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第407話 春を待つ (4)
「和樹がずるい。」涼矢は和樹のペニスを刺激しながら、耳元で囁く。そのついでに、こめかみや耳たぶにキスをする。
「どこがだよ。何もしてねえよ。」
「可愛いから。エロいし、カッコいいから、ずるい。」
「何言ってんの。」
「良い匂いするし。」
「おまえんちのシャンプーだよ。」
「いつもだよ。」
「おまえはエロい匂いしてるぞ。」和樹も涼矢の耳の下を舐める。涼矢がピクリと体を震わせた。「なあ、俺が直近で検索したワード、教えてやろっか?」
「ん? エロいやつ?」
「そう。でも、おまえほどエロくはないかな。」
「何?」
「男、乳首、と、性感帯。」
涼矢は吹き出した。
「おまえのためだよ?」和樹は涼矢の素肌に触れて、その乳首を指先でつまんだ。
「んっ。」と涼矢が反応する。
「ほら、ね?」和樹は涼矢の両の乳首を弄り出す。
「あっ、ちょっ……待っ……。」
「何を待つの?」和樹は涼矢の服をめくり、そのまま脱がせた。それから涼矢の左の乳首を口に含む。右は手でこねるように。
ふっ、とため息のような喘ぎが涼矢の口からこぼれてくる。最初は平らに埋もれていたそれを刺激し続けていると、やがて小さな蕾のように膨らんで、歯で挟めるほどにもなる。舌先で転がした後に甘く噛むと、涼矢ははっきりと声を上げて喘いだ。
「気持ちい?」和樹が尋ねる。涼矢はもう、和樹の下腹部をしごいていない。その余裕がない。そうと知っていて、尋ねた。
その声に涼矢はハッとして、腕を自分の口に当てて、何か口走ってしまいそうになるのを抑えた。
「いつも俺に言わせるくせに。」和樹は乳首に触れている指先を捻る。
「へ……変じゃない?」消え入りそうな声で涼矢が言った。
「何が?」
「ここ……女の子じゃ、ないのに。」
和樹は、珍しく恥ずかしそうにそんなことを言う涼矢に、面食らう。「変じゃないよ。検索しても、男でも感じる奴、いっぱいいたし。」
「そう、なんだ。」涼矢が本当にホッとしたようにそう言うので、和樹は笑ってしまう。それを見て、「笑ってる。」と、今度は非難めいた声で涼矢が言う。
「だって、可愛くて。」和樹が涼矢の乳首を舐めた。その胸元から涼矢の顔を見上げた。「つか、おまえだって散々、俺の乳首、舐めたりしてるじゃない?」
「それは……なんとなく。」
「なんとなくって。」和樹はまた笑った。「気持ちいいよ、俺も。」
「俺、口の中とか、変なとこばっかり、気持ちいい。」
「変じゃないって。全然普通。」和樹は涼矢に顔を寄せて、キスをした。その至近距離のまま、涼矢の口の端に親指を引っ掛けるように入れる。「口ん中も、する?」
涼矢が薄く開けた口を、和樹はこじ開けるようにした。舌先で歯裏を舐めて、更にその先の上顎へと舌を伸ばした。そんな、キスとも言えないキスを目を開けたままして、涼矢の反応を窺った。
「んっ。」涼矢は最初だけしかめ面をしたけれど、すぐに緊張が緩むのが分かった。和樹は舌を抜いて、体も少し離してから、今度は人差し指と中指を口の中に入れて、上顎を撫でた。
それから上体を起こして、もう片方の手は、涼矢の下腹部を探った。「ホントに気持ちいんだ?」和樹はそこの昂ぶりを見て、そう言った。涼矢はつぶっていた目を開けて、和樹を見上げた。やっぱり変?とでも聞きたそうな、弱気な目だ。こんな涼矢は、滅多に見ない。特に、セックス中は。初めての時以来かもしれない。初めての時も、ここで。そのベッドで、泣きそうな涼矢を押し倒して。好きなのか、つきあえるのか、セックスしてみれば分かるだなんて、ひどいことを言った。懺悔の思いと同時に、涼矢を自分のものにしたいと思った時の、あの瞬間を思い出して、昂奮した。
和樹は両手を離し、涼矢の顔面近くにまたがった。「俺のこれが当たるのが、気持ちいいんだっけ。」涼矢の口元に半勃ちのペニスを突きつけた。「あ、硬くないとダメか。じゃ、硬くして。」
涼矢は素直に口を開けて、手を添えてそれを咥えた。手でもしごきながら、舌も唇も動員して、和樹のペニスを刺激した。
じきに硬くなってくると、和樹のほうも浮かせていた腰を上下させて、より深く舐られるようにした。いつの間にか涼矢の手は背後にまわり、和樹のアナル付近まで来ている。
和樹は涼矢の口からペニスを引き抜いた。涼矢の上から降りながら、そっと涼矢のペニスを見る。勃起していることに安堵して、それに触れる。
「口、ちゃんと気持ち良かった?」和樹の言葉に、涼矢は頷く。「良かった。俺も気持ち良かった。……次は、こっち。」涼矢のペニスをさすり、亀頭を握る。
「挿れても?」
「ん。」和樹は自分からバックの姿勢を取った。
涼矢は起き上がり、ローションを手にして、和樹のアナルに注ぐ。指を入れ、ほぐしていく。さほどの抵抗もなく柔らかくなっていく。数時間前に車でしたばかりだし、たぶん、普段も、1人で。そう思うと、涼矢のボルテージも上がる。コンドームをつけ、ゆっくりと挿入しはじめた。
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