124 / 1020

第124話 Only you(12)

 アパートに着く。終日閉め切っていた部屋は蒸し暑い。 「サウナみてえ。」と言いながら、和樹は真っ先にエアコンをオンにした。 「うん。」涼矢は背後から和樹をハグすると、そのうなじにキスをした。 「汗、すごいから。」 「我慢しなくていいって言った。」 「言ったけど。」和樹は涼矢を押しやった。「シャワーする。」 「いいよ、そんなの、別に。」 「俺がやなの。」 「じゃ俺も一緒に。」 「だめ。」 「なんで。」 「……なんでって、そりゃ……準備とか。」 「俺は気にしないからやってていいよ。」 「とにかく、俺はやなの。」  涼矢はベッドに横たわり、枕を抱えた。「我慢しなくていいって言ったくせに。」 「駄々っ子か!」 「六本木から、ずっと我慢したのに。」 「公園行く前に確認しただろ?」 「あの時は大丈夫な気がしたんだよ。だいたいね、大丈夫かと聞かれたら、危篤でも大丈夫と答えてしまうのが、日本人のメンタルなんだよ。そこを汲み取れよ。」 「今すぐヤリたいってだけのことを、よくもまあそれだけ偉そうに言えるよな。」和樹は着替えを手にして、バスルームへと消えた。  "準備"を終えて、和樹が出てくると、涼矢はベッドの上で寝転がったままスマホをいじっていた。涼矢はすぐに操作をやめた。和樹は確か着替えとしてTシャツも持って行ったはずだが、それは着ておらず、短パンだけ身に着けていた。 「ここで参考書見てたら蹴り入れるところだった。」 「ドキドキして勉強なんか。」 「どの口が言うんだか。」和樹がベッドに上がってくる。「お待たせ。」涼矢に覆いかぶさるようにしてキスをした。 「俺もシャワーしたほうがいい?」 「我慢できないんじゃなかったの?」 「でも、俺だけ汗臭いのは。」 「もう汗なんかひいてるよ。」首筋にも口づけた。「すぐヤリたいんだろ?」  涼矢は和樹の挑発的な言葉に少し驚いたが、キスをして、そして和樹の耳元で囁いた。「うん。我慢できない。」  和樹の身体がほんのわずかにブルッと震えるのが分かった。 「すぐヤリたい。」涼矢は和樹にもう一度口づけ、舌を入れた。和樹からも舌が伸びてきて、2人はひとしきり舌を絡め合った。そして和樹の短パンの中に手を差し入れる。「おまえこそ、もうこんな勃ってるし。やらし。」 「あっ……。」和樹が体をくの字のように曲げて、腰を引いた。 「逃げないで。」涼矢は和樹の腰をしっかりと引き寄せた。それから、離れてしまった和樹の顔を、もう一度ぐいっと自分に近づけて、その耳元で言った。「我慢できないの、和樹だよね?」和樹は何も答えない。ただ言葉で答えるより雄弁に、その紅潮した頬と、潤んだ目が、その真相を物語っている。「自分で準備して、こんななってんの?」  何か言い返そうとして結局何も言わず、また身体を離そうとする和樹の腕を、涼矢はがっしりをつかんだ。そのまま和樹の身体をひっくり返して、今度は涼矢が上になる。「俺に見られて恥ずかしい準備って、どういうの?」 「だから、それがしゃべりすぎって。」 「ああ。」涼矢は和樹の乳首を指で弄った。「その理由、分かった。」 「んっ……。」乳首と股間を弄られて、和樹が身をよじる。 「和樹が黙っちゃうから。」涼矢は耳たぶを甘く噛んだ。「どこが良いとかどうして欲しいとか、言ってくれないから、聞くしかない、でしょ?」 「……好きにすれば……いいし……んっ。」 「好きにしていいんだ?」涼矢は和樹の先端をこすりあげた。 「あっ、んんっ。」和樹が目を強くつむって喘ぐ。  涼矢はいったん体を上げて、服を脱ぎ始めた。ズボンを脱ぐ時に、ベルトを引き抜いた。そのベルトを二重に輪にして、和樹の手首に巻いた。 「え、ちょっ!」焦る和樹を抑えつけ、涼矢は和樹の頭上でベルトを締めた。 「その気になれば抜けるよ。そんなに固く締めてない。」涼矢の言葉に、和樹の顔がカッと赤くなった。唇を噛みしめている。「でも、そんな気にならないだろ?」涼矢はそう言いながら、手にローションを取った。 「ふざけん……っ、うあ、やっ!」涼矢の指が挿入してきて、和樹は激しく反応した。 「いきなり2本入っちゃったし。エロいね。準備って、ここ、自分でほぐしてきたの? そんなことしなくても大丈夫でしょ、毎日ヤッててさ。」  自分の中で蠢く涼矢の指に甘い痺れを感じながら、和樹は喘いだ。自分を辱める涼矢の声も聞こえているが、反論する余裕はなかった。「あっ……や……んんっ……。」 「やっぱ拘束されるの好きだよね? 全然反応違うもん。」涼矢は和樹の短パンと下着を取り払い、両脚をМ字に開脚させた。 「やだ、涼、恥ずか……。」 「恥ずかしいって、アナルプラグ挿れられてよがるとこまで見せておいて、あと何が恥ずかしいの?」 「……黙れ……よ、もう……。」 「じゃあ、そっちが言ってよ。どうして欲しいって。」 「やだ……。」 「わがまま。」涼矢は和樹の胸にキスをして、それから順に脇腹や臍の周辺を舐めていった。その度に和樹の口から甘い喘ぎが漏れてくる。もちろん亀頭を攻める手も休めてはいない。和樹のそこは早くも硬く屹立してきて、その先からは先走りの露があふれていた。 「あ、あ……や……もう、これ、取って……。」和樹が目を潤ませ、懇願してきた。 「取ったらどうするの?」 「……涼矢に触りたい。」  涼矢はハァとため息を漏らす。それは呆れたため息ではなく、うっとりとしたため息だ。「ん、じゃ、触って。」涼矢は和樹のアナルの指を引き抜くと、和樹の顔前にまたがり、自らのペニスを和樹の口元に近付けた。「舌で、俺のここ、触って。」

ともだちにシェアしよう!