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第421話 brand new day(7)

「も、大丈夫、だから。」涼矢が言う。 「ちゃんと気持ちいい?」 「ん。」 「もう挿れたほうがいい? もっとこっちしてもいいよ?」クイッと指を曲げると、涼矢の体がビクンと跳ねあがるように動いた。 「もういい、挿れて。」後背位の姿勢を取ろうとしているのか、涼矢はうつ伏せになろうとした。和樹はその肩をすかさずつかんで、仰向けにさせた。 「顔見ながらしたい。」 「や……。」和樹の言葉に、涼矢は咄嗟に顔を隠すように腕を目元に当てた。 「だめ。」和樹はその腕をどかす。「ちゃんと見せて。」  恥ずかしい。自分がどんな顔をしているのか、想像できるようになったから、初めての時よりもっと恥ずかしい気がした。涼矢は顔を横にそむけた。 「俺のこと見て。」それすらも許さず、和樹は手で涼矢の顔を自分のほうに向かせた。「やらしい顔。」追い打ちをかけるように和樹が言った。何も言い返せない涼矢を意に介することもなく、和樹は涼矢の足を開かせ、その中心に挿入を始めた。 「あっ……んっ……。」涼矢は手を伸ばし、和樹の腕をつかんだ。 「大丈夫?」 「んっ。」 「もっと強くしていい?」 「ん、大丈……やっ……あっ……。」 「すげ気持ちいいよ。」和樹が体を倒して、涼矢にキスをした。「大好き。」 「うんっ……ああっ……。」 「気持ちいい?」 「ん、きもちい……。」 「今、涼矢の中にいるの、誰?」 「かずき。」 「言って。好きって。」 「好き。和樹、大好き。」涼矢は和樹の首に腕を巻きつけるようにして抱き寄せる。 「イキそう。いい?」和樹の顔も紅潮している。  涼矢はうなずく。自分でも自分のペニスに触れる。和樹の熱いペニスが内側を突いてくるのを感じながら、自分のそれもしごいた。ひときわ和樹の動きが速くなったかと思うと、一瞬それが止まり、その直後に自分の中が熱くなるのを感じて、「あっ。イク。」と声を上げた。その声と同時に射精したのは和樹のほうで、涼矢自身が絶頂を迎えたのはその少し後だった。自分が放った精液が、下腹部から胸のほうにまで飛んでいるのが分かった。  和樹が微笑んで涼矢の頬に口づけた。その顔を両手で包み込むようにして涼矢からもキスをした。 ――どうしよう。幸せだ。  涼矢は、その感情を自分の中にすべて閉じ込めておきたいような、逆に全開にして余すところなく和樹に伝えたいような、両方の気持ちになる。  和樹は事後の始末をすると、すぐに涼矢の隣にもぐりこんできて、背後から抱き枕のように抱きついた。 「大丈夫?」と、また涼矢を気遣う。 「うん。」 「良かった?」 「そう見えなかった?」 「見えた。」 「じゃあ、そうなんだろ。」 「素っ気ないなあ、もう。おまえがイケなかったら意味ないっての。」 「意味なくないだろ。」 「自分さえイケたらいいなんてのは、セックスじゃないの。」  涼矢は自分の胸元にある和樹の腕に手を重ねた。「良かったし、恥ずかしかった。」 「自分がいつもどんなことをしてるのか、思い知ったか。」和樹は笑った。 「和樹はいいんだよ。」 「なんでだよ。」 「だって……きれいだから。」 「きれい?」 「きれいだし、可愛いし、格好いいから。イク時の顔もすごいいい。」  和樹が後ろから涼矢の頭を軽くはたいた。「余計なことは言わんでいい。」 「でも、見られんのは、ちょっとな。」 「涼矢だって、イク時はすげえいい顔する。」涼矢の髪に顔を埋めるようにする。  そんな自分の顔はあまり想像したくない。涼矢は話題を変えた。「なあ、柳瀬に連絡するとして、おまえ、いつが都合いいの?」 「いつでも。特に予定ないし。まあ、さすがに元日に出歩くのは親になんか言われそうだけど、それはみんなも同じだと思うし。」 「年内でも? 明日とか、明後日とか。」 「ああ、いいよ。あ、そうだ。」 「ん?」 「初詣行こうか?」 「みんなで?」 「違う違う、それは俺ら2人で。2人の話。」  涼矢は体の向きを変えて、和樹のほうを向く。「いつ?」  和樹も少し体勢を変え、肘をついて横向きになった。「だから、いつでもいいって。」そう言った矢先に、「大晦日の夜中は?」と続けた。 「元日はまずいんだろ。」 「大晦日の夜は平気だよ。高校受験の時にも友達みんなで合格祈願だって言って行ったよ。夜中にこどもだけで出歩いて許されるのって、そういう時しかなかったからさ、なんかワクワクしたなあ。」 「やっぱりみんなでワイワイ行きたい? それならその時にみんなも誘う?」 「いや、今回は2人で。ワイワイは別で。」和樹はニッと笑った。「初詣は、2人で行きたい。」と念を押すように言う。 「そりゃあ、俺は、そのほうがいいけど。」 「だって、つきあって初めてのお正月だよ?」和樹は涼矢の手を取って、指を絡めてくる。「なんてね、女の子みたいなことを自分が言い出す日が来るとは思わなかった。」 「ぜんぶ初めてだよ、俺にとっては。」デートも、キスも、セックスも。2人で過ごす初めてのお正月だし、今日は2人で過ごす初めての12月27日だ。 「おまえも可愛いこと言うね。」和樹は涼矢の鼻を軽くつまみ、涼矢はくすぐったそうに笑った。

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