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第124話 Only you(12)
アパートに着く。終日閉め切っていた部屋は蒸し暑い。
「サウナみてえ。」と言いながら、和樹は真っ先にエアコンをオンにした。
「うん。」涼矢は背後から和樹をハグすると、そのうなじにキスをした。
「汗、すごいから。」
「我慢しなくていいって言った。」
「言ったけど。」和樹は涼矢を押しやった。「シャワーする。」
「いいよ、そんなの、別に。」
「俺がやなの。」
「じゃ俺も一緒に。」
「だめ。」
「なんで。」
「……なんでって、そりゃ……準備とか。」
「俺は気にしないからやってていいよ。」
「とにかく、俺はやなの。」
涼矢はベッドに横たわり、枕を抱えた。「我慢しなくていいって言ったくせに。」
「駄々っ子か!」
「六本木から、ずっと我慢したのに。」
「公園行く前に確認しただろ?」
「あの時は大丈夫な気がしたんだよ。だいたいね、大丈夫かと聞かれたら、危篤でも大丈夫と答えてしまうのが、日本人のメンタルなんだよ。そこを汲み取れよ。」
「今すぐヤリたいってだけのことを、よくもまあそれだけ偉そうに言えるよな。」和樹は着替えを手にして、バスルームへと消えた。
"準備"を終えて、和樹が出てくると、涼矢はベッドの上で寝転がったままスマホをいじっていた。涼矢はすぐに操作をやめた。和樹は確か着替えとしてTシャツも持って行ったはずだが、それは着ておらず、短パンだけ身に着けていた。
「ここで参考書見てたら蹴り入れるところだった。」
「ドキドキして勉強なんか。」
「どの口が言うんだか。」和樹がベッドに上がってくる。「お待たせ。」涼矢に覆いかぶさるようにしてキスをした。
「俺もシャワーしたほうがいい?」
「我慢できないんじゃなかったの?」
「でも、俺だけ汗臭いのは。」
「もう汗なんかひいてるよ。」首筋にも口づけた。「すぐヤリたいんだろ?」
涼矢は和樹の挑発的な言葉に少し驚いたが、キスをして、そして和樹の耳元で囁いた。「うん。我慢できない。」
和樹の身体がほんのわずかにブルッと震えるのが分かった。
「すぐヤリたい。」涼矢は和樹にもう一度口づけ、舌を入れた。和樹からも舌が伸びてきて、2人はひとしきり舌を絡め合った。そして和樹の短パンの中に手を差し入れる。「おまえこそ、もうこんな勃ってるし。やらし。」
「あっ……。」和樹が体をくの字のように曲げて、腰を引いた。
「逃げないで。」涼矢は和樹の腰をしっかりと引き寄せた。それから、離れてしまった和樹の顔を、もう一度ぐいっと自分に近づけて、その耳元で言った。「我慢できないの、和樹だよね?」和樹は何も答えない。ただ言葉で答えるより雄弁に、その紅潮した頬と、潤んだ目が、その真相を物語っている。「自分で準備して、こんななってんの?」
何か言い返そうとして結局何も言わず、また身体を離そうとする和樹の腕を、涼矢はがっしりをつかんだ。そのまま和樹の身体をひっくり返して、今度は涼矢が上になる。「俺に見られて恥ずかしい準備って、どういうの?」
「だから、それがしゃべりすぎって。」
「ああ。」涼矢は和樹の乳首を指で弄った。「その理由、分かった。」
「んっ……。」乳首と股間を弄られて、和樹が身をよじる。
「和樹が黙っちゃうから。」涼矢は耳たぶを甘く噛んだ。「どこが良いとかどうして欲しいとか、言ってくれないから、聞くしかない、でしょ?」
「……好きにすれば……いいし……んっ。」
「好きにしていいんだ?」涼矢は和樹の先端をこすりあげた。
「あっ、んんっ。」和樹が目を強くつむって喘ぐ。
涼矢はいったん体を上げて、服を脱ぎ始めた。ズボンを脱ぐ時に、ベルトを引き抜いた。そのベルトを二重に輪にして、和樹の手首に巻いた。
「え、ちょっ!」焦る和樹を抑えつけ、涼矢は和樹の頭上でベルトを締めた。
「その気になれば抜けるよ。そんなに固く締めてない。」涼矢の言葉に、和樹の顔がカッと赤くなった。唇を噛みしめている。「でも、そんな気にならないだろ?」涼矢はそう言いながら、手にローションを取った。
「ふざけん……っ、うあ、やっ!」涼矢の指が挿入してきて、和樹は激しく反応した。
「いきなり2本入っちゃったし。エロいね。準備って、ここ、自分でほぐしてきたの? そんなことしなくても大丈夫でしょ、毎日ヤッててさ。」
自分の中で蠢く涼矢の指に甘い痺れを感じながら、和樹は喘いだ。自分を辱める涼矢の声も聞こえているが、反論する余裕はなかった。「あっ……や……んんっ……。」
「やっぱ拘束されるの好きだよね? 全然反応違うもん。」涼矢は和樹の短パンと下着を取り払い、両脚をМ字に開脚させた。
「やだ、涼、恥ずか……。」
「恥ずかしいって、アナルプラグ挿れられてよがるとこまで見せておいて、あと何が恥ずかしいの?」
「……黙れ……よ、もう……。」
「じゃあ、そっちが言ってよ。どうして欲しいって。」
「やだ……。」
「わがまま。」涼矢は和樹の胸にキスをして、それから順に脇腹や臍の周辺を舐めていった。その度に和樹の口から甘い喘ぎが漏れてくる。もちろん亀頭を攻める手も休めてはいない。和樹のそこは早くも硬く屹立してきて、その先からは先走りの露があふれていた。
「あ、あ……や……もう、これ、取って……。」和樹が目を潤ませ、懇願してきた。
「取ったらどうするの?」
「……涼矢に触りたい。」
涼矢はハァとため息を漏らす。それは呆れたため息ではなく、うっとりとしたため息だ。「ん、じゃ、触って。」涼矢は和樹のアナルの指を引き抜くと、和樹の顔前にまたがり、自らのペニスを和樹の口元に近付けた。「舌で、俺のここ、触って。」
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