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第139話 幾望(9)

「あっ……。」涼矢が顔をしかめる。 「痛い?」涼矢が顔を横に振るのを確認して、和樹はその指を更に深く挿入させていった。涼矢の、慣れていないそこは、きゅっとしまって抵抗する。しかし、指を揺らしながら丁寧に出し入れを続けて行くと、同じ肉壁の抵抗が、追い出そうという排除の圧から、離すまいと絡みついてくる圧に変わる。 「……あっ……あ、や……あっ……。」普段あまり聞けない、涼矢の淫らな喘ぎが、小さくだが、響き始めた。和樹は挿入する指を増やす。時にぐるんとかきまぜる。「あ、あんっ、かずっ……そこっ……。」 「ここが感じる?」涼矢がうなずくと、和樹はそこを集中して刺激した。 「やめっ……んっ……あ、あっ…あっ……。」徐々に声が大きくなる。 「気持ちいいの?」涼矢が喘ぎながらコクコクとうなずく。「挿れてい?」それにもうなずく。「じゃあ、言ってみ? 挿れてって。」 「い……挿れて……。」涼矢は熱っぽく潤んだ目で和樹を見た。和樹は指を抜き、両手で涼矢の腰を抱く。 「水、入っちゃうかな。でもいっか、なんかぬるぬるして。」そんなことを呟きながら涼矢のアナルに挿入を始める。 「ああっ。」ひときわ大きな声がバスルームに響いた。和樹は下から涼矢を突き上げる。「あっ、あっ、やっ、かず、和樹っ……!」のけぞる涼矢を支えながら、和樹は涼矢の乳首を口に含み、舌先で転がした。「あ、だっ……、あんっ。」涼矢自身も腰を振り、和樹を受け容れる。 「涼、すげ、気持ちいんだけど、やっぱ滑って動きづらい、から。」和樹はふいに涼矢からペニスを抜いた。「そっちで続き、やらせて。」顎で洗い場を示す。まだ息を荒げたままの涼矢は、従順にそれを聞き入れて、洗い場に出る。 「どういうのがいいの? 立ったまま? 四つん這い?」涼矢は濡れた髪をかきあげて、和樹を急かした。 「床に手、ついて。」四つん這いになれという言うのは抵抗があったのか、和樹はそんな言い方をした。涼矢は洗い場の床に肘から先の手と、両膝をつく。和樹はそこにペニスを挿入した。いきなりだったが、涼矢のアナルは待ちかねていたようにすぐに受け容れた。更に自分でもペニスをしごく。 「あっ……ああっ……はぁ……んっ。」  涼矢の喘ぎ声に、和樹の声も混じるようになってきた。きゅうきゅうとしめつける涼矢のそこに、和樹ももう限界が近づいていた。「涼、いい? イキそ……。」 「来て。」  和樹はそれから数回涼矢の中をこすりあげると、絶頂を迎えた。それから、涼矢の手に自分の手を重ねて、涼矢のペニスをしごくのを手伝った。涼矢も程なく果てた。しばらく2人で肩で息をして、少し落ち着くと、和樹は涼矢のそこに再び指を挿れた。今度は、中に放出したものを掻き出すためだ。そのためだと分かっていても、涼矢の身体はビクンと反応した。  部屋のほうに戻り、2人して並んで、ごろんとベッドに横たわった。 「久々に涼矢くんの良い声が聞けた。」和樹は涼矢の耳にキスしながらそんな言葉を囁いた。 「そんなに久々でもないと思うけど。」早くも落ち着いた声で涼矢が言う。 「おまえ、あんま声出さねえし。俺のことばっか言うけど。」 「セックスの時はよくしゃべるって言ってなかった?」 「そういう声でなくて。」  涼矢は寝返りを打つように転がって、和樹に抱きついた。「今日は、おまえの声を聞きに来たの。」 「またそういうこと言う。」 「リクエストは?」 「何の。」 「何のって。えーと、プレイの?」  和樹は笑う。「何プレイがあるの。」 「お好みで、何でも。」 「何でもかよ、すげえな。」和樹は笑う。 「前から言ってるじゃない。生死に関わらなくて違法でなければなんでもするって。あ、パイズリとか、物理的に無理なことは無理だけど。」 「分かっとるわ。」 「気持ちいいもの?」 「何が。」 「パイズリ。」 「……興味あんの?」 「巨乳好きの和樹さんにしてあげられなくて申し訳ないと思ってる。」 「おまえ馬鹿なの?」 「結構切実に思ってるよ、正直なとこ。」 「だーから、前にも言っただろ。大きくても小さくてもそれぞれ良さはあるわけ。」 「それぞれの良さ、ねえ……。」 「なんだよ、不満かよ。」 「不満だねえ……。」 「じゃあ何て言えば満足なんだよ。」  涼矢は和樹のこめかみを押さえて、ぐいっと自分に顔を向けさせた。至近距離に顔を寄せて、言い聞かせるように言う。「女なんかいくら抱いたって物足りない。涼矢にガンガンつっこまれないとイケない。」  和樹がゴクリと唾を飲み込んだ。  涼矢はこめかみの手の力をゆるめて、微笑んだ。「……って言ってくれたら、満足。」  和樹は目を見開いたまま、言葉を失っていた。 「なーんてね。」涼矢は和樹に密着するのをやめ、仰向けになった。  和樹はふいに涼矢の後頭部に手をやり、自分に引き寄せて、キスをした。「女なんかもう抱けない。どんなにおっぱいでっけえお姉ちゃんでも無理。涼矢にガンガンつっこまれないとイケない。」もう一度キスをする。  涼矢も和樹の頭を抱えるようにした。2人は何度も、濃厚なキスを交わした。

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