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第717話 何日君再来 (7)
「ああ。」涼矢は視線を斜め下に向けて、今日の出来事を思い返している様子だ。「まあ、そうだな。言われてみれば、威嚇だったのかもな。良い話じゃないのは分かってたし、あいつ、どっかで俺のこと舐めてるから。」
「舐めてる? そうか?」
「俺のこと、今でも自分の副だと思ってんだよ。そもそもあいつが俺を副に指名したのだって、面倒くさいことは全部俺にやらせるつもりで。」
「そうなの?」
「そうだよ。言い返すよりとっととやっちゃったほうが楽だから、そうしてたけど。」
「そうかな。そんな風には思わなかったけど。良いコンビだと思ってた。」
「なあ。」
「ん?」
「なんでおまえって、こういう場面で他の男の話するの? 前にもあったよな。」
「あ、ごめ。」言い終わる前に涼矢にまた口を塞がれる。
「もうしゃべるな。」涼矢はいったん体を起こし、服を脱ぎ始めた。和樹もそれに従って自分の服を脱ぐ。
「愛してる、とかもダメ?」笑いをこらえながら和樹が言った。
「それはいい。」
「気持ちいい、とか。」
「それもいい。大歓迎。」
「キスして、とか。」
涼矢は脱いだばかりのズボンをベッドの下に蹴り落とし、再び和樹に覆いかぶさり、キスをした。「それから?」
「触って。」
「どこを?」
「ぜんぶ。」
「こことか?」涼矢は和樹の乳首を摘まむ。
「んっ。」身をよじる和樹を押しとどめ、涼矢は両手で和樹の両の乳首を指先でひねるようにする。和樹のそこが赤くツンと浮き立ってくる。それを更に爪の先でカリカリと刺激した。「も、そこはいい、からっ。」和樹が切なそうに涼矢を見上げた。
「そうだ、さっきの続きって言ったよね。」
ふいに体を離す涼矢。その上、ベッドからも下りようとしているようだ。それを制止しようと和樹が手を伸ばすが、一足早く逃げられる。
「ね、そこに座って。立っててもいいけど。」涼矢は自分から床に膝をついて、和樹を待っている。
――さっきの、フェラの続き、かよ。
和樹は少しがっかりしていた。乳首だけでは物足りなかったが、かと言って口淫を期待していたわけでもない。
――そういうんじゃなくて。もっと、強く、俺の、中を。
そんな風に自分の欲求を自覚すると恥ずかしくてならない。いいかげん「立場」に慣れてもいいとは自分でも思うのだが。だからそれを振り切るように、わざとはすっぱに言ってみた。「俺、突っ込むより突っ込まれたいんだけど。」
涼矢は驚いたように眉をピクリと上げた。だが、すぐににっこりと笑った。「うん、それはちゃんと、後で。」
「後じゃなくて。」
「もう? 今すぐ?」
「おまえだってすぐしたいって言ってたじゃねえかよ。」
涼矢は渋々立ち上がり、元のベッドに戻ってきた。「じゃあ、おまえが準備して。」
「え。」
涼矢は和樹を手で押しやると、ごろんと仰向けに寝転がった。「俺の硬くして、自分で挿れて。」
和樹は涼矢の股間を見る。まだ挿入するほどには勃起していない。それからまた涼矢の顔を見た。涼矢は両手を上げて自分の頭の下で組んでいる。これ見よがしな「和樹にお任せ」の態度だ。
――ああ、そうかよ。そういう態度かよ。
和樹は半分は腹立ちまぎれに涼矢の股間に顔を埋めて、自分がされるはずだったはずのフェラをする。涼矢に対抗して、わざとじゅぷじゅぷと音を立ててみせた。口の中で涼矢のペニスがどんどんと硬く、大きくなっていく。だが、最後まで行かせてしまったら、自分の中に挿れることができない。様子をうかがいながら、少しずつ進めていく。
その時、後頭部に圧を感じた。涼矢が後頭部を押さえつけたのだ。「もっと、奥で。」という声も聞こえた。突然のことに和樹はむせてしまい、逆にペニスを吐き出した。えづくように咳き込んで、涙が滲む。
「ば、馬鹿、急に。」
「……ってのを、今やってやろうと思ったのに。」
「は?」
「口よりもっと奥で。咽喉でするやつ。」涼矢が喉仏のあたりを指で示す。その位置まで挿入できるともしたいとも思わないが、和樹は反射的にゴクリと咽喉をならした。
それでも、たった今、思わず吐き出すほど苦しさを味わったことを思い出して、言った。「俺、イラマなんかする気ねえよ。苦しいじゃん。」
「俺がやってやるんだよ?」
「同じだよ、おまえが苦しいだろ。」
「俺が苦しいのも嫌なの?」
「嫌だよ、そりゃ。」
「和樹さんは優しいな。」涼矢がのっそりと起き上がる。和樹と対面して座る。「あ、なんかこれ、初めての時みたい。」
「へ。」突然変わった話題に和樹が素っ頓狂な声を出す。
涼矢は説明することもなく、和樹のペニスに触れ、自分のと合わせて握る。「あの時は驚いたよね。まさか都倉がああいうことしてくるとは思わなかったから。」
「都倉って言うな。」
「恥ずかしかったな。」
「嘘つけ。俺のほうが、よっぽど恥ずかしい目に。」強がりを言う和樹が徐々に声が上ずってくる。涼矢はその和樹の手を取り、おまえも握れと言わんばかりに2本のペニスを握らせ、その上から自分の手を重ねた。
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