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第196話 GINGER ALE with KABOSU(9)

 くぐもった喘ぎと、荒く弾む息。ペニスを舐める時の唾液の音。それはもはやどちらのものか、判別付かなくなっていた。ただ、やがてそこに、新たな音が加わった。和樹のアナルに指を出し入れするたびに小さく響く、くちゅくちゅという淫らな音。 「あんっ。」アナルへの刺激に、思わず大きめの声が出た。そのまま身をのけぞらせて快感に浸りたい気持ちを押さえこんで、もう一度頭を伏せて、涼矢のペニスを口に入れる。それでしか声を出さないで済む手段が思いつかない。そのことを知ってか知らずか、涼矢は執拗にアナルをほぐし、奥へと指を沈めていった。時折、指1本ですらきついと感じるほどに、狭めてくる。涼矢を咥えながらの「んっ、んっ」という呻きが、内壁の収縮と連動している。 「も、無理。」和樹がハアハアと乱れた呼吸をしながら、顔を上げる。腰をふるんと振って、涼矢の指を外させた。四つん這いの姿勢のまま向きを変え、顔を見合わす位置で、もう一度涼矢にまたがった。涼矢が上半身を起こそうとするのを、手で制止して「そのまま。」と言った。和樹は涼矢の屹立したペニスに手を添えてゴムを装着させると、腰を浮かせて自分のそこへと当てた。「いい?」と涼矢に確かめる。断られるとも思ってはいないが。  涼矢は枕元のローションに手を伸ばしかけたが、和樹は首を横に振る。要らないと言うことか。確かに、涼矢の唾液でそこは既に濡れている。更に涼矢と自分の先端から溢れ出た透明な液体もそこに使った。  和樹はゆっくりと腰を落とす。口をキュッと結んで声を我慢するが、一番下まで沈めた時には「んっ」という喘ぎがわずかに漏れた。涼矢は和樹の腰を両手でつかむ。 「動く?」涼矢が聞いた。それにも和樹は首を横に振った。 「俺がするから、おまえは寝てろ。」和樹は薄笑いを浮かべて、涼矢を見下ろした。「いつもおまえにばっか、好き放題されてるからな。」そう言って、また少し腰を浮かせ、そして、落とす。そんなことをゆらゆらと繰り返した。奥に当て、浅いところに当て、自分の内壁に涼矢のカリをこすりつける。  涼矢は、和樹をうっとりと見上げる。抑えても漏れ出る喘ぎ声も愛しい。和樹はずっとこちらを見ながら腰を振る。どうだと勝負を挑むような目つきになったかと思うと、次の瞬間には泣きそうに甘えた表情に変わる。自分が和樹の中を貫く時よりは少しペースが遅い気がする。和樹はこのぐらいゆっくりのペースのほうがいいのか、次の時にはそうしよう……などと思うが、きっとその時にはそんな余裕はない。何度抱いても、和樹の中はとろけるように熱くて、すぐに果ててしまいそうになる。今だって、じれったくて仕方がない。下から突き上げて、一気にのぼりつめたい。「和樹。」腰を抱く手に力がこもる。少しだけ、と和樹のペースに合わせて腰を動かした。 「だめ。」和樹が涼矢の手の上から、その手を包み込むように押さえて、動くのをやめさせた。 「だめ? でも、もう……。」 「だめ。」和樹は繰り返した。「今のおまえはな、ただの棒だから。黙って、勃てときゃいいの。」 「ひでえ、俺はディルドかよ。」 「ああ、そう、それだ。」和樹はまた腰を深く浅くと上下させる。「今、俺、おまえでオナってんだよ。そう思ったら、ゾクッとしない? おまえ好きだろ、俺が1人でシテるとこ、見るの。」  ゾクッとした。和樹の言う通りだった。涼矢は一瞬ひるんで、顔を赤くした。和樹もそれに気付く。紅潮した頬によってではなく、自分の中の涼矢のそれが、また更にグッと硬く大きくなったことで。 「変態。」和樹はニヤリと笑って言った。「棒扱いされて、気持ちいんだ?」涼矢を辱める言葉を言いながら、和樹は自分の手をずっと重ねていた、腰にある涼矢の手を取り、自分のペニスを握らせた。「握るだけ。しごくなよ? こっちはオナホなんだから。」 「気持ちいいの、和樹は、そんなので?」なけなしの理性を総動員して、涼矢は言い返す。 「ん。」和樹の腰を上下させるスピードが、少し、早くなった。「いいよ。すげえ、気持ちいい。おまえの、硬いの、当たって……。」ハアハアと息を切らせながら、和樹は言う。上下の動きだけでなく、前後にも動きだして、涼矢の筒型にした手の中にペニスをこすりつけていく。「あっ……く……はぁっ……。」涼矢と視線を合わせたまま、和樹は次第に限界に近付いていく。  限界に近付いているのは涼矢も同じだった。「和樹、ちょっと、やば……。」 「ん。」和樹は動きを止めた。ペニスを握らせている涼矢の手もよけた。2人とも微動だにしないで、ただつながっている部分が、お互いに脈打っているのを感じた。しばらくそうした後に、和樹は涼矢の目を見つめて言う。「動いていいよ。」  涼矢は和樹が言い終わるかどうかという時に、再び和樹の腰に手を据えると、下から思い切り突きあげた。 「あっ、あっ……」和樹は急激で荒々しい攻撃を受け、体をのけぞらせた。当然のように、もう、声量調節などできない。「あっ、やっ、涼っ、すご……。」

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