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第349話 いつか晴れた日に(4)
「なんっ!」和樹は反射的に指を引き抜いた。
「俺、ここが好きらしい。」涼矢は口を開けて、口の中を指差した。
「へ?」
「顎? 上顎っていうの? ここ。」口蓋を指で示す。
「ふうん?」和樹は一転して興味深そうな表情に変わる。上体を起こし、ベッドの上にあぐらをかいた。涼矢もそれに向き合って、同じように座った。改めて、和樹は今度は自分からその口の中へと指を差し入れた。「ここ?」涼矢が指していた、口蓋の前のほう、硬口蓋の部分に触れる。
「あん。」口を開けたままだから、妙な返事になった。
「ここが、いいの?」
涼矢が頷く。しばらくそうして口の中を指でまさぐると、心なしか涼矢の頬は紅潮して、うっすらと涙目だ。でも、これは、苦しくてこんな風になっているのかもしれない。口の中を他人の指でいじられちゃ苦しくもなるだろう。そう思って和樹は指を抜いた。涼矢は手の甲で口の端の涎を拭う。
「だから、フェラするの、好き。」
「あ……ああ、そう。」こちらの気遣いを無視して、まるで好きな食べ物でも答えるかのように言う涼矢の口調に、和樹はどう反応していいものやら戸惑った。
「今のとこに、おまえの、アレが当たると、気持ちいい。硬くなったやつな。」
和樹はつい吹き出す。「おまえのほうこそ、その言い方。」
「あ、興味ない? 俺の性感帯とか。まあ、いいけど。俺がおまえのイイトコ知ってりゃ、それで。」
和樹は言葉を詰まらせた。そんな和樹に、涼矢はもう一度キスをする。和樹の口を割り、舌を入れる。その舌先をできるだけ硬く尖らせて、歯の裏から、口蓋へと舐めていく。和樹が嫌がらないのをいいことに、ひとしきりそんなことをして、「これ、気持ちよくない?」と聞いた。
「気持ちいい……かも。」
「ね?」涼矢は嬉しそうに笑って、今度は軽いキスをした。
「じゃあ、次は俺がフェラして、試す。」
「だめ。するのはいいけど、その理由はだめ。」
「なんでだよ。」
「和樹のことは、ほかのところで、もっと気持ちよくしてあげる。」
「やーらしいなぁ、おまえ。」
「なんだよ、今更。」
「今更って。自覚はあるんだ?」
「あるよ。」涼矢は和樹の前髪を指先で弄んだ。「和樹をもっと気持ちよくさせたい。」
「自分は?」
「自分もだけど。だって、2人ですることだしね。どっちかだけってわけには。でもとりあえず、和樹が気持ちよさそうだと、俺も嬉しいし、気持ちいいんで。」
「俺だって。」
「そう思ってる?」
「ああ。」
「へえ。」涼矢は和樹の耳のピアスにキスするように耳元に口を寄せ、「じゃあ、して?」と囁いた。
「フェラ?」
「それでもいいけどさ。」
「ふうん。……口、開けろよ。」涼矢が開けた口に、さっきと同様に2本の指を入れる。さっき涼矢が「良い」と言った、硬口蓋を指先で撫でる。涼矢の肩が少し震える。口の中の指を釣り針のようにして、涼矢の顔を自分に近づけさせた。「そのまま、閉じんなよ。」指を抜いて、今度は口角の辺りにキスをした。唇を肌に触れさせたまま角度を変えてまたキスをして、和樹の言いつけ通りにぽっかりと開いている口の中に、舌を伸ばす。ずっと開けたままの涼矢の口からは唾液が垂れてくる。そんな風に口中を犯しながら、和樹は涼矢の乳首をつまんだ。その刺激に涼矢は「んっ」と顔をしかめて、その弾みで和樹の舌を噛みそうになるのを、なんとかこらえた。「涼、乳首も結構好きだよね。」そう言って手の平で転がして、乳首を尖らせた。涼矢の小さな喘ぎが漏れる。それを塞ぐように、口の中への舌先の愛撫を再開させつつ、乳首の手は次第に下腹部に移った。涼矢のそこは、口蓋が性感帯だという言葉を証明するように、硬くなっていた。「マジか。」和樹はふふっと笑った。「気持ちいんだ、そんなに?」
「ん。」
「自分で舐めてもこうなんの?」
「……分かんない。たぶん、ここまでは、ならない。」和樹にペニスをしごかれながら、涼矢が息を荒くする。
「おもしれ。」和樹は片手でペニスを刺激するのを続行しつつ、再び涼矢の口に指を突っ込んだ。今度は4本の指を頬に置いて支点にして、親指だけを中に入れる。上顎を強くこすった。「俺のも、触って。」和樹は涼矢の手で自分のペニスを握らせた。互いのそれをしごきあう。そのうち涼矢が和樹の腰を抱き、少し持ち上げるような仕草をした。涼矢の上に座れという意味だろう。和樹は指を抜いて、涼矢にしがみつくように首に両腕を回した。
「和樹はやっぱ、ここだよねえ。」涼矢はそんなことを言って、和樹の後孔に指を挿れる。
「ひぁ。」分かってはいたものの、つい声が出た。
「可愛い。」涼矢は和樹の首筋を吸う。
「言うなって。」
「挿れていい?」アナルにペニスを押しつけて、涼矢が言った。
「ん。」
「言って? 挿れてって?」
「おまえが挿れたいんだろ。」
「じゃあ、挿れなくていいの?」
「ざけんな。」
「ふざけてないよ。」涼矢は和樹の耳を舐めた。耳の穴まで。「ねえ、言ってよ。お尻に挿れてって。」
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