して、野菜炒め作って、オムライス作って、食って、風呂入って、その後?」
「そうだよ。」
「枯れてんなぁ。」
「枯れてねえよ。」和樹は立ち上がった。「ほら、行こう、買い物。」
「分かったよ。」涼矢も渋々立ち上がる。玄関に向かう和樹に着いて、2、3歩進んだかと思うと、背後から和樹を抱き締めた。
「何してんの。」
「ハグ。」涼矢は和樹の耳裏からうなじにかけて、鼻先を近づけて匂いを嗅ぐような仕草をする。
「くすぐったい。」
「ん。」
首と肩の間にはついにキスをする。「こら、ダメって。」そう嫌がる素振りも見せずに、和樹が言った。
「ダメ?」
「ダメ。」
「和樹の臍、見たいのに。」
「大して変わりゃしないよ。つか、後で見ろよ、好きなだけ。」
「今、ちょっとだけ見せてよ。」涼矢の手が下腹部のほうに延びる。
「無理。」和樹がその手を制止した。
「なんで。ケチ。」
和樹は顏だけ振り向いて、背後の涼矢を見た。「勃っちゃう。」
「臍見られて、勃つの?」
「おまえ絶対変なことするもん。ちょっと見て終わりなわけない。」
「何もしない何もしない。」涼矢は和樹のズボンのファスナーを下ろすと、前に回った。
「すっげえ嘘くせえ。」笑いながら、和樹は右手でシャツをめくり、左手でズボンを若干下ろし、臍を突きだしてみせた。「ほらよ。」
涼矢は屈んで和樹の腹を見た。「わ、すげ。傷跡、ほとんど分かんないね。知らなかったら全然気づかなさそう。」
「だろ? まあ、他人の臍をガン見する奴もいないしな。」
「俺。」
「そ、おまえだけだよ、そんな物好き。」
「触ってもいい? 痛かったりする?」
「痛くはない、けど。」
「けど、何? 勃っちゃう?」そう言っている時には、涼は和樹の腹部に手を這わせていた。
「触るなって。」腰を引こうした和樹だったが、涼矢はそれを阻止した。腕でしっかり腰をホールドしたまま、和樹の前に跪いた。さっきずり下げたズボンを更に下げる。和樹の「こら。」という声は、しかし、弱々しい。
少しだけ膨らんだそこを、涼矢は下着の上から撫でた。「お久しぶり。」
「馬鹿、挨拶すんな。」和樹は口元を隠すように手を当てながら、顔を赤らめる。
「本当にダメ?」涼矢の手は次第に露骨な動きになっていく。「挿れないから。口で。口だけ。」涼矢は上目遣いで和樹を見た。見下ろす和樹と目が合うと、これ見よがしに口を開け、舌を動かしてみせた。
「……おまえは、それでいいの。」
「うん。とりあえずはね。」そう言いながら、早くもパンツの脇から指を差し入れて、和樹のペニスに直接触れた。
「とりあえずかよ。」
「だって、本番は買い物とメシと風呂の後なんだろ?」パンツの中で、硬さを増しつつあるそれを擦りあげる。
「んっ。」和樹は短く喘ぐと、反射的に腰を引こうとした。
「逃げないで。」涼矢は手の中のペニスをきゅっと握る。
「あ、ちょっ。」和樹がビクリと全身をこわばらせる。
涼矢はパンツをずらして、和樹のペニスを露出させた。「すごい、先走り。」
「るせ、触られんの久しぶりなんだから、しゃあねえだろ。」
「自分でも触ってないの?」
「それはカウントしてない。……んんっ。」
「可愛い。」涼矢はペニスに舌を這わせた。口には含まず、舌先で、小刻みに舐めていく。
「あっ……やっ……。」涼矢は和樹の先端から溢れてくる先走りを舌先で掬い取り、またそれを舌でペニス全体に絡めるようにする。やがてペニスは完全に勃起した。
あられもない水音が響きだすと、ようやく涼矢はそれを口に入れた。唇と舌と口蓋とで、何度も擦りあげた。
「あっ、ダメって、すぐ、イク、から。」
涼矢はカリのところをつかむと一瞬口を離して、「まだ、ダメ。」とだけ言い、再びフェラチオを始めた。
「おまえのそれ、平気なのかよ。」精一杯虚勢を張った声で、和樹が言う。
「はあっへ、いい?」口に咥えたまま、涼矢が言う
「何言ってるか分かんないよ。」
涼矢は片手で和樹のペニスをしごくのを続けながら、もう片方の手で自分のズボンのベルトを緩め、せわしなく中に手を突っ込んだ。「触っていい?」明らかに既に触り始めてから、そう聞いた。
「いいよ。」和樹はフェラチオされながら、自分で股間をまさぐる涼矢を見た。立ったままの自分が跪いた涼矢を見ようとすれば、どうしたって上から見下ろす格好だ。涼矢がやりたがり、やり始めたことではあるが、その構図に妙に昂奮した。徐々に声が出てしまうのも止められない。「あっ……んっ、きもちい、あっ……やば……涼、もっと、ゆっくり……。」
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