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第332話 SMOKE(7)

「マジかよ。」 「マジだよ。」涼矢は横を向いて、和樹を見た。「おまえに負けたくなかったから。」 「好きだったくせに。」和樹はわざとらしくふんぞりかえってみせた。 「そうだよ。だから、おまえの視界に入っていたかったし、意識されたかったから、そんなことまでした。」涼矢は和樹の後頭部に手を滑り込ませて、引き寄せて、キスをした。「それも運命? 同じ高校入って、同じ部活やって、おまえに出会うために、俺はゲイとして生まれてきた?」 「そうなんじゃないの?」 「俺が女で生まれてくればもっと簡単だったのに、そうは思わないの? 女でも、同じ高校で同じ部活に入って、おまえに出会うことはできただろ? たとえば、エミリ的なポジションで。なんで俺をわざわざ男にしたんだろうね、神様は?」 「エミリ的なポジションで、まあ、見た目も俺好みだと仮定して、中身がおまえの女子がいたとしても、絶対に好きにならねえなあ。」和樹は苦笑した。 「なんでさ。」 「だってストーカーだし、変態だし。やだよ、そんな女。」 「ちょ、なんかひどい。」 「ひどくねえだろ、全然。」和樹は涼矢を下から覗き込むようにして見た。「おまえが男で良かったっつってんだよ?」  涼矢は口元を手で覆った。 「何だよ、今更そんなことで照れてんの。」和樹は顔を隠す涼矢の手を引きはがそうとする。 「だめ、今、超ニヤけてるから。」 「いいじゃん、見たい。手、どけて。」 「やだ。」 「俺にはエロ顔見せろって言うくせに。」 「そういうことを、そういうことをしてない時に言うなよ、恥ずかしい。」涼矢は頑なに手を外さなかった。 「じゃあ、そういうことするぞ。」和樹はくるりと体を反転させて、投げ出されていた涼矢の足にまたがり、向き合った。更には口元の手の甲や、手首にキスをし始めて、涼矢は観念したように手を外した。すかさずその唇にも和樹はキスをする。 「やけに積極的。」 「うん。急にしたくなった。」 「どこにスイッチが。」  和樹は涼矢に抱きついて、その耳元で囁いた。「スイッチはまだ入ってないよ。奥のほうにあるから、涼矢が押してよ。」そのまま耳朶に口づけながら、涼矢の服を脱がせにかかった。 「すっげエロいこと言ってる。」 「それもおまえが男だから、押せるわけだろ?」 「ああ、それで男で良かったって?」涼矢は笑った。 「それもある。」涼矢が自分で服を脱ぎ始めたので、和樹も自分の服を脱ぎ出した。ズボンに移る時にはベッドの上に立ち上がって脱いで、脱ぎ終わったものは床に放り投げた。 「男らしい脱ぎっぷり。」と涼矢が笑った。そう言う涼矢も、脱いではベッド下に蹴り落としている。和樹がその涼矢を押し倒すようにして、またがった。それを見上げて涼矢は「がっついてんなあ。」と笑う。 「悪い?」和樹が涼矢の両肩を押さえつけ、そこかしこにキスをし始めた。 「全然。」涼矢が下から和樹を抱き寄せた。首筋に口づけようとしてやめ、胸に移動してキスをした。乳首を舐めて、そうでないほうの乳首は手探りで探し当てて、爪先で軽く弾く。 「んっ。」早くも和樹から甘く痺れるような声がする。腕立てをするように肘を張り、涼矢から少し身を剥がす。それから人差し指と中指を揃えて、ピストルの真似のように涼矢の鼻先に突き出した。「指、舐めて。」  涼矢は一瞬のためらいも見せずに言われるままに和樹の指を咥えた。舐めさせながら、和樹はもう片方の手で涼矢のペニスを握り、上下にしごいた。のどの奥のほうまで2本の指でいっぱいの涼矢は、呻くように喘いだ。やがて和樹は指を抜いて、そのまま自分の後孔に持って行く。 「いいよ、俺やるよ。」涼矢が上半身を起こそうとするのを和樹は制止した。 「いい。シャワーしてないし、待てない。」 「どしたの、急に。」それならせめてという意味か、涼矢は手を伸ばしてローションをつかみ、和樹の手元に転がした。 「分かんね。なんか。」和樹は顔を紅潮させ、息を荒くしている。潤んだ目も、欲情している証だ。「ねえ、もういい?」和樹によってすっかり勃たされたそれを、きゅっと握る。「挿れさせて?」  涼矢は、観念したようにハアとため息を吐いてから、「好きに動きたい?」と聞いた。 「うん。」言うが早いか、和樹は腰を上げ、乱雑なやり方でローションを足すと、自分で涼矢のペニスを自分の中に誘った。「あっ……。」挿入の瞬間、目をつぶり、少し苦しげな表情を浮かべる。 「大丈夫?」  和樹はうなずいた。そのまま途中まで深く沈めると、再び腰を上げ、自分で中をこするようにした。そんなことを数回繰り返し、その度に小さな喘ぎを上げた。 「浅いとこがいいの?」 「ん。きもちい、ここ。ひっかかるとこ。」 「俺が動いてもいい?」 「うん。」 「このまま、下、なれる?」 「ん。」和樹は涼矢に抱きつくように腕を回した。涼矢がその背中を支えるようにしながら、上下入れ替わる。「あ、やっぱ無理かも。いっぺん抜く。」和樹が涼矢のそれを自分から出した。正常位の体勢を整えてから、涼矢は改めて挿入しようとして、止まった。キョロキョロと視線を動かし、止まったところにあったコンドームへと手を伸ばした。和樹はその腕を握る。「しないで。」

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