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第107話 空蝉(11)

「だからね、その、うちで従妹を預かってたってのは、小学校に上がるか上がらないかぐらいの頃の話で。お風呂なんかも一緒に入ったんだよ。そりゃちっちゃいよな、5、6歳で、その中でも俺、小柄だったんだからさ。でも、叔父叔母は誤解したわけだ。サイズを知ってるってことは、やっぱり相手は俺なのか!!って。従妹は否定したけど、聞く耳持たずで。でも、そのすぐ後に赤ちゃんが出てきて……肌の色とか…目とか髪の色とかで……一目瞭然で、俺の父親疑惑が晴れた。そして、俺はチンコのサイズについての訂正をするチャンスを失った。」 「ち、小さくはないよな。むしろ大きいほうっつうか……。」 「うん。そう。今となったらおまえが分かってりゃそれでいいんだけど。16歳の少年にとっては、なかなかに悲惨な経験だったわけよ。」 「……おまえがその場で誰よりも泣いてたのは、感動じゃなくて、それでか?」 「違うよ、それはそれでちゃんと感動してたよ。ただ、その日のことを思い出すとね、なんとも言えない、辛い気持ちがこみあげる。そして腹が立つ。」 「……からの、八つ当たり。」 「そう。」 「はは。」 「笑いごっちゃねえよ。ほら、不良だった奴が教師や弁護士になると、最初から真面目にやってきた奴より、世間の評価が高かったりするところ、あるじゃない? 従妹ってその典型なんだよ。散々親にも親戚にも迷惑かけたのに、こども生んで、育ててたら、今じゃ若いのにえらいわねえ、みたいな、さ。一方の俺は、すこぶる評判が悪い。そしてチンコが小さいと思われている。」  和樹はたまらず大笑いした。  涼矢もつられて、少し、笑った。笑いながら、「そんなに笑うなよ。」と言った。 「大丈夫だよ、お、おまえのチンコは、充分、でかい……。」笑い混じりに和樹が言う。 「だよね?」涼矢は和樹に覆い被さり、キスをした。 「おお。」と、和樹が歓喜に満ちた声を上げる。 「何だ、その反応?」 「頼んでもなかなかしてくれなかったのに。メガネかけての、キス。」 「そうだっけ。何度もしてる気がする。かけるたびに、おまえがいかがわしい目で見るから。」 「もっかい。」和樹は涼矢の首に腕をまわした。 「ん。」涼矢がもう一度キスをする。  キスされると、ふわ、と自分の体温が上昇するのが分かる。「もっかいして。」  涼矢は数回、軽いキスを繰り返した。  和樹は涼矢をぐいっと自分に引き寄せた。「どうしよ。こんなんで。」早くも硬くなってきた下半身も、涼矢に押しつける。 「早ぇよ。」涼矢は和樹の首を吸った。 「んっ。」  涼矢の手がTシャツの下から入り込んできて、和樹の素肌に触れた。「勉強の邪魔しないって言ってたくせに。」 「お、おまえがっ……! あっ、やぁっ……!!」涼矢に乳首をつままれて、和樹が身をよじった。 「え、俺? 俺はただ、メガネでチューしただけ。それで八つ当たりのお詫びは終了のつもりだったんだけど。」そう言いながら、和樹のズボンを脱がせた。 「やってることと、ちがっ……。んんっ!」涼矢はいきなり、和樹の股間に顔を埋めて、口に咥えた。「や……やめっ!」 「ん? やれれほひい?」 「や……めん、な……。」和樹は涼矢の顔を見る。涼矢は咥えたまま、視線を上げて、和樹と目を合わせた。メガネの奥のその目は、心なしか笑っているようにも見える。「あ、あっ……。」  やがて、涼矢は上半身を起こした。和樹の両脚をつかむと、ぐいっと開かせた。「足、自分で持っててよ。」冷淡に聞こえるほどの言い方で、涼矢は和樹に言い放つ。外からの光がメガネに反射して、和樹から涼矢の表情は良く見えない。――外からの光。そう、まだ昼間だった。容赦ない夏の陽光が部屋に射し込んでいた。その中で、涼矢の前で足を広げている自分。和樹は急に恥ずかしくなった。 「カ、カーテンを……。」  涼矢は手にローションを注いでいるところだった。「無理。手、べとべとだし。ほら、ちゃんと持ってて。」涼矢は和樹の足を和樹自身に押しつけるようにした。和樹は言いなりになるしかない気がして、その恥ずかしいポーズを取った。あんなに焦がれたメガネ姿の涼矢を堪能するどころではない。恥ずかしくて、顔などまともに見られない。横を向いて、目をつぶった。 「ここね、例のホクロ。」そう言って、涼矢は和樹の足の付け根に口づけた。そのまま周辺に舌を這わせる。「明るいし、メガネかけてるから、すっげ、良く見える。」 「……!!」和樹はとっさに涼矢を睨もうとしたが、当の涼矢は自分の股間に顔を伏せていて、表情は見えなかった。そのうち、涼矢が硬く尖らせた舌を、和樹の敏感なところへと差し入れてきた。「あっ……やだ、涼、今日、まだ、きたな……から……。」 「ん。らいひょぶ。」大丈夫、と言っていることは分かった。何が大丈夫なのかは分からない。和樹のほうはあまり大丈夫ではない。ペニスをしごかれながら、アナルを舐められて、大丈夫なはずがない。

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