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ニー。同棲生活②

「び、ビックマグナム?」 「は?」 「……こ、怖いっ」 聖の視線は俺の股間へと注がれていた。 朝の臨界体制に入っていたらしい俺の股間の物体に、目を見開きガタガタと震えている。 「元々、自分のサイズの避妊ゴムがなくてXLサイズを作ったのがうちの会社の起源って言ったろうが。親譲りだ」 「お、俺は聞いてない! その凶器を早く仕舞ってくださいっ」 「凶器じゃねえ。お前、本当にいつか痛い目みるぞ」 脅しつつもそのままシャワーへと向かう。 「さっさと起きて、珈琲用意してろよ、居候」 睨みつけて言うと、まだ震えている聖はこくこくと頷いた。 居候させてやるんだから、せめて家事ぐらいはしてもらおう。 ……いや、男に襲われたトラウマがある聖にこんなものを見せてよかったのか。 男に襲われた聖が、助けが間に合わなかった母に重なった。 どうしても放っておけなかったのは同情でもなく私情だろうな。  それでもこの巨根を切り取るわけにもいかない。  何度か、これを見て女に断られたことがある。  俺は人並み以下の性欲のおかげで、ストレスにはなっていないが。  俺の性欲は、馬鹿な弟に全部持っていかれたはずだしな。 そう思った俺は、砂の上に立つトランプのカードよりも認識が甘かった。 「うわああ!」 髪にシャンプーを乗せてすぐに、情けない悲鳴が聞こえてきた。 うるせえ。 「いやあああ!」 ……。 「ひいいっ」 間違いない。何枚も何枚も皿が割れている音がする。気のせいでなければ、コップも。 そして換気扇も回さずに何か作っている気配がする。 「聖、てめえ何してんだ!」 風呂場から叫ぶと、焦げくさい匂いを身に纏った聖が走ってきて、涙目で俺に抱きついてきた。 ……俺、おっさんだから男として認識されてねー気がしてきた。 裸で髪の毛泡だらけの俺に、この馬鹿は躊躇なく抱きついてきたのだ。 「お前、何したんだ?」 「ご、ごめんなさい。俺、料理どころかインスタントコーヒーもまともに淹れたことなくて」 「……まじか」 現場を見るのが怖くなってきたじゃねえか。 「分かった。話は後で聞くが、それよりこの状況は誘っていると理解していいのか?」 「え?」 「お前が抱きついて身体を擦りつけてくるから、見ろ」 「へ?」 間抜けな声とともに視線を下げる。 抱きついた俺の下半身の暴君を見て目を見開いていた。 「うわああああ」 「っち。うるせぇな。お前、本当に無防備すぎってか、隙しかねえからな」 トンっと軽く押して風呂場から追いだすと、真っ赤な顔で俯く。 なんだかほどされてしまいそうで、急いで扉を閉めた。 すると、扉に張り付いて頭を下げるのが擦りガラス越しに見えた。 「ごめんなさい。……俺、いつでも追いだされる覚悟はあるから。嫌になったら言ってください」 ドア越しに、そんな震えた声を出されてしまったら、これ以上強く言えなくなる。 「もういい。だが、俺がシャワーから出るまでに何があったか分からないぐらい片付けとけ」 「うん。……あ、はい」 タタタタッと走る音が俺の足音より小さくてため息が出る。 本当にこいつは。 なんていうか、危なっかしすぎて放りだせない。あいつを甘やかして育てた親に会ってみたいものだ。 ブツブツと言っていたら、さらにボンっと爆発音がして俺はシャワーを切りあげて、急いでタオルで身体を拭いた。

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