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第197話 GINGER ALE with KABOSU(10)
涼矢は和樹を抱えたまま、上体を起こした。和樹とリズムを合わせて、お互いに奥に、または浅くと、激しく求めあった。「和樹。」涼矢は片手を和樹の背中に回して、ともすれば弓なりになって自分から離れて行きそうになる和樹を自分に抱き寄せ、もう片方の手で、和樹の顔を自分に向かせて口づけた。その間も和樹は腰を揺らして、自分のアナルで涼矢のそこをしごいた。
「あ、涼、気持ちいい、奥、響く、硬いの、当たって」和樹は激しく喘がなくなって、その代わりにうわごとのように卑猥な言葉を呟き続けていた。涼矢を挑発する意図もあったが、頑なに口を閉ざすより、そうやって、何かブツブツと口にしていたほうが結果的には大声を出さずに済むことに気付いたらしい。そして、言っている内容はすべて本心で、自分がそんな言葉を口にすることで、また昂奮した。「涼矢は? 涼矢は気持ちいい?」
「うん。」涼矢のほうも、頭がクラクラするほど昂奮していた。和樹と逆に何も言葉は出てこない。今はただ、この熱い場所に、放出したいだけだった。
「イキたい?」
涼矢は何度もうなずいた。イキたい。今はそれしか頭にない。
「いいよ。」和樹は涼矢の首に両腕を回し、その耳元で言う。「ほら、今、締めるから、イキな。」和樹はアナルに力を入れて、涼矢のペニスをぎゅうと締めつけた。
「あっ……。」涼矢は和樹の中に射精する。まだそれが萎えきらないうちに、和樹も自分でペニスを軽くしごいて、そのまま自分の手の中に射精した。涼矢にはコンドームをつけたが、自分はつけていなかったから、手は精液にまみれた。
「ティッシュ、取って。」と涼矢に頼むと、涼矢は無言で和樹のその精液まみれの手を取った。「うわ、何、きたねえから。」和樹はとっさに手を引っこめようとしたが、涼矢は離そうとせず、ためらいなくその手に溜まる白濁液を舐めた。「ちょっ、いいよ、そんなこと、しなくて。」
「好きでやってんだから、黙ってて。」涼矢は漏れて手首のほうまで流れ出た分まで、きれいに舐め取る。和樹はその手の平から電流が流れてくるようなほど感じて、体をピクリと震わせた。涼矢のペニスは、まだ和樹の中にあって、和樹が震えると、涼矢のそこも反応した気がした。やがて涼矢は手の平をきれいに舐め取ると、最後に自分の口の周りもぺろりと舐めた。それから、まだ和樹の中の、自分のペニスを、ゴムが外れないように慎重に抜き取った。
「おまえ、マジ変態。」和樹は呆れたように言った。さっき、手の平で「感じた」ことを誤魔化す意味もあった。
「だって、せっかくフェラしてたのに、中断されて。」涼矢は淡々とそんなことを言いつつも、少しずつ顔を和樹に近づけて、最後は耳元まで口を寄せると囁いた。「和樹のセーエキ、味わいたかったんだよ。」
和樹はビクッと震えた。さっき手の平の精液を舐められた時と同じように感じた。耳を犯されているような気さえした。その反応は涼矢も分かったはずで、もうこれで、「誤魔化し」は通用しないだろう。もっとも、手の平の時から、誤魔化せてもいなかったのだろうけれど。
「キスしていい?」涼矢が聞いた。
「いいよ。なんでわざわざ聞くの?」
「嫌かなと思って。」
「なん……ああ、俺の舐めた後だから?」涼矢の返事を聞く前に、和樹は涼矢の腕を握って自分に引き寄せ、キスをした。「嫌じゃないよ。いつでもいい。したい時にすればいい。」
「人前でも?」
「ああ。おまえがいいならな。」
「エロいキスでも?」
「いいよ。」
「ホントにしちゃうよ?」
「いいってば。」
「じゃあ、お隣さんにジンジャーシロップ届けに行く時、一緒に行くからな?」
「へっ?」
「そんでエロいキスして、こういう仲なので、お騒がせしました、そのお詫びですって、言うよ? いい?」
「馬鹿、いいわけあるかよ。」
「じゃあ、いつでも良くないんだな?」
「そんなの、言葉のアヤっての? 考えれば分かるだろ。」
「俺はいつでもどこでも舐めると言ったら、約束を違 えず、ちゃんと言われた時にはやったけどな。和樹は違うんだ。」
「お、おまえな、散々嘘ついてるくせに、どうしてそういう……。ああ、もういいや、どうせおまえの屁理屈にはかなわねえ。」
「俺のこと、好きじゃない?」
「す……。」言いかけて、和樹は黙った。いつもこのパターンだ。たまには。「ちょっと好きじゃなくなった!」
「え。」涼矢は珍しくフリーズする。和樹はようやく一矢報いたと思って、ニヤニヤした。
その時、2人は全裸のまま、ベッドの上で、あぐらをかいて向き合っていた。和樹は目の前で放心している涼矢を見る。和樹の言葉にびっくりしてフリーズしたまでは良い気味だと思っていたが、思いのほかフリーズしている時間が長い。
「えっと……。」涼矢の次の反応を探ろうと、和樹が鼻の頭をかきながら涼矢を引き続き見つめていると、涼矢はうつむいた。あぐらをかいているから、そんな風にうつむきがちになって表情が見えないと、なんだか座禅でも組んでいるかのようだ。その姿勢のまま、またフリーズする。
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