360 / 1020

第360話 いつか晴れた日に(15)

「ああ。」涼矢は立ち上がり、ズボンについたままだったベルトを引き抜いた。「する?」  別にしてもしなくてもいいんだけど。そんな強がりを言う余裕はなかった。和樹は涼矢から目を逸らして、頷いた。涼矢はそれを冷やかすでもなく、差し出された和樹の両手首をベルトで巻きかけた。だが、途中でやめて、和樹にバックの姿勢を取らせて、後ろ手に巻いた。 「腰、もっと上げて。」涼矢が事務的に言い、和樹はそれに従った。涼矢はいきなり双丘に手をかけて、和樹の後孔に舌先を挿れる。  早速「あんっ。」と和樹は甘い喘ぎ声を上げ、体をビクリと震わせた。涼矢は指で更に押し広げ、舐めてゆく。「や、あっ、涼っ。」片手を和樹の前に回して、ペニスも同時に刺激すると、その孔は独立した生き物のようにヒクヒクと蠢いた。和樹は「いっ。」と、悲鳴にも似た短い声を出す。それは「痛い」ではなく「いい」の筈だった。途端に硬さを増すペニスからも、熱を帯びて薔薇色に染まっていく肌からも、それは如実に伝わってきた。 「気持ちいいの?」涼矢は既に答えが分かり切っている質問をした。  全身を震わせて快感に喘いでおいて、そんなことはないなんて言えない。和樹はうわ言のように「いいっ。気持ちい……。」と答えた。 「次は指でね。」そう言った時には、2本の指を挿れていた。いきなりの2本でも、容易に飲みこまれていく。 「あっ、ああっ。」 「ここ?」前立腺をとらえて、刺激する。 「や、だめ、それ、イク。」 「指でイッちゃうの?」 「やら、指でイクのやだ。」 「じゃ、我満して。」 「や、あんっ。」涼矢は右手の指を挿入させたまま、和樹の脇にずれて左手で乳首もつまみ、こねるようにした。「あ、だめ、涼っ。」  涼矢はアナルの指を抜き、和樹の肩を抱いて座らせた。後ろ手に縛られたまま、体を起こされたので、正座するような姿勢になった。涼矢は背中側から両手を和樹の前面に回して、今度は両の乳首を弄り始めた。「ひぁっ。」和樹の体がのけぞる。「ここも感じるの?」人差し指と親指で捻ると、和樹のそこが赤く膨れる。「縛ると、ホント、エロくなるよね?」 「やだ、やめっ……。」喘ぎながらも、その乳首は更に尖っていく。和樹はもう体を自力で支えることができずに、背後の涼矢にもたれかかっていた。ひとしきり乳首をいじられているうちに、もじもじと股間を気にする気配がした。そんな和樹の耳元で涼矢は囁いた。「お尻も弄ってほしい?」 「……ん。」泣きそうな顔で和樹が頷く。涼矢が和樹のアナルのほうに手を伸ばすと、和樹は軽く腰を浮かせて、挿入しやすくした。 「乳首まで勃てちゃうし、ここはトロトロだし?」涼矢がまた2本の指を押しこんでゆく。「すっげえやらしい顔してるよ。」 「やめ、言うな……ああっ……んんっ。」 「腰、自分で動かしてるの、気がついてる?」 「も、黙っ……。」和樹が顔を背後に向ける。すぐそこに涼矢の顔がある。さっきから辱めるような言葉ばかり言う涼矢に、文句のひとつも言ってやりたくて振り向いたのに、顔を間近に見た瞬間にその気が失せた。「涼っ。」すがるような目で和樹が口を半開きにすると、涼矢は自分の口でそれを塞いだ。「んっ……。」舌を絡めあうキスをした。和樹は涼矢の口蓋にまで舌を伸ばした。一瞬涼矢の指の動きが止まる。  それから和樹は「口でして。」と言った。涼矢は少しだけ驚いたように和樹を見返した。限界近くまで欲情しているのがありありと窺える、紅潮した頬。潤んだ目。弾んだ息。挿入を請われるほうがまだ分かる。何故、今、このタイミングで。「俺の、涼矢の気持ちいいとこに、当てて。」そこまで言われて初めて、和樹が自分の"性感帯"のために言い出したことなのだと理解した。 「口より、ここに挿れたい。……だめ?」涼矢はわざと水音を立てるようにして和樹の中をかき回した。 「あ、ぃやっ……。」 「どっちがいい?」  自分の中から溢れてくる淫らな音を聞きながら、和樹は涼矢を見た。「……そこ、挿れ、て。」 「ん。」 「口、しなくていい?」 「ん、今はこっちのがいい。……挿れるよ。」涼矢は背面の座位の姿勢で挿入する。 「ああっ! あんっ、いい、気持ちい、涼、いっ……。」全部入りきらない内から、和樹が喘ぐ。 「動ける?」 「ん。」和樹は手を拘束されて動きにくいなりに腰を上下させて、涼矢を存分に貪った。「あんっ……あ、ああ、涼、んっ。」 「すげえ、気持ちいい。」涼矢は和樹の背中にキスをする。「すげ、ヤバい、これ。」 「だめ、まだ、イクなよ。」 「だって、すげ、締め付けて。出そ。」 「や、もっとっ。」 「これ以上、したら、出るっ。」 「いい、から、俺も、イク、あっ、あっ、イク、イっちゃう、涼、あっ。」先に達したのは和樹だった。  和樹は涼矢とつながったまま前に倒れて、再びバックの姿勢になった。涼矢は和樹の腰を抱えて、いささか乱暴に腰を振った。ひとまず和樹がイッたのを見届けたから、今は自分の欲望だけに忠実になっていい。頭のどこかでそんな理由をこじつけて、まだ熱い和樹の中を貫き、やがて、射精した。

ともだちにシェアしよう!