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第220話 夢で逢えたら(12)
「怒っちゃいねえけど。」
「和樹は? シャワーしてくる?」
「しない。俺は臭くて汚いまま寝るぞ。」
「何だよ、それ。」涼矢は再び洗面所に行く。間もなくしてドライヤーの音がしてきた。
和樹は不貞寝するように、布団を自分に巻きつけてベッドに横たわった。壁に向かって、布団ごと体を丸めた。
部屋に戻ってきた涼矢は、その姿を目にしても何も言わなかった。自分が寝るスペースはあるが掛布団は和樹に巻き付いてしまっていて、ない。ただ足元にタオルケットが丸まっているから、それでいいやと思う。そして、この状態でまだ寝る気にはなれない。ベッドに片足だけ置いて身を乗り出し、壁際の布団の塊を揺さぶった。
「和樹さん。」
「うるせえ。」
「名前呼んだだけだよ。こっち向いてよ。」
和樹は顔だけ涼矢に向けた。「早く寝ろよ。明日起きられないと困るんだろ。」
「もう。」涼矢は和樹の隣に寝そべって、布団ごと和樹を抱いた。
「電気消せ。そして寝ろ。」
涼矢は、仕方ない、と言いたげに薄く笑うと、電気を消した。豆球もつけていないから、部屋はキッチンの小窓からのわずかな光だけで、ほぼ真っ暗になった。
「そっちの布団に入れてよ。」布団はどうでもいい。和樹に触れていたかった。
和樹は巻きつけた布団をはがすと、今度は涼矢に巻きつけるようにかけた。「なん、これじゃ、おまえが。」
和樹は足元のタオルケットを引っ張り出して、自分に掛けた。「いい。これあるから。」
涼矢は巻きつけられた布団をはねのけ、和樹のタオルケットも引き剥がした。
「何すんだよ。」和樹が言う。暗闇の中でも表情が分かる程度には目が慣れてきた。怒っているより泣きそうな和樹が見えた。
「手ぐらい握らせてくれてもいいでしょ。」そう言って、しかし、涼矢は手を握らずに和樹を抱きしめた。
「俺、シャワーしてないぞ。」
「臭くて汚いんだっけ。」
「そうだよ。」
涼矢は和樹の耳や首に顔を寄せて、すんすんと鼻をひくつかせた。「臭くないよ。いい匂い。」
その流れのままに、涼矢が和樹に口づけようとすると、和樹は両腕で自分の顔を隠すように覆い、ガードした。「何もしないんなら触るな。」
「キスぐらい。」
「さっきは手を握るだけって。」
「じゃあ、それでもいいから。」涼矢は、和樹がガードしている手に、自分の指を絡めた。これも嫌がられるかもしれない、と思いながら、そっと手をつないだ。和樹は嫌がらなかった。「恋人つなぎ」した手をぎゅっと握ると、同じ強さで和樹からも握り返してきた。それで充分だ、と思って、涼矢は仰向けになる。このまま手をつないで、目を閉じて。和樹の気配を感じながら、眠りに就けるなら、悪くない。「おやすみ。」と言うと、和樹も「おやすみ。」と言った。
目を閉じてからどれだけの時間が経過しただろう。ベッドに入った時には、まだ多少はアパート前の道を誰かが歩くような音が聞こえていた。酔っぱらっているのか少々声が大きくなっている数人が通り過ぎたりもしたし、電話で誰かと話しながら歩く声や、カツカツと足早に過ぎるヒールの音が聞こえてきたりもした。だが、今はシンと静まり返っている。
しかしまだ、涼矢は眠りに就けてはいなかった。和樹はどうだろう。涼矢は目を開けて隣の和樹をそっと窺い見た。
目が合った。そう思ったのは気のせいかと思ったら「まだ、寝てなかったんだ?」と和樹が言ったので現実だと知れた。
「うん。」
それだけ言うと、和樹が抱きついてきた。「眠れない。」
「うん。」涼矢は和樹の頭を胸に抱えた。そこから和樹は顔を上げ、涼矢のほうへと首を伸ばした。涼矢は和樹に口づける。和樹が半開きにした口の中に舌を差し入れる。和樹はすぐにそれに応えて、舌を絡める。
「疲れさせないようにするから、お願い。」和樹が消え入りそうな小声で言う。「このまま帰らせるとか、無理。」
涼矢はいったん勢いよく体を起こしてから、和樹に覆いかぶさった。荒々しく和樹の口を吸う。「優しくできない。」涼矢がキスの合間に言う。
「いい。」和樹は涼矢を強く抱きしめた。涼矢はその和樹の下半身にいきなり手を入れてまさぐった。既に半勃ち状態のそこをしごく。「あっ……いいから、俺のは……涼矢の……好きにしていいから。」早くも和樹の息が上がってくる。
涼矢は和樹の短パンを脱がせ、自分も脱ぐと、和樹のそれと自分のをまとめてしごきはじめた。間もなくして、短く速い喘ぎが2人の口から漏れてきた。
「いきなりでもいい?」涼矢は片手で2本のペニスをしごくのを続けながら、もう片方の手でコンドームを取ると、和樹が返事するより先に、歯で外装を破り、装着した。
「いいよ。」和樹が枕元のローションボトルを涼矢に渡す。涼矢はそれを、暗くて量が良く見えないせいもあって、惜しげなくたっぷりと和樹のアナルに注いだ。
「挿れるよ。」和樹の中心にペニスを埋めていく。熱い肉壁にめりこませていく。
「あっ。」和樹が短く叫ぶと同時に、そこがキュッと締まる。
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