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第360話 いつか晴れた日に(15)
「ああ。」涼矢は立ち上がり、ズボンについたままだったベルトを引き抜いた。「する?」
別にしてもしなくてもいいんだけど。そんな強がりを言う余裕はなかった。和樹は涼矢から目を逸らして、頷いた。涼矢はそれを冷やかすでもなく、差し出された和樹の両手首をベルトで巻きかけた。だが、途中でやめて、和樹にバックの姿勢を取らせて、後ろ手に巻いた。
「腰、もっと上げて。」涼矢が事務的に言い、和樹はそれに従った。涼矢はいきなり双丘に手をかけて、和樹の後孔に舌先を挿れる。
早速「あんっ。」と和樹は甘い喘ぎ声を上げ、体をビクリと震わせた。涼矢は指で更に押し広げ、舐めてゆく。「や、あっ、涼っ。」片手を和樹の前に回して、ペニスも同時に刺激すると、その孔は独立した生き物のようにヒクヒクと蠢いた。和樹は「いっ。」と、悲鳴にも似た短い声を出す。それは「痛い」ではなく「いい」の筈だった。途端に硬さを増すペニスからも、熱を帯びて薔薇色に染まっていく肌からも、それは如実に伝わってきた。
「気持ちいいの?」涼矢は既に答えが分かり切っている質問をした。
全身を震わせて快感に喘いでおいて、そんなことはないなんて言えない。和樹はうわ言のように「いいっ。気持ちい……。」と答えた。
「次は指でね。」そう言った時には、2本の指を挿れていた。いきなりの2本でも、容易に飲みこまれていく。
「あっ、ああっ。」
「ここ?」前立腺をとらえて、刺激する。
「や、だめ、それ、イク。」
「指でイッちゃうの?」
「やら、指でイクのやだ。」
「じゃ、我満して。」
「や、あんっ。」涼矢は右手の指を挿入させたまま、和樹の脇にずれて左手で乳首もつまみ、こねるようにした。「あ、だめ、涼っ。」
涼矢はアナルの指を抜き、和樹の肩を抱いて座らせた。後ろ手に縛られたまま、体を起こされたので、正座するような姿勢になった。涼矢は背中側から両手を和樹の前面に回して、今度は両の乳首を弄り始めた。「ひぁっ。」和樹の体がのけぞる。「ここも感じるの?」人差し指と親指で捻ると、和樹のそこが赤く膨れる。「縛ると、ホント、エロくなるよね?」
「やだ、やめっ……。」喘ぎながらも、その乳首は更に尖っていく。和樹はもう体を自力で支えることができずに、背後の涼矢にもたれかかっていた。ひとしきり乳首をいじられているうちに、もじもじと股間を気にする気配がした。そんな和樹の耳元で涼矢は囁いた。「お尻も弄ってほしい?」
「……ん。」泣きそうな顔で和樹が頷く。涼矢が和樹のアナルのほうに手を伸ばすと、和樹は軽く腰を浮かせて、挿入しやすくした。
「乳首まで勃てちゃうし、ここはトロトロだし?」涼矢がまた2本の指を押しこんでゆく。「すっげえやらしい顔してるよ。」
「やめ、言うな……ああっ……んんっ。」
「腰、自分で動かしてるの、気がついてる?」
「も、黙っ……。」和樹が顔を背後に向ける。すぐそこに涼矢の顔がある。さっきから辱めるような言葉ばかり言う涼矢に、文句のひとつも言ってやりたくて振り向いたのに、顔を間近に見た瞬間にその気が失せた。「涼っ。」すがるような目で和樹が口を半開きにすると、涼矢は自分の口でそれを塞いだ。「んっ……。」舌を絡めあうキスをした。和樹は涼矢の口蓋にまで舌を伸ばした。一瞬涼矢の指の動きが止まる。
それから和樹は「口でして。」と言った。涼矢は少しだけ驚いたように和樹を見返した。限界近くまで欲情しているのがありありと窺える、紅潮した頬。潤んだ目。弾んだ息。挿入を請われるほうがまだ分かる。何故、今、このタイミングで。「俺の、涼矢の気持ちいいとこに、当てて。」そこまで言われて初めて、和樹が自分の"性感帯"のために言い出したことなのだと理解した。
「口より、ここに挿れたい。……だめ?」涼矢はわざと水音を立てるようにして和樹の中をかき回した。
「あ、ぃやっ……。」
「どっちがいい?」
自分の中から溢れてくる淫らな音を聞きながら、和樹は涼矢を見た。「……そこ、挿れ、て。」
「ん。」
「口、しなくていい?」
「ん、今はこっちのがいい。……挿れるよ。」涼矢は背面の座位の姿勢で挿入する。
「ああっ! あんっ、いい、気持ちい、涼、いっ……。」全部入りきらない内から、和樹が喘ぐ。
「動ける?」
「ん。」和樹は手を拘束されて動きにくいなりに腰を上下させて、涼矢を存分に貪った。「あんっ……あ、ああ、涼、んっ。」
「すげえ、気持ちいい。」涼矢は和樹の背中にキスをする。「すげ、ヤバい、これ。」
「だめ、まだ、イクなよ。」
「だって、すげ、締め付けて。出そ。」
「や、もっとっ。」
「これ以上、したら、出るっ。」
「いい、から、俺も、イク、あっ、あっ、イク、イっちゃう、涼、あっ。」先に達したのは和樹だった。
和樹は涼矢とつながったまま前に倒れて、再びバックの姿勢になった。涼矢は和樹の腰を抱えて、いささか乱暴に腰を振った。ひとまず和樹がイッたのを見届けたから、今は自分の欲望だけに忠実になっていい。頭のどこかでそんな理由をこじつけて、まだ熱い和樹の中を貫き、やがて、射精した。
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