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第436話 a pair of earrings (3)
「ゆっくり、さ。ちょっと触るぐらいで。」和樹はそう言うと立ち上がり、部屋の電気を消した。再び布団に戻ってくると、今度は座らずに横たわった。涼矢もそれに従って横になる。まだ暗さに目が慣れなくて、所在を確かめるように和樹の手が涼矢の胸に触れた。
「触るだけ?」と涼矢が小声で言う。
「うん。」
「きっついな。」涼矢は足元に畳まれて置いてあった掛け布団を掛けた。「布団、ちゃんと掛かってる?」と言いながら、和樹の肩を布団の上から探る。
「なんか、修学旅行の夜みたい。消灯の後、寝たフリして、見回りの先生の目を盗んで、夜中までヒソヒソ話してさ。中には女子の部屋にこっそり行く奴もいたな。」
「おまえじゃないの。」
「やんないよ、そんなこと。俺、そういうところは結構ビビリだから。」
「先生に怒られちゃうような悪いことはしないんだ?」
「そう。」
「じゃ今しよっか。悪いこと。親に内緒で、嘘ついて、こんなこと。」涼矢は和樹にキスをする。もう目は慣れて、この至近距離なら和樹の顔もうっすらと見える。舌を出すと、和樹も応えてきた。
応えて、さんざんぱらディープキスをした後になって、和樹が言った。「だ……から、ちょっと待てって。親父たちも帰ってくるかもしれないし。そしたら、この部屋の前、通るし。」
「いつ帰ってくるかなんて分からないんだろ。朝帰りだったらどうすんの。」涼矢はパジャマの下に手を入れ、和樹の肌に直に触れた。
「そうだけど……。じゃあ、あんまり……激しく、すんなよ。」最後のほうはほぼ聞こえないぐらい小さな声だ。
「なんで?」涼矢は和樹のパジャマの下で和樹の乳首を弄りながら、更に耳たぶを甘噛みする。また和樹の、んっ、という喘ぎがひとつ漏れる。「気持ちよすぎて、大きい声出ちゃったら困るから?」
和樹は顔の半分を、布団に半ば埋もれるようにひっこめた。「そう、だよ。」
「だったら泊まっていけなんて言わなければいいのに。」涼矢はニヤニヤしながら和樹の腰に手を回し、自分のほうに引き寄せた。「そんなこと言って、布団敷いて、ゴムいっぱい用意して。それで、触るだけって、何それ。」
「だから、もっと、遅くなってから。」
「もう。」涼矢はあからさまに不満そうな声を出した。それから急に布団を剥いだかと思うと立ち上がり、電気を点けた。和樹が眩しそうに目を細める。「じゃ、座って。そこに。」
「はあ?」
「1人で、してみせて? それならボリュームコントロールできんだろ?」
「そんなん、やるかよ。」和樹は座りもせず、逆に、枕に突っ伏した。
「じゃあ、襲うぞ。やめろって言っても、最後までやるぞ。」
「ざけんな。」
「どっちがだよ。」
しばらく2人とも押し黙っていた。やがて和樹が起き上がり、布団の上に、あぐらをかいた。「……電気、消せよ。」
「それじゃ見えない。」
「せめて、一番ちっこいやつだけにして。」
「だめ。この明るさで。」
「マジで?」
「マジで。」
「おまえもやる?」
「やんねえ。見てる。」
「ひっど。」
「おまえがひどい。」
「なんでだよ。親父たちが帰ってきて、寝たらいいよって。」
「何時だよ。あと1時間待てばいいって言うなら待つよ。けど、そうじゃないんだろ?」
「ちょっといちゃつくだけならいいって言ってるだろ。」
「無理。」涼矢は和樹の前にしゃがみこみ、両肩を抱き、耳元で囁いた。「やるなら、最後まで。和樹に挿れたい。それが無理ならオナニーしてみせて。じゃなきゃ、今から帰る。こんな生殺し、耐えられないからね。」
「帰る……?」途端に心細そうな声で和樹が言った。
「歩いてだって帰れる。東京じゃないんだから。」それは事実だ。和樹だって、涼矢の家から走って帰宅したことがある。
和樹は反射的に涼矢の袖をつかんだ。「分かったよ。」それだけ言うと、手を離す。涼矢が一歩退いた。「ぬ……脱がなくていい、よな?」
「いつもどうしてんの。」
「全部は……。」
「じゃ、それで。いつも通りでいいよ。」
和樹はパジャマのズボンの中に、手を入れた。
「それ、直接?」
「ああ。」和樹はもう顔を紅潮させている。涼矢のほうは見ない。「……あの、さ。」
「何?」
「ベッド、で、いい?」
「おまえがいいならいいけど。おまえっつか、宏樹さんか。」
「兄貴の名前出すな。」そう言いながら、和樹はベッドに乗った。ベッドは壁に寄せてあり、その壁に背中を当ててもたれる姿勢をとった。膝を曲げ、軽く開脚する。
「ああ、壁ね。」
「黙ってろ。」和樹はもう一度ズボンに手を入れた。ズボンの中では手を筒のようにして、ペニスを包み、しごきはじめる。目をつぶり、しばらくその運動を続けた。息が少しずつ荒くなってくる。
「少しだけ、ズボン、ずらして。」涼矢が指示を出すと、和樹は素直にそうした。ペニスの先のほうが顔をのぞかせる。
「もっと、足、開いて。」それにも素直に応じた。和樹は目を開ける。もう少し離れたところにいると思っていた涼矢は、思いのほか近くにいた。ベッドぎりぎりのところで、いわば「かぶりつき」の位置だ。
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