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第440話 a pair of earrings (7)

 しばらくして、涼矢は和樹のペニスを咥えた。実際、涼矢がそうしたくなる程度の硬さに到達したのか、和樹には自覚がない。だが、涼矢の口の中で、確かにひっかかるような感覚はある。 「涼、それ、イイの?」  和樹は自分の股間に顔を埋める涼矢を見た。見えたのは頭頂部だ。その頭が和樹の言葉に呼応するタイミングで前後に動いたから、頷いているのだと解釈した。 「それだけで勃つの?」涼矢の右手は今も落ちてくる髪を押さえているし、左手は和樹のペニスの根元や睾丸を行き来している。自分のペニスに触れている様子はない。涼矢は咥えたまま目だけ動かして見上げた。それから最後のダメ押しのように口をすぼめ、唇でペニスを撫でながら、トゥルンとそれを抜いた。 「見る?」 「は?」  涼矢は膝立ちしてみせた。薄暗がりの中でも、涼矢のペニスが勃起しているのは分かった。それから涼矢はあぐらの姿勢になる。「和樹、こっち来て。」  和樹も上半身を起こし、涼矢のほうへといざり寄った。途中でゴムを手に取る。そして、涼矢のペニスに、それを被せた。「これ、口で付けられる人もいるよな。」 「やってみてよ。」 「できねえよ。」 「俺、そのうちマスターしとくよ。」 「今は?」 「それどころじゃない。結構限界。おまえも付けるなら自分で付けて。」  和樹はその言葉を不服に思うでもなく、言われたように自分で装着した。それから涼矢にまたがった。 「自分から乗っかりに来たね。」 「違った?」 「いや、そのつもりだったけど。」 「キスしよ。」 「うん。」  2人はキスを交わす。耳や、頬や、顎や、まぶたにも。顔の角度を変え、何度もキスをした。それから涼矢は和樹の首筋から鎖骨、胸にも口づけて、その乳首を吸う。和樹は抑制した喘ぎ声を上げ、下半身がもぞもぞと動く。涼矢は来た道を戻るようにまた鎖骨や肩、首に舌を合わせ、再び唇を重ねた。最後に額同士をくっつけて、顔を見合わせてくすりと笑う。  和樹がわざと色っぽい目つきを演出し、唇を突き出して言った。「挿れて。」 「もういいの?」と涼矢は言うが、とっくに受け入れ態勢になっていた。散々焦らされた気にさえなっていた。 「うん。」和樹が腰を浮かせると、涼矢は和樹のそこに自分のペニスをあてがう。 「降りてみて。」  和樹は自分で腰を落として、涼矢のペニスを自分の中に迎え入れる。「あっ。」と声が出ると、すかさず涼矢がキスをしてきた。「あ……あ、ん……は……んんっ。」キスの合間にも声が漏れ、その度に深く嵌まっていく。 「動く?」と涼矢が囁く。 「ん。」 「もっと、しがみついて。」涼矢は和樹の背中を抱く。 「ん。」和樹は涼矢を更に強く抱く。 「奥がいいの?」 「ん。」 「奥、好き?」 「ん、好き。」涼矢が下から突き上げる。「ああっ。」と短く喘ぎ、慌てて涼矢の首の付け根に顔を埋めた。 「気持ちいいの?」 「ん。奥、気持ち、い……から、もっ……あんっ。」和樹の声が途切れ途切れになる。 「もっと?」 「もっと、つよ……ひ、あ……あん、あっ、いいっ、そこ、や、あ、りょ、あっ……。」涼矢が激しく突き上げると、和樹も反射的に、更に奥深くに来るように腰をグラインドさせる。 「可愛い。」涼矢がそんなことを呟いても、それに構うどころではない和樹だった。涼矢の後頭部を両手で抱えて、自分に引き寄せ、顔中にキスをしながら、息を荒くする。 「涼、俺の、奥、出して。」 「マジ、やばい。イキそう。」 「いいから、イッて。俺も……イク、から。」 「和樹。」涼矢が抱きしめる力を強めると、和樹のそこがきゅっと締まり、ひくひくと痙攣した。 「あっ、あっ、涼、イク、いっ。」つま先までピンと張りつめさせて、和樹が果てた。  前後して涼矢も和樹の中で射精した。繋がったまま、しばらく抱き合っていた。  突然涼矢が「フタゴムシになりてえな。」などと言い出し、そして、おもむろにペニスを抜いた。 「ムシ?」 「うん。魚に寄生する虫。」コンドームの端を結び、さっきと同様にティッシュにくるんだ。 「え、そんなのになりてえの。」和樹も同じことをする。そのティッシュをほかのと一緒に近くに転がすと、布団に横になった。涼矢もその隣に寝そべる。2人とも肘をつき、横向きで、お互いの顔が見える姿勢だ。 「雌雄同体なんだ。メスであり、オスでもある。」 「へえ、じゃあ、分裂して増えるの? アメーバみたいに。」 「いや。相手は必要。1人では繁殖できない。フタゴムシのパートナーを見つけたら、お互いの生殖器官をお互いに挿入して、そんで、そのままそこは融合するんだ。」 「融合? くっついちゃうの?」 「そう。無理に引き離すとそこが破損されて死ぬ。パッと見ちょうちょみたいな形してるんだけど、実は右半分と左半分は元は別々の個体で、それがくっついちゃってそういう形になってるってわけ。生まれてすぐセックスして、死ぬまで繋がってる。よくない?」 「嫌だよ、そんなの。」和樹は苦笑した。 「しかもさ、魚のエラに寄生するんだけど、その魚、何だと思う?」 「分かんないよ。マグロ?」 「コイ。」 「えっ?」 「コイの中で、パートナーを見つけて、一生くっついたまま、セックスしっぱなし。よくない?」

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