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第370話 君と見る夢(7)
「なんだよ、面倒くせえ。」文句を言いつつ、和樹は言うとおりにする。「した。」
――だって、そうしないと、後ろ、触れないだろ?
「なっ。」
――で、和樹、風呂出たまんまってこと?
「そうだよ、全裸 だよっ。」
――全裸でオナニーって意外としないよね。風呂場でそうなっちゃった時ぐらいで。
「何言ってんだ、おまえ。」
――あ、よくやるの?
「……しねえけどもっ。今は、その、風呂入ってた時に、そうなったからっ。」
――でも風呂場で一人でしないで、電話かけてくれたんだ? 俺としたくて。嬉しいよ。風邪ひかないようにね。
「うっせ。もう、余計なことはいいから。」
――ごめん、でも、俺も今準備中なんで。
「脱いだの?」
――いや、ハンズフリーにした。脱がなくても、パジャマはスウェットだから伸縮自由で大丈夫。
「俺だけ裸かよ。」
――そう、和樹だけ裸。それでこれから、俺の指示に従ってくれるわけだ。いい感じのシチュエーション。
「ちょま、ちげえよ、今日はちゃんと……。」
――はいはい、ちゃんと2人で行こうね。
その時、かすかに、ん、という掠れた吐息が聞こえた気がした。
「もしかして、おまえ、触ってる?」
――触ってるよ。だって、和樹はもう、勃ててんだろ?
「……前の時みたく、俺ばかり恥ずかしい思いさせんなよ。あっ、それから録音もするな。」
――しないよ。それより、一緒にしたいんなら、もうちょっとムード出せよ。
「じゃあ、おまえが先やれ。エロ声聞かせろよ。」
――どっちがいいの?
「どっちって?」
――俺がシコってんのが聞きたいの? それともやらしいこと言われたい?
「え。」
――え、じゃないだろ。どっちでもいいよ? 和樹の好きなほう。
「……おまえがやってるとこ。」
――いいよ。……今、ズボン……スウェットのね、上から触ってる。でも、見て分かるぐらい勃ってる。
和樹は生唾を飲んだ。
――スウェットの中、手ぇ入れて、触ってもいい? パンツ穿いてるけど。
「触れよ。」
――うん。……あっ。
その僅かな喘ぎに、和樹はドキリとした。
――あ、やべ、すげぇクるわ。和樹に聞かれてると思ったら。
「さっきより勃った?」
――んっ。もう、ちょっと、パンツ、濡れた。
和樹も自分のそれを握る。初めから全裸で、濡らす下着もないから直接だ。既に先端から溢れはじめて、しごくと淫らな音を立てた。きっと涼矢よりも。そんな自分の音は聞くまいとして、涼矢の喘ぎに集中した。和樹もつられるように声が出るが、無意識にスマホと反対を向いて、声を聞かれないようにしていた。
――かず、聞いてる? なんか言って。
「聞いてるよ、声、やらしいな。」
――直接触っていい?
「いいよ、おまえ、カリんとこ弱いだろ。そこ、下から、撫でて。」
――あっ……やばっ……。和樹は? 触ってる?
「ん。」
――ほんとに?
「本当だよ。」和樹はスマホを口元に寄せた。「もう、すげえ濡れてる。涼矢がエロいから。」
――後ろは?
「まだ。」そう言って、しまったと思う。まだってことは、これからするつもりみたいじゃないか。
――後ろも触ってよ。指、挿れて。
案の定、じっとりと湿った息を合間に挟みながら、涼矢はそんなことを言い出した。
「……挿れ、た……。」
――1本?
「ん……。」
――中指?
「そ、だよ……。」
――前も?
「今は、後ろだけ。」
――前も触ってよ。
「そんなんしたら。」
――すぐイッちゃう?
「ああ。」
――じゃあ、2本挿れて。
「えっ。」
――俺のだと思うには、1本じゃ細すぎるだろ。
「馬鹿、だったら、3本でも、足りねえよ。」ドキドキして、息が荒くなるから、一気には喋れない。「奥も、自分の指じゃ、届かねえし。」
――うわ、ちょっ……。
「なん、だよっ。」もう少しでイキそうなところで、涼矢に邪魔された気がして、つい責め口調になる。
――和樹が急にやらしいこと言うから。
さっきまでと違い、妙に落ち着いた涼矢の声。
「おい、まさか。」
――先イッちゃった。ごめん。
「早えよ、俺、どうすんの。」
――そのまま続けろよ。相手するから。
「おまえ、本物の時は時間かけるくせに。」
――だってそういう時は、そんなやらしいこと言ってくれないでしょ。指が届かないとか。
「うっせ。」
――まだ入ってる?
「……てるよ。」
――奥じゃなくても気持ちいいとこ、あるだろ? 今どのぐらい挿れてんの?
「知るかよ、ちょっとだよ。」
――第2関節まで挿れて。
「……ん。」
――そんで、第1関節を曲げたあたり。そのへん、おまえのいいとこ。指で押して。
「第1関節曲げるとか……。」
――できない? 指先のほうに力入れればできるよ。
「あっ。」
――来た?
「なんっ……か。」
――ほかと違う感じのとこ、あるだろ?
「これ、て。」
――気持ちい?
「変な、感じ。」
――俺と違う?
「ん。」
――気持ちよくない?
「い、けど。もっと……。」
――もっと、何?
「もっと気持ちい、から。おまえの。」
――あぁ、そういうこと言うと、また。
「勃つ?」
――勃った。
「はは。」
――よがりながら笑うんじゃねえよ。
「そっちこそ。」
――もうちょっと、らしいこと言ってよ。
「そっちが言え。」
――足開いて、挿れてって言って。
「ざけんな。」
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