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イチ。偽装恋愛⑦

「好きにしろ。あいつもガキじゃねえ」 「ふん」 バチバチと火花がこちらでも飛ぶ。 俺の家出がどんどんとんでもない方向へ向いていくのが分かった。 「お前ら、紹介料だけじゃ気が済まねえってなら、向こうの部屋のモノ好きなの持って行っていいぞ」 「あら」 「……まじ?」 二人の声が少しだけ高くなる。 吾妻なんて俺の顔を伺いつつもそわそわしている。 向こうの部屋に何があるんだろう? 「けっこう人気の型も残ってる。誰も使ってねえし、見本で二本ずつぐらい貰ってるからな」 「夏目はんはいけすかないですが、夏目はんの会社の評判はようきいてます」 「うわー。オプションでやってみたい客が何人かいるんだよね。仕方ねえな。聖、貞操を守れよ」 「な、なんだよ。そっちの部屋に何があんの?」 三人が入っていく薄暗い部屋に、俺も急いで入る。 すると、電気をつけて部屋を見渡すと、無造作に壁に並べられた段ボールだらけだった。 「あ、これがいい」 吾妻が嬉しそうに両手に持ったものを見て俺は固まった。 「……何それ」 「おい、電池入れて動くか確認しろよ、使用してから止まっても俺は返品交換しねねぞ」 「分かった」 吾妻がカチッと電源を入れると、ヴヴヴヴとバイブ音が響く。 「ぎゃー! その卑猥な動く奴なんだよ!」 「夏目はん、うちこのシリーズ頂きますわ」 「ひいっ」 社長さんが四つ手に持っているのは、吾妻よりも細いけれど明らかに卑猥な形をしたものたちで……。 「あ、吾妻?」 「そこの強面野郎はね、アダルトグッズ会社二代目社長だよ」 「あだ!? あだるとぐっず!?!?」 「二代目から、色々えげつないグッズ増えたようですよ」 そう言いつつも二人は楽しそうにバイブの動きを確認して、乙女の様にキャッキャッしている。 「お前も使いたきゃ貰っていいぞ。だが使うなら見つからんような風呂やトイレで、俺が居ない時にしろよ」 「ばっ 使うわけねーだろ!」 びっくりして声を失っている俺に、夏目さんは面白いのか暗闇で光るゴムを手のひらに乗せてくれた。 いるか、馬鹿。 バイブ、ローター、光るゴム、細い棒? 業務用ローション、舐めれるローション? 知らないものだらけで、異世界に迷い込んだ気分だ。 「あ、吾妻ぁぁ」 「言っとくけど聖、本当に貞操は守れよ? 夏目一族は巨根だぞ」 「きょ、こん?」 初めて聞くワードにクエスチョンマークが飛ぶ。 「自分の巨根に合うゴムが無かったから開発したのがこの会社の始まりらしいぜ。で、最初に開発したのがXLのゴム」 「な、なに? XLのゴムってなに?」 本当に意味がわからなくて吾妻の話に涙が浮かぶ。 分からねえけど、怖いっす。 「XLサイズの避妊ゴムってことだよ。XLだぜ? ちょっと開けて水でも入れてみたら大きさが分かるんじゃね? 暇もさ、すっげえデカいから、AVの撮影では挿入してるふりが多いってよ」 「そんなことしたくない! ひいい」 思わず、社長とローションについて会話している夏目さんを見る。 確かにがたいはいい。俺よりも身長高いし、筋肉の付き方も違うし……。 恐る恐る視線を下半身に向けてしまった。 ……でかいのか、あそこが。

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