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第304話 NOISE(2)

 涼矢の手が和樹の内腿に触れる。もっと敏感なところには触れそうで触れない。際どいところをすり抜けていくだけの涼矢の指先に、和樹のほうが焦れてくる。涼矢の手を取り、熱く硬くなっているそこに誘った。涼矢は和樹のそれをそっと握って、ゆるくしごく。 「あっ……。」自分で誘っておきながら、久しぶりの涼矢の手の感触にドキッとして、反射的にその手を払おうとした。が、涼矢はそこから手を離さない。「や、だめ。」和樹は懸命に涼矢に触ろうとするが、背中にぴたりと密着している涼矢をうまくつかめないままに、その手はバタバタと空を切った。  涼矢は和樹のその手をつかむ。「暴れるなよ。縛っちゃうよ? あ、そうしてほしくて?」  和樹は無言のまま首を横に振った。 「なんで? 好きじゃなかった?」  和樹は文句のひとつも言いたくなったのか、体を反転させて、涼矢のほうを向こうとした。が、涼矢は羽交い締めするように和樹を押さえつけて、身動きするのを封じている。 「なあ!」和樹は軽く苛立った声を出す。涼矢はそれに答えたつもりか、和樹の股間にあった手を離した。ぴったりと和樹に沿わせていた体も離す。改めて和樹が涼矢のほうを向くと同時に、涼矢はベッドから降りた。和樹は何事かと上半身を起こして、ベッドの上に横座りした。涼矢が何をしようとしているのか分からないままにポカンとしていると、涼矢は何やら手にして戻ってきた。 「はい、手、出して。」 「なんでっ!」 「なんでって、縛るから。」涼矢はベルトを手にベッド脇に立って、和樹を見下ろす。「あ、やっぱ、今日はこっちがいいな。」涼矢はまだポカンとしている和樹の肩を抱いて、再び背を向けさせた。「手、後ろに出して。」 「え、ちょっ……。俺の意見は無視かよ。」 「いちいち聞くのはやめた。聞くなと言われたし。」 「そういうこっちゃねえだろ。」 「良くなかったらやめるから。とりあえず、手、出して。」  淡々と、しかしながら有無を言わさぬ勢いの涼矢の言葉に流されるように、和樹はおずおずと手を出した。涼矢はその手首にベルトをからませ、腰のあたりで後ろ手に拘束する。胸筋を開くように肩が後ろに引っ張られる分、逆に背中の肩甲骨が寄り、その周りの筋肉の形がより盛り上がる。涼矢がその筋肉を確認するように、背筋に沿って撫でた。「すごくきれい。」 「うわ。」背中を撫でられて、和樹はビクンと身を反り返らせた。「へ、変な触り方すんなよ。」 「あのスーツ、どうしたの?」  突然関係のないことを涼矢が言いだす。小嶋からもらった例のスーツは、保護者向け説明会の日からずっとワイヤーラックにひっかけてある。あの数時間しか着ていないから、クリーニングに出すほどでもないと思い、そのままだ。 「塾の先生からもらった。もう着ないからくれるって。」 「和樹に似合いそう。その人もスタイルいいんだね。」そんなことを言いながら、和樹の首筋や肩に口づけ、手は脇腹や太腿を撫でている。 「胃ガンかなんかで……激痩せしちゃったんだ、その人。……だから……今はサイズが……合わなくなって。」和樹は時折漏れそうになる喘ぎに耐えながら言う。 「ああ、そういう事情か。良かった、どこかの偉い人が和樹のこと気に入って仕立ててくれたとかじゃなくて。」 「んなわけな……んっ。」耳を舐められて、つい、切ない声が出る。 「後で、着てみせて。」 「今っ……話す内容じゃ……な……。」脇やみぞおちも撫でられて、ハアハアと息が荒くなる。 「それもそうだね。」涼矢は背後から両手を回して、するりと和樹の太腿の内側に差し入れると、閉じた両脚を左右に開かせるように押した。「足、前に出して、開いて。」と囁く。操られるように、和樹は足を前方に投げ出し、開いた。ただし、開脚の角度は狭い。涼矢は膝裏に手を入れて、持ちあげるようにして和樹の足を浮かせ、その角度を力づくで押し広げた。「はい、ご開帳。」 「や、あっ、てめ、馬鹿。」 「馬鹿って。ひどいな。」和樹が閉じようとする足を押しとどめて、その中心を下着の上から握る。「まだパンツ穿いてるし、そんなに恥ずかしくないでしょ?」  口惜しそうに唇を噛みながら、和樹は顔を後ろに向けた。 「可愛い。」涼矢はその唇にキスをする。キスは嫌がらない。しかし、それもひとつの作戦だったようで、その隙にと和樹は足を閉じようとする。だが、簡単に阻止された。「閉じるなよ。そんな風にするなら、足も縛るよ? あ、そうしてほし……。」  言い切らぬうちに、和樹が否定する。「ちがっ……うっ……あ、やぁっ、あっ……。」しかし、言うことを聞かなかった罰とでも言いたげに、涼矢に急激に強くしごかれて、一気に上り詰めそうになる。 「直接触る?」 「ぃや……だめ……、まだ……。」 「もう少しゆっくり?」涼矢が優しく言うと、和樹はうんうんとうなずいた。涼矢は和樹の首や肩へのキスをしながら、同時にペニスをさすり続ける。いつの間にか涼矢も足を広げ、和樹にぴったりと寄り添いながら包み込むような姿勢になっていた。和樹は腰のあたりに涼矢の硬くなったものが当たるのに気がついていた。

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