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第321話 NOISE(19)
「フェラして。」仁王立ちの和樹は、寝そべったままの涼矢を見降ろして、そう言った。涼矢は体を起こし、和樹の前にひざまずくとズボンのベルトを緩め、ファスナーを下ろし、ズボンをずり下げた。更に下着もずらして、少し勃っているペニスを口に咥えた。まだ完全に硬くはなっていないそれの根元を支えるように手を添えると、和樹がその手を払うような仕草をした。「手、使うな。口だけ。」
「はい。」涼矢は従順にそう答え、添えていた手を離した。
そんな涼矢に和樹は更に冷たく言い放つ。「スーツ汚すなよ。一張羅なんだから。」
「ふぁい。」咥えたまま、それにも従順に答えた。
熱いな、と和樹は思った。涼矢の口の中に入っている俺の、そこをねぶる、涼矢の舌が。でも、先に勃てていたのは涼矢で。そもそもこんな妙な遊びを仕掛けたのも涼矢だし。こいつはいつもこんなことばっかり。俺に電話でオナニーさせたり、目の前でアナルプラグを使わせたり、手を拘束したり、そんなことばっかり。拒んでも断っても、いつの間にか罠にはめられて、涼矢の思い通りにされる。今だって、こんなこと、したいとも、させたいとも、俺は一言も。突き上げてくる淫靡な刺激を制圧するように、途切れ途切れにそんなことを考えるが、次第に頭がぼうっとしてくる。
「あっ。」和樹はたまらず声を上げた。涼矢の口で完全に勃起していた。涼矢は舌先で裏を舐め上げたり、先端をすするようにしたり、かと思うと咽喉の奥まで咥えこみ、上顎でこすったりした。「あっ……あ、涼っ……。」
思い通りにされて、喘がされて、気が付けば涼矢にしがみついて、もっと深く来てほしいなどと口走っている。はしたなく、快感に溺れてしまう。今だって。
和樹は自分の股間に顔を埋める涼矢を見た。涼矢は一心に口淫を続けていて、乱れた前髪でその表情まではよく見えない。さっき使うなと命じたはずの手は、ペニスを支える代わりに和樹の足を抱え込んでいた。だが、左手だけだ。涼矢の右手は、涼矢自身の股間に伸びていた。
「なに、おまえ、自分でも、いじってんの?」和樹は荒い息を吐きながら、そう言った。
涼矢はペニスを咥えこんだまま顔を上げ、和樹と視線を合わせた。頬は紅潮して、メガネの奥の目は潤んでいる。いかにも物欲しげな表情だが、何も言わない。いつものセックス中なら、涼矢のこんな顔はほとんど見ない。これも「先生の言いなりになる生徒」という役どころに忠実な演技なのか。和樹はいきなり涼矢の額を手で押して、自分の股間から涼矢を引き剥がした。涼矢はぽっかりと口を開けたまま、驚いている。
「いいよ、続けて。」和樹はそのまま背後のベッドに腰掛けた。涼矢は戸惑っている。「続けろよ。自分の、シゴいて。」和樹は重ねて言った。
涼矢は一瞬泣きそうな表情を浮かべて、うなずいた。そして、再び自分の股間のものをしごきはじめた。さっきまでは右手だけだが、今度は両手だ。和樹はそれを眺めながら、ズボンを脱ぎ、皺にならない程度にふわりと畳んで、邪魔にならないところに置いた。
涼矢は軽い前屈姿勢で自慰を続行しながら、和樹のその様子を見て「上、上は脱がないで。」などと言った。
「マジで変態だな、田崎。」和樹は足を伸ばして、涼矢のペニスをぎゅっと押した。んっ、と涼矢が短く呻いた。「返事は?」
「はい。」さっきよりももっと熱っぽい目で、涼矢は和樹を見上げた。見慣れない、しおらしい涼矢に和樹は生唾を飲む。それから、ゆっくりとベッドから立ち上がって下着も脱ぎ、ローションを涼矢に渡した。
「先生を満足させられたら、A評価つけてやるよ。」そう言いながら、涼矢にまたがる。
涼矢はローションを手に取り、向きあった和樹の後孔に手探りで塗り込めた。和樹がピクンを身を震わせると、早くもそのまま指でそこを押し広げはじめた。
「先生、気持ちい?」指でほぐしながら、涼矢が聞く。和樹はいつしか涼矢にもたれかかるようにしていて、小声で、しかし、絶え間なく、喘いでいた。その耳元に涼矢が囁く。「このためにちゃんと準備してたもんね? さすが先生。」
「も、そういうの、いい、から……、これ、脱ぐ。皺んなる。」和樹は涼矢にまたがったままで、上着を脱ぎ、これもズボンと同様にふわりと床に置いた。続けて、ネクタイを緩め、ワイシャツのボタンを2つばかり外す。
「そこまで。」涼矢はやや不服そうに和樹を見た。
「そんなにスーツかよ。」責める口調で言いつつ、和樹は3つ目のボタンを外さなかったし、だらしなく緩められたネクタイもそのままにした。
「それ脱ぐなら、メガネ外すよ?」
「だめ。」和樹が涼矢にキスをした。そこからはお互い、顔中を舐めるようなキスを繰り返した。
「挿れたい。」唐突に涼矢が言った。「いい?」
「先生に向かって。」
「すいません。挿れさせてください。」涼矢はグイッと指に力を入れる。和樹の身体が弓なりにしなる。「先生のここに。」
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