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第10話 ひとり暮らし(3)

――いつも片手じゃ足りないことしてんの? ああ、後ろも使ってんのか。 「うっせえな。」 ――で、どうするって、とりあえずは握るものなんじゃないの? もしかして手は使わないで床にこすりつけるタイプ? 「いや、握るタイプですけど。」 ――じゃあ、そうして。  和樹は片手を下着の中に入れて、言われた通りにした。 「したけど。」 ――だから、いつも通りにやればいいって。あ、声は出して。 「涼矢は。」 ――聞いてる。 「ずりぃよ。」 ――和樹次第だよ。我慢できなくなったら、俺もするかもね。 「ちくしょ。」  そんなことを言ってはみたが、別に強制はされていない。でも、エミリのいた2週間、思うように性欲処理ができなかったのは事実で、涼矢にそういう声が聞きたいと言われただけで、和樹は既に刺激を受けていた。冗談めかしてテレフォンセックスを誘ったのも、本音で言えば冗談半分などではない、切実な誘いだった。  それをあっさりと断られ動揺したところに、マスターベーションの声を聞かせろとほのめかされたら、断りきれなかった。どうせ涼矢はそこまで見越して俺を翻弄してるんだ。そっちがそのつもりなら、俺だってせいぜい涼矢を煽ってやる。それで俺と同じことやらせてやるからな。  和樹はペニスを握る手を動かし始めた。まだ声は出ないが、涼矢が聞いていると思うと、いつもより早く興奮してくる。 ――触ってる? 「ん。」 ――ホントにやってくれんだ。 「るせ。」 ――黙ってたほうがいいの? 「やだ、何か言え。」 ――うーん、言ったらその通りしてくれる? 「え……と。」  和樹の不安そうな声に涼矢はくすりと笑う。 ――いいよ、いつも通りにやってよ。いつもどうしてんの。しごくの? それとも亀頭責め? 「おまえ、よくそういうことがポンポンと……。」 ――だって毎日考えてるもん。和樹の、そういうこと。 「え。」 ――和樹のそこしゃぶったり、挿れたりしたいし。和樹は考えてくれないの? 「……考えてるよ。」 ――じゃ、今も考えてよ。俺にされてるって想像して。俺の手だと思って。  和樹の手の中で、股間がピクンと反応した。 「……待っ…んっ。」 ――うわ。声って、結構クるな。……続けて。  和樹の息が荒くなってくる。 ――息遣い、聞こえるし。今、こすってんの? 「ん。」 ――気持ちいい? 「ん、あっ……。」 ――どこがいい? カリんとこ? 裏筋も好きだよね? こすりあげるのがいい? 「や……んっ……。」 ――声、もっと出して。 「涼矢ぁ……。」 ――ん? 「いつ来て、くれんの?」 ――俺に会いたい? 「うん……。」 ――そしたら、そんな、一人でしなくてもいいもんね? 「そうだよっ。」 ――それって、俺に会いたいの? セックスしたいだけなんじゃないの? 「馬鹿、そんなわけ、ねえだろ。」 ――本当かなぁ。欲求不満解消だけなら相手いっぱいいるでしょ、和樹。 「いないって。」 ――俺だけ? 「そうだよ。」 ――言ってよ、俺だけだって。 「涼矢だけ……好き……んっ。」 ――会ったら、俺にどんなことしてほしいの? 「……キスとか。」 ――ん。キス、するよ。何回でもね。口だけじゃなくてね、いろんなとこ。今和樹が触ってるとこにも。でも、キスだけじゃないよね? 「……そういうの、もう、やだ……。」 ――恥ずかしい? 「ん。」 ――でも勃ててるんでしょ? 「……。」 ――片手だと後ろ触れなくてもどかしいね? 俺が行くまで待ってて。いっぱい、挿れてあげるから。他の人の、挿れちゃだめだからね。 「……だからっ、そんなん、他の奴としないっ……。」 ――うん。そうして。夏休みになっちゃうけど、絶対行くから。 「そんなに待てない……。」 ――うーん。わがまま言わないで我慢してよ。あ、今はイクの我慢しなくていいよ? 「ん……。あ……んっ……。」 ――気持ちいい? ちゃんと俺のこと、想像してる? 「んっ……涼矢ぁ……好き……あっ……あ……ん、ヤバ、も……。」 ――イキそう? 「……うん……いい?……」 ――いいよ。久しぶりでしょ? いっぱい出して。 「あっ……も……出そ……涼っ。」 ――和樹、好きだよ。 「んんっ。」

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