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第718話 何日君再来 (8)

「今はともかく、あの時は頭真っ白だったよ。……和樹がここまでお尻でイケるようになるとも思ってなかったし。」一見、和樹より落ち着いているように見える涼矢だが、やはり頬は紅潮し、息が上がり始めていた。  だが、そんなことを言われれば、当然のように和樹のほうが恥ずかしくなる。涼矢とは比べ物にならないほど真っ赤だ。「言うな。」 「これ、和樹の好きにしていいよ。」涼矢は自分のペニスだけを和樹に握らせ直す。「このまましてたら、ここで出ちゃう。どうする?」 「……挿れる。」  涼矢は和樹の肩を抱き寄せた。耳元で囁く。「どこに?」 「俺の、中。」 「口の中?」 「馬鹿、違っ……。」 「どこに、何を挿れてほしいの? 言って。」 「ふざけんな。」和樹はうつむいた。 「言って。」 「……。」和樹は口をしばらくモゴモゴさせてから、蚊の鳴くような声で言う。「ケツに、涼矢のチンコ、挿れて。」  涼矢が和樹に口づける。耳や、首に、何度も。それから「腰、浮かせて。」と言った。言うとおりにした和樹の腰を持ち、自分の股間近くまで誘う。屹立したものを和樹のアナルに触れさせるが、そこで手を止める。「ゴム、つけてくれる?」  涼矢から手渡されたコンドームを、和樹は素直に涼矢のそれに装着する。一緒に渡されたローションも使う。  そんなことを和樹にさせておきながら、涼矢は立て続けに「自分で挿れてみて。」などと言う。  和樹は一瞬恨みがましい目で涼矢を睨んでから、一転して恥じらうように目を伏せた。そして、ゆっくりと腰を落とし始めた。「んっ……。」和樹は目を閉じて、涼矢のペニスを自分の中に挿入していく。「あっ……は……ぁ。」無意識に声が漏れる。 「好きなとこ、こすっていいよ?」  和樹が流し目するように涼矢を見る。荒い息を吐きながら、和樹は自分で腰を上下させた。「あっ、あっ、あ……。」 「気持ちいい?」 「ん……。」和樹が甘えた声を出す。何かを訴えるような目で涼矢を見た。「気持ちい、けど……。」 「物足りない?」  和樹はコクンと頷いた。 「だよね。」涼矢は和樹の腰をしっかりと抱く。「和樹の好きなとこ、ここでしょ?」下から突き上げる。 「ひ、あっ……!」和樹が涼矢にしがみつく。その間も下から何度も突かれた。「あ、だめ、涼、あっ、やだ、あっ、あっ……。」 「あと、もっと深いとこも。」自分の腰も浮かす勢いで、涼矢は更に突き上げた。「ほら、休んでないで、和樹も動いて。」  そう言われたからなのか、無意識にそうなるのか、和樹も自分で上下する。激しい水音がする。「あっ、や、あ、やだ、そこ、だめっ……。」 「やなの?」 「やじゃない、いい、気持ちいい、涼、好き、もっと。」 「もっと?」 「強く。」 「大丈夫?」 「ん。」  涼矢は和樹を抱きかかえてキスをする。「後ろ、向いて。」  和樹は素直に後背位の姿勢を取った。涼矢はローションを追加すると、すぐに和樹の中に入って行く。 「ああ、んっ……!」和樹もすぐに反応する。待ち望んでいた涼矢のそれを、余すところなく味わおうとするかのように和樹の内側は蠢くが、和樹本人は無意識で知る由もない。 「きっつ。」と涼矢が呟いた。何度も抱いている和樹なのに、初めてこじ開けた時のように締め付けられる。いや、やはり初めての時とは違う。こちらがこじ開けるのではなく、和樹のほうが、ぴったりと吸いつくように迫ってくる。 「涼矢?」ほんの一瞬動きが鈍くなっただけなのに、和樹が顔だけ振り向いて涼矢を見る。続きをねだってるのは明白だ。 「もう。」どうなっても知らないぞ、と思いながら、涼矢は激しく和樹を突いた。そのたびに歓喜の喘ぎを上げる和樹にまた唆されて、更に強く。 「あ、あ、イク……。」やっとその言葉が聞けた時には、涼矢も限界だった。  2人で果てて、涼矢は和樹の背中にもたれるようにして、ペニスを抜いた。その瞬間も和樹がビクッと体を震わせる。 「涼矢。」和樹は体を前に向けて、涼矢に抱きついた。「好き。」 「俺も。」 「すげえ、良かった。」 「ん、俺も。和樹さん、やたらエロいし。」 「そう?」上目遣いで涼矢を見る。その目が既にエロい、と涼矢は思う。和樹を抱き寄せ、またディープキスをする。和樹は「んっ。」と咽喉を鳴らす。そんな生理的な音さえも艶めかしく感じる。  涼矢は和樹の耳たぶを甘噛みして、その耳元に囁いた。「もう1回、いい?」 「いいよ。」和樹はあっさりと了承した。涼矢は和樹の肩を抱いて、ゆっくりと横たわらせた。「すぐ入る。」和樹は自ら足を開いた。  そんな風に露骨に誘いはしても、媚びはしない。そんな和樹の目が、涼矢は好きだと思った。何度抱いても、言いなりにさせても、和樹が完全に「俺のもの」になることはない。追いかけて、つかまえたと思っても、気づけば腕の中にはいない。やっぱり和樹は今でも焦がれてやまない憧れの人だ、と思う。 「足、自分で持って。」そう思いながらも、こんな指示を出す。  和樹はそれも素直に聞いた。涼矢は和樹の足の間に顔を入れ、アナルを舐めはじめた。

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