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第305話 NOISE(3)
「気持ちいい?」和樹の下着はじっとりと濡れて色を変え始めていた。
「ん……。気持ち……い……。」和樹は目をとろんとさせ、背後の涼矢に寄りかかる。もう足を閉じようとはしない。せわしく息を吐きながら、時折、頭を右に左にと振る。そうしていないと快感の渦に飲み込まれてしまいそうだ。涼矢は和樹のそんな反応を確かめつつ、下着の中へと手を入れた。「あっ、やぁっ……!!」和樹のそこは、下着の上からでもそれと知れたように、既にいきり立っている。「やだ、涼、だめ、すぐ、出ちゃ……。」
涼矢は手を下着から抜くと、今度は片手で和樹の脇腹を、もう片手で肩を抱いた。「そのまま頭伏せて。腰は上げて。」和樹は後ろ手に拘束されているため、腕の支えが利かない。その状態で、前に倒れこむのには多少の勇気が要る。涼矢はそれを見越して肩と腰を支えていた。涼矢が誘導する通りに、静かに前のめりに傾いて、やがて頬を枕につけた。
「体、柔らかいね。筋トレだけじゃなくてストレッチもやってるんだ?」そう言いながら、涼矢は和樹の下着を取り去った。
「やめ、ちょ、恥ず……。」縛り上げられて、うつ伏せになって、腰だけ上げて、涼矢に秘部を晒している。その屈辱的なポーズは果てしなく和樹の羞恥心を煽った。
「脱がなきゃこの先できないでしょ。」
「電気、電気消せ。」
「やだよ。」涼矢はその眼前の後孔にローションを垂らし、つぷんと指を挿入した。「こんな可愛いのに。」
「やっ、あぁんっ。」和樹から甘い声がこぼれてくる。
「キツイね。1人でしなかったの?」
「……してな……い。」
「そっか。オナ禁って言ったの俺だったね。それどころじゃなかったしね。」中指を和樹の中に押し込めて、何度もこすり上げた。
「ふぁっ……あっ……ああっ……やぁ……あっ……あぁっ……!」
「ごめんね。ちゃんと、時間かけて、ほぐすから。」
和樹の喘ぎが一層激しくなる。涼矢は指を追加する。それと並行して左手で和樹のペニスを握ってしごくと、和樹はガクガクと痙攣するように全身を震わせた。
「涼、だめ、イッちゃう、やだぁっ……」
「まだイキたくない?」
「やだ、涼矢の、涼矢のでイキたいっ……」
「……また可愛いことを……。」涼矢が自分の下着を脱ぐ。「そんなこと言われたら、こっちが先にイッちゃいそう。」その言葉通りに、涼矢のペニスも硬く勃っていた。コンドームをつけると、和樹の窪みにあてがった。ほんの入り口に差しかかっただけで和樹が背中をしならせる。
「あっ……あっ……いい、涼、気持ちい……。」
「感じやすくなってる?」浅いところで、ゆっくり抜き差しをする。
「あんっ……あっ……。」
「やっぱ拘束されんの、好きだよね?」
「違っ……久しぶりだから……。」
「そうかなあ。だってもう、とろとろだよ。ゆっくりしてあげようと思ったけど、その必要ないみたい。」涼矢はふいに奥を突いた。
「あっ、いやぁっ。」
「気持ちいい?」
涼矢の問いかけに、和樹は素直にうなずいた。
「どうする? これ、ほどいてほしい?」涼矢は和樹の手首をつかんだ。
「いい、そのままでいいから、もっとっ……。」
「もっと、何?」
「もっと、奥……来て、涼矢の……。」
「ん。」涼矢はズン、と更に和樹の奥を抉った。
「いっぱい、して。」
そう、和樹を俺でいっぱいにする。余計なことを考えないでいいように。不安も、嫉妬も、しないで済むように。和樹の激しい喘ぎに更に煽られ、涼矢のペニスは和樹の中で更に大きくなった。
「あっ、涼、すごい、あ、おっきい……。」誰の手も触れていない和樹のペニスも怒張して、その先端から雫が滴り落ちている。
「気持ちいい?」再びの涼矢の質問は、答えなどとうに分かった上での問いかけだ。喘いで、汗ばむ肌を薔薇色にして、無自覚なのかなんなのか、自分から腰を振る和樹が快感に溺れていないわけがなかった。
「気持ちい、涼、あっ……も、イク、出ちゃう、あっ……あ……。涼は? 涼矢、気持ちいい?」息も絶え絶えになりながら、和樹のほうも質問を返した。だが、その返事を聞く余裕はなさそうだ。「もっと、奥っ、欲し……。涼矢のっ……。」
「和樹、中だけでイク?」
「ん、イク、から、イカせて……っ。」
涼矢は和樹の中を深く浅くかきまぜて、最後は届く限りの奥深いところまで埋め込んで、果てた。
「抜か、抜かないで、俺もっ……。」和樹の肉壁がきゅっと締まる。自分でコントロールしているのだ。涼矢の、果ててもまだ熱を帯びたそこを締め付けて、自分の快感の場所を探し当てると、和樹も射精に至った。
肩で息をしながら涼矢は和樹から抜いて、事後の処理をする。和樹のベルトも外した。
「ふぁ。」涼矢は妙な声を出して、ベッドに倒れ込むようにうつぶせに横たわった。和樹は和樹で、涼矢とは反対に仰向けになる。手首を軽くさすると、ふうと息を吐いて、軽く目を閉じた。
「なんか、和樹、すげえ、エロかった。」ボソリと涼矢が言う。
「いつもと大して変わんねえだろ。」目をつぶり、更に腕を目の上に置いたまま、和樹は答える。はすっぱな物言いは照れ隠しに相違なかった。
「そう?」涼矢はごろんと転がり、抱き枕でも抱くように、和樹に抱きついた。「我慢するの、大変だったんだけど。」
和樹は黙っている。
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