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第35話 GINGER ALE(12)

 もちろん、涼矢がそれで動きを止めることはない。和樹は、自分の口からそれ以上はしたない声が上がるのを防ぐのを兼ねて、涼矢のペニスを頬張った。それでもこみあげてくる快感に、くぐもった呻き声を上げた。それすらもこらえようとすると瞼を閉じた目からは涙が溢れてきたし、口の端からは唾液がつたってきた。  しかし、たとえ和樹がどんなに必死に口を塞ごうとも、涼矢の眼前のそこは、よほど雄弁に和樹の状態を語っていた。涼矢は、和樹のひくつくアナルから顔をようやく離すと、「和樹のここ、挿れたい。ゴムどこ?」と言った。和樹は涙と唾液をぞんざいに手で拭い、ベッドと壁との隙間からコンドームを出してきた。  そのわずかな合間に、涼矢はベッドから体を乗り出して、テーブルに手を伸ばし、ウーロン茶を口にした。 「のど乾いたの?」和樹の問いかけに涼矢はニッと笑うばかりだった。  ローションは昼間使った時のまま、枕元に転がっている。涼矢はコンドームを装着した上からそれを塗りつけると、和樹の両脚を開かせた。改めて指でもそこをほぐすが、そんなことは必要ないのは明らかだった。ゆっくりと和樹の中へと挿入していく。和樹の身体がビクンとしなる。 「んっ……あ……涼矢……。」和樹が枕をつかんで喘ぐ。涼矢の息はせわしく、荒くなりながらも、ごくゆっくり、ピストン運動を繰り返した。繰り返すごとに、和樹の奥へと入っていく。 「和樹のここ、熱くて……気持ちい……。」涼矢が和樹に微笑みかけるのを、和樹は薄く開けた目で見る。その潤んだ目と、上気した頬と、絶え間なく小さな喘ぎを漏らす口元に、涼矢は衝動的に突いてしまいたくなるが、ぐっと我慢して緩慢な動きをキープした。2人の肌がじっとり汗ばんできた。  やがて、涼矢が和樹の腰を抱いた。「体、起こして。」と囁くように言った。和樹は手を支えにして、言われた通りに上半身を起こす。涼矢のペニスが抜けないように気をつけながら。  対面座位の姿勢が取れたところで、「キスしたくなった?」と和樹が言う。 「うん。」涼矢は和樹に口づける。ねっとりとした、これもまた緩慢なキス。 「もしかして、それでウーロン茶?」長い口づけの後に和樹が言う。 「……ああ。自分のケツの味なんか知りたくねえだろ?」甘美なキスの後にしては下卑たセリフを口にして、涼矢はもう一度キスをした。  言葉の下品さを差し引いても、それはうっとりとするキスだった。お互いの舌を伸ばして、いやらしい音を立てて、2人は何度もキスをした。この数か月分の淋しさを取り返すために必要な儀式のような気がした。昼間のセックスはとにかく性急で、ただひたすらに互いの存在を確認するためだったのに比べたら、ようやく愛の交歓と呼べる行為だった。  和樹は涼矢とつながりながら、軽く膝をつくようにして腰を浮かせ気味にした。そのほうが動きやすいからだ。和樹は涼矢の背中に腕を回して、また激しいキスをした。 「涼矢、好き。大好き。」涼矢にできる限り体を密着させて、和樹は涼矢の耳元でそんな言葉を繰り返した。涼矢は返事の代わりに和樹の首筋を強く吸い、下から和樹を突き上げた。あまり深くは挿れられないが、それが却って和樹の感じやすいポイントを刺激していた。その上、涼矢は和樹のペニスもしごきはじめた。和樹は一気に上り詰めてしまわないよう、自分で腰を動かすのを止めた。 「動いていいよ。自分のいいところに当てて。」涼矢が囁く。 「ゆっくり……イキたいから……。」 「気持ちい?」 「うん。」 「良かった。」涼矢は和樹にキスをする。「大好きだよ。」耳と頬にも。「すげえ好き。」 「ん……。」和樹も涼矢の耳にキスした。それから、再び腰をゆっくりと動かし始めた。涼矢もそれに合わせるように突き上げる。「あっ……涼、いいっ……。」 「俺も……すげ……気持ちいい……。」いつの間にか2人とも汗だくだった。涼矢の毛先からは汗が滴っていた。涼矢は和樹を抱き締めたまま、和樹を横たえらせた。和樹の腰を抱いて、ずん、と奥を突いた。 「あっ、やっ……!」和樹が顔をしかめたのは、痛みからではない。「涼、来てっ……。」 「ん。」涼矢は和樹のペニスをしごきながら、自分もまた和樹の中を激しく往復した。「あ……もう、無理、出る。」 「俺も、イクからっ。」和樹がそう言って程なく、和樹は涼矢の手の中に、涼矢は和樹の中に、迸らせた。

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