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第402話 bless you! (7)

「違っ……。だって、さっき……2人きり、に、なれるとことか……言ってた、から……。」 「ああ、カツ丼の時の話? ホテルにでも行くと思った?」  和樹は顔を赤くして、黙りこむ。 「なんだ、期待してたんじゃない、そっちも。」涼矢は自分のズボンを緩め、必要最低限だけ下げて、自分のペニスを露出する。片手で和樹のペニスをしごきながら、もう片方で自分のそれをしごきはじめた。「俺と、したかった?」  和樹は上気した頬をますます赤く染める。 「したくない?」涼矢は自分の先端から溢れる液体をまとわりつかせた指に、更に自分の唾液を垂らして濡らし、和樹のアナルへと挿入していった。 「ああっ。」和樹の体が一瞬ピンと張りつめて、足指の先にまで力が入る。 「どっち?」中に挿入した指で、和樹の内側をくいくいと刺激する。 「あっ……やっ。」ビクンと弓なりになる和樹。だが、そんなことを繰り返していたら、間違いなく、またそこかしこをぶつけるだろう。涼矢は下ろしていたほうの足も肩に担ぎあげる。 「狭いから、なるべく、足、縮めて。」 「……無茶、言うなよ。」和樹は熱っぽい目で涼矢を見上げる。何かを懇願するみたいな表情だ、と涼矢は思って、また、そそられる。 「しゃべれるなら、さっきの返事。」涼矢は自分にもゴムを嵌めると、ペニスを和樹のアナルに押し当てた。だが、まだ挿れはしない。「俺としたかった?」  和樹は息を荒げながら頷いた。 「1人で、した?」  その問いかけにも、頷いた。 「ここも、いじって?」  和樹は横を向く。 「いじったんだ?」顔を横に向けたせいで上を向いた耳に、涼矢は口づける。そのためには、和樹の足は思い切り折りたたまれ、М字開脚でもするような姿勢にならねばならなかった。「俺に、挿れられるの、想像しながら?」 「だったら何だっつんだよ。」和樹はそっぽを向いたままそう答えるが、くちゅくちゅする音が自分から出ているのには気づいていた。 「今、どうしてほしいか、言って?」 「も、そういうの、いいから……。」 「いいの? このまま、指だけで?」 「……おまえは……おまえこそ……そんな。」 「うん、俺は挿れたい。ここのね、奥。」涼矢の指がズブリと奥に入り込む。和樹の全身がまたビクッと波打った。 「じゃあ、そうしろ。」和樹は自分の手で、そこを押し広げるようにした。実際はそれで広がっているわけではないが、その扇情的なポーズに涼矢が生唾を飲む。「早く、来い。」と和樹が挑発した。  涼矢は和樹の中に入っていった。「あっ。」と和樹が喘ぐ。ぐいと押し込むと、和樹は押し出されるように頭の方向にずれてしまう。 「俺に、しがみついて。また頭、ぶつける。」涼矢は体を倒して、和樹にできるだけ密着した。 「んっ。」和樹は言われた通りに涼矢に抱きついた。涼矢を引き寄せながら、腰を浮かして、涼矢のペニスがより奥へと来るように仕向けた。 「気持ちいい?」 「ん、きもちい。」 「好きだよ。」 「ん。」 「大好き。」 「……俺も。」涼矢の背中に回す手に力を込める。「あ……。」途切れ途切れに喘ぎが漏れる。 「声、出しても平気だよ。」 「ん。」 「出して。聞きたい。」 「やだ……。」和樹はさっきよりももっと口を結んで、くぐもった声しか出さなくなった。そのことへの不満をぶつけるように涼矢は和樹の奥を激しく突いた。「やだって、もう、あっ……いっ……涼っ……。」 「好き。」涼矢は和樹にキスをする。和樹は背中の手を後頭部に移動させて、涼矢の顔をより強く自分に押し付けるようにした。もっと激しいキスをと舌を出し、わざと水音を立てるような、キスをした。 「イキそ。」そんな口づけの合間に、和樹がそう言うと、涼矢のほうがビクンと震え、先に射精した。その熱さを体の奥に感じると、和樹も果てた。その後に、改めて和樹はぎゅっと涼矢にしがみついた。「涼、好き。大好き。」 「ん。好きだよ。」 「一番。」 「一番好き。」 「……誰のことを好きになってもいいけど。好きになった人のこと、忘れなくていいけど、俺のこと、一番好きでいて。ずっと。」 「当たり前だろ。」涼矢は和樹の頬にキスをした。「好きだよ。一番も二番もないよ。和樹だけ。」  それは違う、と和樹はぼんやりと思う。初恋の人、二度目の恋の人。その人たちを好きになった、その過去のある涼矢だから好きになった。初恋の人のこと、忘れられない涼矢の。忘れていたはずの二番目の人のこと、思い出した涼矢の。その人たちのこと、今でもすごくすごく好きな涼矢の。 ――一番好きな人になりたい。  そう口にすれば、涼矢はあっさりと肯定してくれるんだろう。それは分かっているから、言わない。  後始末をして、服を直して、再び前の席に戻るために開けたドアを、涼矢はすぐには閉めないでいた。気のせいかもしれないけれど、事後の匂いが籠もっていそうな気がする。  開放したドアの脇に寄りかかっている涼矢の隣に、和樹も移動する。「車の中、せっかく暖まったのにな。」と、笑った。笑って、くしゃみをひとつした。 「寒い?」涼矢は和樹の肩を抱く。 「寒い、けど。平気。」

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