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第855話 fall in love(14)

「やっぱ変な顔してる。」と涼矢はしかめ面をする。  その顔のほうがよほど「変」だ、と和樹は思ったが言わずにおき、その代わり「してないよ。俺だよ、変なのは。」と言った。 「和樹は笑顔だろ。」 「涼矢は普通じゃん、俺は悪巧みしてるような顔。」 「悪巧みしてたからだろ。」 「あ、そっか。」 「納得するなよ。」涼矢はつい笑ってしまう。 「じゃあ、とりあえずこれはこれとして、ちゃんとしたやつも撮るか。」 「これはこれとするのかよ。」 「自然体で良いだろ。」 「変な顔って言ってたくせに。」 「はいはい、もういいから、もっかい、撮るよ。」  今度は二人ともそれなりに「写真用の顔」を作り、少しずつポーズを変えながら何枚か撮った。 「チューも撮る?」と和樹が言った。 「撮りたい?」 「うん。」 「絶対誰かに見られんなよ?」 「大丈夫だって。」  今一つ信用できないと思いながらも、涼矢は承知した。 「はい、じゃあ、サン、ニィ、イチ。」それと同時に和樹はシャッターボタンを押した。すぐに画面を確認する。「うーん、ちょっとブレたかな。」 「もう一枚撮る?」 「うん。」  そんな会話を繰り返しつつ、結局何枚も撮った。途中からは撮影結果の確認もしないで、連写のようにして撮った。 「やべ、なんかこれ、興奮する。」和樹はスマホを手にしたまま言った。 「写真に撮られてると思うと?」 「そう。」和樹はスマホを無造作に置いた。結局後半の写真は確認せずじまいだ。 「ハメ撮りしたいって言ってたもんな。」 「したいとは言ってねえよ。……けど。」和樹は笑い、涼矢の股間に手を伸ばす。「おまえも結構その気になってるな?」 「俺は写真なんか撮らなくてもこうなる。」涼矢は身体をぐるんと起き上がらせて和樹の上になり、和樹の顔の両脇に手をついた。「このまま続き、したい、けど。」 「……ん。」和樹のほうからも手を伸ばして、涼矢の耳たぶに触れる。それをつまみのようにして涼矢の顔を引き下げ、口づける。「すれば?」 「でも。」涼矢はさっき和樹が置いたスマホに目をやる。その画面は黒いままだが、時刻を気にしていることは和樹にも察せられた。 「シンデレラだもんな。」  最終の新幹線にはもう間に合わない。こうなるのが分かっていたから涼矢だって車で来てくれた。でも、日をまたぐ時間まで引き留めるのは無理だろう。その差はほんの二、三時間程度のものだったが、その時間だけでも長く自分と過ごせるようにと車で来てくれた涼矢を、疲労困憊の状態で帰すわけにはいかない。  けれど、こんな風に素肌で触れ合い、口づけを交わしておきながら、その先に進めないというのも難題だった。 ――ヤるだけなら一時間もありゃ充分だけど。そういうんじゃないんだよな。  和樹がそう思った矢先に、涼矢が言った。「したいけど、挿れて出すだけになりそうだから。」涼矢が和樹の頭を抱え込むように抱く。「今日は、そういう風に抱きたくない。」 「今日は、かよ。」和樹は自分も似たようなことを思っていたことを棚に上げてそう言った。 「ねえ。」 「うん?」 「さっきのアレ、やっぱ和樹が使ってみせてよ。」 「アレって、アレ?」和樹の視線の先にはバイブがある。 「そう。」 「俺が、アレ?」 「そう。お願い。」 「俺一人で?」 「うん。」 「……おまえ、ほんとそういうの好きな?」 「うん。」 「うん、じゃねえよ。言ったろ、アレはおまえがいなくなった時にだな。」 「いない時にどうやってるのか、目に焼き付けておく。」 「余計やりたくねえ。」 「続きしていいっつったろ?」 「それは、バイブじゃなくて、おまえの……!」  言いかけて黙り、顔を真っ赤にする和樹の頬に、涼矢はキスをした。そのまま耳に向かって囁く。「俺の、何?」 「涼矢だってバイブより俺のチンコが良いって言ってただろ。」 「言ったよ?」涼矢は耳の孔に舌先を入れる。和樹の身体がビクッと反応した。「でも、俺はおまえがいないならいないで、ケツは我慢できんの。でもおまえは違うんだろ?」 「やだって。やんねえって。」和樹は腕をクロスさせて、盾にする。 「やってよ。手伝うから。」 「手伝うって……? うわっ!!」涼矢の手が和樹のズボンの中に潜り込んできた。 「慣らすところまでは、一緒に、ね?」涼矢は和樹の手ごとペニスをつかんで、扱き始める。「いつもどうするの? 前も触る? 最初はどこがいいの?」 「……知るか、馬鹿。」罵倒しながらも身体は急に熱を帯び、息も荒くなる。 「テレフォンセックスの時って、服全部脱いでる?」そう言って涼矢は和樹のズボンを下着ごと下ろす。和樹は肩を押しやって抵抗したが涼矢はそれを器用にかわし、逆に和樹の両足をつかむとそのまま開脚させた。 「やだって、やめろ。」懸命に足を閉じようするが、涼矢は和樹の片足を自分の肩にのせ、閉じさせないようにした。 「慣らす必要、ないかな。」涼矢は唾液で濡らした指を和樹のアナルに挿入していく。二本の指がさほどの抵抗もなく埋まっていく。「ほらね。」

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