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第163話 ただいま。(3)

 涼矢の指示を守り、和樹は「ちゃんと」食事を終えた。それから、当たり前のように涼矢の分まで食べ終えた食器を持ってシンクに向かう。 「皿洗いだけは率先してやるよね。」と涼矢が冷やかした。 「だけってこともないだろ。」スポンジを泡立てながら答える。 「ほかには?」 「……ねえか。」 「俺がいなくてもちゃんとやりなさいよ。掃除も洗濯も。」 「今、それが一番恐ろしい。この快適な生活から戻れるかな。」 「快適なんだ?」 「そりゃあねえ。美味しい食事ときれいなお部屋、皺のないシャツ。」 「そう言っていただければ、来た甲斐があるってもんですよ。」  涼矢は洗いものをする和樹の背後に立ち、背後から抱きしめた。涼矢が近づいてきた時から予想していたようで、和樹は特に驚きもしない。 「そのお皿、すごく大事だから、割らないように気をつけてね。」涼矢のために揃えた食器を洗う和樹の耳元で、涼矢が囁いた。 「そんなこと言うなら、ちょっかい出すなよ。」半分笑いながら和樹が言う。 「うん。」そんな言葉とは裏腹に、涼矢は和樹の耳裏に口づけながら、腰を押しつけて密着させた。 「うん、じゃねえよ。」和樹が軽く身をよじる。 「俺が帰った後、和樹は思い出すんだよ。キッチンでも風呂場でもベッドでもエッチしたなぁって。」 「どっかで聞いたようなセリフだな。つか、この狭いワンルームでどこでヤっても変わらないっつの。」 「そう?」涼矢の右手が和樹の短パンの中に入って行く。 「わ。こら、やめろ。」 「もう洗い終わってる。」今日はワンプレートディッシュにスープという献立だったから、洗う皿数も少ない。 「手、が。」和樹はスポンジをシンクに落とし、泡だらけの手を背中に張りつく涼矢に示す。 「お構いなく。」首筋にキスしながら、和樹の股間をなぞる。 「俺が構うだろ。」  和樹の言葉を無視して、涼矢はTシャツの下から手を差し入れ、和樹の乳首に触れた。「ひぁっ。」と和樹が声を上げる。 「可愛い声。」 「馬鹿。」和樹は涼矢を肘でよけて、強引に手を洗った。 「洗っちゃうの。」 「そりゃ洗うよ、てか、離れろよ。」 「やだ。」涼矢は再び和樹を背後から抱きかかえ、わざと股間を押しつけた。 「勃たせてんじゃねえよ。」和樹は後ろ手に涼矢の股間を握る。 「ん。分かった。じゃあ、和樹のを先にね。」そう言ったかと思うと、その場にしゃがみこみ、ついでのように和樹の短パンを下着ごと下ろした。 「馬鹿、何すんだっ。」涼矢は、慌てて振り返る和樹を、その勢いを利用して自分の側に向かせ、両手はシンクのふちに押さえ込んだ。 「何するって……、フェラだけど。」 「ちょま、おまえ。」 「ああ、メイド風がいいんだっけ? 言い直す。これ、舐めさせてください、ご主人様?」 「なんっ……。」涼矢が和樹のペニスを口に含む。押さえ込まれていた和樹の両手も、今は自由だ。だが、そのままシンクのふちで体を支えている。涼矢は和樹のペニスを口全体を使って出し入れすると、そこは少しずつ硬くなり、せり上がってきた。「あっ……。」和樹の息が荒くなる。しばらくは、その快感を存分に味わうように上向きに目を閉じていた。やがてそっと涼矢のほうに視線を落とす。涼矢はしっかりと和樹を見上げていて、目が合った。涼矢は、和樹が自分を見ているのを確かめると、わざと舌先を伸ばして、根元から裏筋を舐め上げてみせた。さっきのオムライスの時よりも、ずっと淫らな、挑発的な視線は、和樹から外さない。「やば。」顔を赤く火照らせた和樹が小声で呻く。 「まだ我慢して。」涼矢がすっと立ち上がり、その場を離れた。 「え、なに。」急に中断されて、若干苛立たしげに和樹が言った。 「アイテム装備。」涼矢は笑って、メガネをかけて戻ってきた。「メガネかけろって言われてたの、思い出した。」 「このタイミングでか。」 「うん。」涼矢は和樹に顔を近づけて言った。「さっきの続きと、キスと、どっちがいい?」 「……キス。」 「さっきまでおまえのチンコ咥えてたけど、いいの?」 「いい。」和樹が涼矢の背中に腕を回す。「キス、して。」 「やっぱ自分からはしないんだ?」涼矢は笑って、キスをした。先に舌を伸ばしてきたのは和樹の方だ。時折薄目を開けて涼矢の顔を確かめる。それを見るのがおもしろくて、涼矢はずっと目を開けていた。「おまえ今、超エロい顔してるんだけど。これもメガネのおかげ?」 「余計なこと言わなくていい。」和樹は涼矢の後頭部を引き寄せ、口を半開きにして、キスを迫る。涼矢はそれに応えて舌を絡め、同時に和樹のペニスに再び手を伸ばした。一時中断して萎えかけていたそこは、キスだけでまた硬さを取り戻していた。 「次、何がいい?」片手でペニスをしごき、せわしなくキスを繰り返す合間に、涼矢が尋ねる。 「次って……? あっ……も……んんっ。」 「だから」和樹の唇を舌で割る。「フェラか」歯を舌先でなぞる。「挿れるのか」舌を絡める。「それ以外とか」 「それ以外って」和樹は、膝に力が入らなくなる。 「なんでも……メガネにぶっかけたいでも」涼矢の口づけは頬に移動する。「縛られたいでも」顎にも口づける。「足でも乳首でも穴でも舐めるし」首筋から鎖骨にも。

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