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第138話 幾望(8)
「俺が悪い分の謝罪。」涼矢は和樹の頬を撫でた。「女の子扱いしたつもりはない。ていうか、俺、女の子の扱い方なんか分かんないし。」
「……まあ、うん。」
「こっそり計画したつもりもなかった。ただ、たまたま今日、外食することになって。なんか変な入浴剤も届いて。それをしまうとこないから自分のカバンに突っ込んだだけで。ホテルだって、渋谷でホテルの話してた時に、興味本位でネット見て、へえ、この近くにもあるんだなあって思って、そんな程度のことで。そういうことが重なったから、誘って。それだけのことだった。」
「計画的なサプライズH企画ではなかったんだ?」
「俺にそんな芸当、できるかよ。……そのうち行けたら行こうかなぁ程度には思ってたよ、それを計画的って言うなら計画的だけどさ。」
「そか。」
「それに……。」
「ん? まだ何かあんの?」
「女の子扱いをしたんじゃないよ。」
「それはもう分かった。」
「好きな人を喜ばせたかっただけだよ。和樹が以前に女の子を誘った時だって、そりゃヤリたい目的もあったかもしれないれど、つか、それが大半だったのかもしれないけど、好きだったから、そうしたんじゃないの? 少しでも相手を楽しく、快適にしてあげたいと思うから下調べしたり、計画練ったり、してたんじゃないの? それって、女の子だからそうしたってより、好きな相手だからだろ? それは俺もおんなじだと思う。どこでもヤレりゃいいなら、それこそ公衆便所でだってできるんだし。」
「いや俺は公衆便所じゃできねえな。」
「極端に言えばって話だよ。」
「分かってるよ、話の腰折って悪かった。……なんか、おまえの言うことがいちいちもっともで、恥ずかしいんだよ。」
「なんで恥ずかしい?」
「だから、自分と言う人間の器の小ささが。」
涼矢は笑う。「大袈裟な。」
「要は、おまえは俺が好きなんだよな?」
「……なんでそうまとめる。そうだけど。」
「なんか、もういいや。」
「さっきから自己完結してばっかりだな。」
「めんどい。」和樹は涼矢に両腕を回す。「んじゃ、しよ。せっかくのぬるぬる風呂ですし。」
「いきなりですね。」
「おまえが女の子だったら、もう少し段階踏むよ。そうしてほしい?」
「……しなくていい。」涼矢は和樹に口づけた。和樹は涼矢の口の中に舌を伸ばす。
「これ、ヤバイな。」和樹はぬるつくお湯を涼矢の肌に滑らせながら、涼矢にからみついた。
「ヤバイっすね。」涼矢は和樹の首筋にキスをしながら、背骨に沿って背中に指を這わせた。向き合って、涼矢が和樹にまたがっている。軽く腰を動かすだけで、2人の股間がぬるりとこすれあう。
和樹が手を筒にして、涼矢のペニスを軽く握った。「動かしてみ。」
「ちょ、それ、ヤバ…。」そう言いながらも、涼矢は和樹に抱きついて腰を振る。ぬめった和樹の手の中で、自分のものが堅くなっていくのが分かる。
「気持ちいい?」和樹が涼矢の耳に囁いた。
「うん。」涼矢の顔が紅潮する。薄く開いた口から出てくる呼気のリズムが速くなる。
「声、出してよ。そのためにホテル来たんだろ?」
涼矢は目を開けて、和樹を見た。すぐ目の前に見える和樹はニヤリと薄笑いを浮かべていた。そんな和樹を見て、涼矢は自分がそれまで快感に耐えるよう、目をつむっていたことを知る。目が合うと、涼矢は咄嗟に和樹にしがみつくようにした。
「なんだよ、声も聞かせない上に、顔も見せてくれないの? ズルくない?」和樹は言葉で涼矢を弄びながら、涼矢の股間も同じように弄ぶ。
「……意地悪だ。」涼矢が、抱きしめると言うよりは、ヘッドロックでもかけるように和樹に腕を回す。
「どっちがだよ。」和樹は片手で涼矢の腰を支えながら、もう一方の手では涼矢のペニスを柔らかにしごき続けている。「ほら、止まってる。動いて。」
涼矢は再び腰を動かし始めた。ウッともフッともつかない短い息を吐く。涼矢は片手を股間に伸ばし、まずは和樹の手を取り払った。それから自分のペニスと一緒に和樹のペニス、2本同時に握ってこすり上げた。
「あ、てめ、ずり。」和樹が言う。
「一緒のほうがいい。」涼矢は今度は真正面から和樹の顔を見た。5cmほどしか離れていない。「どうしよ、すげ、気持ちい。」息を荒くしながら涼矢は言い、和樹の口を貪るようなキスをした。あまりに勢いよくキスをすると、ともすればぬるつくお湯の中で安定を失いそうになる。和樹に腰を支えてもらえなければ、そのまま転覆してしまいそうだ。
「んんっ。」和樹は涼矢に口を塞がれる。息継ぎするように喘いだ。退けられた手を涼矢の背中に回すが、涼矢の背中もぬるついて、一向にうまく固定できない。
涼矢が股間の手を外し、少し腰を浮かせて体勢を整えようとした時に、和樹のペニスはぬるんと涼矢の尻の間の窪みに入り込んだ。
「入っちゃいそ。」和樹はわざとそれをそのままにして、涼矢のお尻をつかむ。「いい?」
「い……けど。」
和樹は涼矢のそこに指を当て、ゆっくりと押し込んだ。
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