585 / 1020
第585話 まだあげ初めし (25)
涼矢は和樹が宏樹のベッドでそうしたように、壁を背もたれにして、和樹の眼前で足を開き、ズボンの中に手を入れた。家から持参した部屋着だ。上はTシャツ、下はウェストがゴムの綿のハーフパンツだから、容易に手は入れられる。
「それ、脱いでよ。見えない。」
「恥ず。」ボソリと言いつつ、涼矢はハーフパンツを脱いだ。「これも?」今度は下着のパンツのウエストゴムを親指で伸ばしてみせた。
「当たり前だろ。」
「エッチだなぁ、和樹さんは。」
「おまえのほうが。」
涼矢はパンツに手を掛けて、止まる。「俺のを見て、楽しいか?」
「何を今更。自分が先にやらせたくせに。」
「俺は楽しいけどさ、和樹の、見るの。」
「じゃあ、俺も楽しませろよ。さっさと脱げ。」
涼矢はパンツを脱いだ。Tシャツは着たままだ。そのTシャツを引っ張って見せる。「これは?」
「それはいいよ、着てて。」
「着衣エロ好きか。」
「馬鹿、寒いかなって思ったんだよ。俺の優しさだっつうの。」
「ははっ。」笑っている涼矢を見て、自分の時とは随分違う、と和樹は戸惑う。明るい部屋で股間を晒しながら自慰をして、それを終始見られて、恥ずかしくてどうしようもなかった。それでいて、挿入される快感を覚えてしまった身としては、そんな視姦だけでも体の奥が疼いて仕方なかった。今も正直、涼矢のそれを見れば、反射的に挿れてほしいと思ってしまう。――でも、今日は。
「ほら、これ使って。」和樹はローションを涼矢に渡す。
「ん。」だが、涼矢はそれをすぐには使わず、ペニスをしごきはじめた。
「ちゃんと後ろもやれよ?」
「うん……でも、もう、さっき結構、ほぐしたから。」
「大丈夫そう?」
「うん。」と言ったきり、しばらく黙る。うつむいて、ただ息を荒くしながら自らの手でペニスを擦る。亀頭をいじる時間が長い。そこが好きなのかな、と和樹は思ったりする。逆の立場で、こんなに黙ったままのマスターベーションをしようものなら、涼矢はもっと声を出せだの自分で広げて見せろだのと要求をするに違いない、とも思った。それをやり返したい気持ちもあるが、そんな淫らな注文をする自分の恥ずかしさのほうが先に立つ。
ようやく涼矢がローションを手にして、自分の指をつぷんとアナルに挿入した。その瞬間だけ「くっ。」という声が漏れ、涼矢の眉間に皺が寄るが、それだけだ。すぐに涼矢はその刺激に慣れ、早くも指を2本にした。
「自分でする時でも、あんまり使ってないんだろ、そっちは。」
「うん、最近……は、ね。」息を荒げているから途切れ途切れではあるが、そんな返事も平気でする。
「前はそうでもなかったんだ?」
「前は……うん。」
「どっちだよ。前は、してたの? こうやって、自分で、指まで挿れて?」
涼矢が顔を上げて、和樹を見た。艶然と笑っている。「そうだよ?」涼矢が自分から足を大きく開いて見せた。「付き合う前は、そう。ここに……んっ……和樹の、挿れてほしいと思ってた。……あっ、んんっ。」薄笑いを浮かべながら挑発し、時々喘ぎが混じる。
「エッロ。」
「ん。そう、おまえ見て、そんなことばっかり、考えてた。」涼矢の指がそこを出入りするたびに、くちゅくちゅと音がする。ローションと体液で泡立つのが、和樹のすぐ目の前に見えた。
和樹は立ち上がり、涼矢を見下ろした。「どういうのがいい? 選ばせてやる。バックが楽かな?」
「顔、見ながら、したい。」涼矢は和樹のほうに手を伸ばす。
「いいよ。」その手を掴んで、涼矢をベッドに横たえらせた。
「キスも。」
「ん。」和樹は涼矢の求める通りにキスをする。舌を出し、絡めながら、涼矢のTシャツをめくっていった。首元まで行くと、涼矢は自分で首からそれを抜いて、全裸になった。和樹のほうはまだ服を着たままだ。そして、露わになった涼矢の胸に舌を這わせ、既に硬くなっている乳首を舐めた。
「あっ。」と涼矢が甘い声を出した。
「おまえ、ほんと乳首好きな。」もう一度そこを舐りながら、もうひとつは指先でこねるように刺激する。
「あんっ。」和樹から逃げるように身をよじる涼矢を和樹は押さえつける。涼矢にまたがって動きを封じたまま、両手で両方の乳首をつまんだりひっぱったりしてみると、その度に涼矢はぴくりと身を震わせ、喘いだ。だが、さほど大きな声は上げない。
和樹は下方へ手を伸ばす。さっき涼矢が自分でいじっていたそこに、指を挿入する。この時ばかりは少しだけ高い声で「あっ」と声を上げる涼矢だった。
「すぐ入りそう。」涼矢の様子をうかがうと、涼矢はコクンと頷いた。「おまえも言えよ。俺に言わせてるやつ。」
「……挿れて。」一瞬のためらいの後、涼矢が言った。一瞬だけでもためらうのを見て、ようやく和樹は自分が主導権を握っている気になれた。――いつも涼矢の言いなりだからな。今日こそ、と思ったのに、こいつときたらオナニーも何も平気な顔でやりやがって。
和樹はズボンとパンツを膝近くまで下ろした。そうして露出させた自分のペニスの根元を支えながら、和樹はゆっくりと挿入を始めた。
ともだちにシェアしよう!