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第599話 fingertips (4)

「そこだろ?」と涼矢は答える。 「そこって?」 「ケツ。」 「ひでえ言い方。」 「いいだろ、もう、言い方とか。」 「はいりたい?」 「ああ。」涼矢は限界が近いのか、眉間に皺を寄せる。そして、腕を顏の上でクロスして、自分のその表情を覆い隠した。 「言ってよ。」 「はいりたい。」 「どこに?」 「和樹の中。熱いとこ。」 「入れるよ?」 「ん。」 「見てて、ちゃんと、俺ん中に入るの。」先端が入りかけた時にそう言われて、涼矢は目隠しを外すように腕を外した。自分の下腹部に和樹がまたがり、そして、その中心に、自分のペニスを咥えこもうとしている。「あっ。……んっ、あっあっ……。」少しずつめり込んでいくのが見えた。「今、カリんとこ。こすられてんの、分かる。」挑発する言葉に、涼矢は興奮した。「あ、デカくなった。」薄ら笑いを浮かべながら、和樹の息はどんどんと荒くなっていく。「あ、いっ……いい、よ。すげ……んっ。」  我慢しきれなくなり、涼矢は和樹の腰を抱くと、下から突き上げた。ぱちゅん、と奥に入り込む音がする。 「あ、急に動いたら。あっ、あんっ。」和樹は背中を反り返して、結合する部分を涼矢に見せつけた。「あっ、いいっ、涼っ。」2人でお互いに上下に動き、刺激を強めていった。抜ける寸前まで行くかと思えば、ズンと奥まで突かれる。「涼矢、すげ、きもちい。」涼矢が手を伸ばしてきて、和樹の両手首を握った。そのまま引き寄せられて、和樹は上半身を倒し、涼矢にキスをした。「あ、抜けちゃ……。」言いかけると涼矢が腰を押さえて強く突いた。「ああっ。」と短く叫ぶ。 「ほんと……熱くて、イキそ。」涼矢が呟いた。 「ん。」和樹は涼矢にキスをすると、再び身体を起こす。「俺、動くから。」そう言うと自らの腰を振った。「イキたくなったら、いいよ。」 「おまえは? イケそ?」 「うん……気持ちい。おまえの、おっきくて、すごい、わかる、形とか。」 「煽るなよ。」  涼矢のその声は届いているのか、そもそも煽るつもりもなくただ口をついて出てきただけだったのか、和樹はとろんとした表情で言い続ける。「ここ、好き、気持ちい……あんっ。」和樹は涼矢のペニスを誘導して、快感を貪った。腰を動かすスピードが速くなる。「あっああっ、いっ、イク、涼、イクッ。」  和樹から放たれた精液は涼矢の胸元まで飛んだ。ほぼ同時に涼矢も和樹の中で絶頂を迎えた。和樹が腰を浮かせて涼矢のペニスを抜いた。コンドームをつけずにしたものだから、股間からはドロリと精液が垂れてきた。和樹はそれを指で掬い取り、舐めてみせた。「昨日もしたのに、濃いね。」 「おまえもだ。」涼矢は舐めるまではしないものの、胸に飛び散った白濁液を掬ってみせた。 「体力だけが取り柄だし。」言いながら、和樹は涼矢の上からどいた。下に敷いたバスタオルを取り、自分の下腹部も拭いた。涼矢は涼矢でティッシュで胸から腹からに飛んだそれを拭う。 「確かに、今ならおまえのほうが体力ありそう。」そう言うと涼矢は丸めたティッシュをゴミ箱に向けて投げた。狙いは外れて、ゴミ箱に当たって外側に落ちた。拾いに行く素振りはしない。「病み上がりとは思えない。今もやってんの、筋トレ?」 「やってるよ。だいたい、病み上がりって、いつの話だよ。入院したのだってひと月以上前だろ。」 「ひと月程度しか経ってない。」 「俺の身体の心配して、損した?」 「そんな風には思わないけど。」涼矢は和樹を抱き寄せた。小さな子を寝かしつけるように、頭と背中をそっと撫でた。「本当に心配はしたよ。無理させてないかって。」 「大丈夫だっつの。」和樹は涼矢の頬に軽くキスした。「なんならすぐにもう1ラウンドできるぜ?」 「俺は無理。」 「今日はもうおしまい?」 「……いや?」涼矢はのっそりと上体を起こした。ポンポンと和樹の頭を撫でる。「メシ食えば復活するだろ。せっかく支度したし。」  和樹は笑い出す。「色気より食い気かよ。」 「いいから、ケツ、洗ってこい。……たく、最近ゴム省略しすぎじゃない?」  和樹は涼矢ににじりより、背後から涼矢の耳元に囁く。「しようとは思うんだけどさ、その時になるとまどろっこしいから。」 「まあ、俺が自分でつけろって話だけどな。」 「そういやそうだ。」  涼矢はニヤリと笑う。「でも、その時になるとまどろっこしいんだよ。」 「あれ、練習しようかな。口でゴムつけるやつ。」 「練習台ならいつでもなってやる。」  和樹はベッドから降りて、涼矢を見た。「だったら、さっさと復活させろよ。おっさんかよ。」笑いながらそう言うと、バスタオルを携え、再びバスルームに向かう。 「おっさんて。あと2ヶ月は同い年だろ。」そこまでは普通のボリュームで言い、そこから先は独り言のように呟いた。「俺、2ヶ月したら20歳(はたち)か。」  和樹が足を止め、涼矢を振り返った。「そうか。」 「え?」 「ハタチ。」 「ああ、うん。そりゃそうだろ。誕生日来れば20歳。」 「去年、初めてここ来て、誕生日祝いでケーキ食べた時にさ。言ってただろ。早く20歳になりたいって。」 「そんなこと言ってた?」 「言ってた。早く大人になりたいって。」

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