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ニー。同棲生活⑯

間違えても、女に不自由していない俺が聖にハマるわけがない。 確かにセックスになると、俺のモノがでかすぎて拒否されてしまうケースもあった。 でもそれは、同じく巨根な暇がゲイ男優になって無理ではないと断言している。 じっくり慣らせば男も女も挿入できる場合があると。 俺も受け入れてもらえたことがない童貞ってわけでもない。 別にそこまでガツガツとしたいわけでもない。 挿入するだけがセックスじゃねえし。 挿入しなくても、適当に咥えてもらうだでの処理だけでもいい。 恋人としてお互いに安心し合えるならば、別にしなくてもいいかもしれない。 「……」 っとなると聖でも問題ない範囲内になってしまうので、今の発言はなかったことにしよう。 「明日も帰りは頼む」 『畏まりました。運転手は式部に頼みました』 花渡も用件が終わるとさっさと電源を切った。 俺はもう一度、聖の涙を拭い、額に唇を押しつけると抱きしめながら眠った。 沸き上がってくるこの、熱い衝動的な気持ちにはまだ名前さえない。 生まれて芽生えだした感情に、俺は戸惑っていたのだから。 *** Side:氷田 聖 朝は和食だった。 魚、納豆、味噌汁、ひじきに卵焼き。あと冷蔵庫の奥からぬか漬けなんてだしてきた。 お肉大好き魔王のくせに。きゅうりとなすの糠漬けが最高の塩加減だった。 朝から二杯もご飯をお代わりしてしまったが、その横で夏目さんは生姜焼きも食べていてびっくりした。 どんだけ肉が好きなんだ。 「今日は仕事が少し遅くなる。会社の方へ直接来い。夕飯は高級な焼き肉屋につれていってやるよ」 また肉かよ。 でもそんなマイペースな夏目さんが爽快で格好いいとさえ思ってしまう。 俺みたいに、うじうじしてなくてスパンと何でも決めれて。 なんだか憧れる。 *** 「まーった、あの夏目社長の車で登校してきただろ」 他愛もない会話をしながら車で送ってもらい、講義室について一番に吾妻に睨まれた。 ……あんなに色々貰っておきながら、夏目さんの事は嫌いなんだ。 「でも顔色が、ぐんぐん良くなっていく。むかつくなあ」 「そ、そうか?」 確かに2、3日前まではオニギリ一個とかでしばらく生活してたけど。 「ひーじり。俺が養うからさあ、そんなバイト止めようぜぇ」 可愛い声で抱きついて甘える吾妻に、不覚にも一瞬ときめいた。 吾妻は綺麗な顔だから、間近で見ると心臓に悪い。 普段は誰よりも男らしいのに。 「い、いや、俺、バイトはちゃんと探す。これからずっとあの人の家にいられないし。学費もいつかちゃんと返したいけど、とりあえず今は生活費ぐらいは自分で稼ぎたい」 「なんで? 可愛くて世間知らずだった聖がそんな真面目なこと言っちゃうの! ありえない。やっぱあの親父社長むかつく!」 親父って、吾妻まであの人を親父臭いって思ってたのか。 気持ちはわからんでもないけど。 「でも、俺、決めた。バイトする! 居酒屋とかコンビニとか!」 「契約中だからそれも相談した方がいいよ。恋人役の人のバイト先にも拘るかもしれないし」

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