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サン! 変化①

着いた会社は、八階建てのやはり大きな会社。 テナントではなく、一階からすべて、『ラブ☆センチュリー』会社。 名前のセンスが酷いのは、夏目さんではなくお父様であろうが、名前は関係ないぐらい大会社だ。  見た目は普通のオフィスビルだから、ここが卑猥なアダルトグッズな会社には到底思えない。 その横に、大きな倉庫みたいな建物があり、トラックが何台も止まっている。 「うちは工場も持ってるから、出荷まで全部やるの。だから海外の工場でやらせて粗悪品が多く安い会社よりも、安全安心、質もよし!よ」 そんなこと言われると、花渡さんも試しているのかとちょっとドキドキしてしまう。 そんなわけあるはずないって言うのに。 一階のロビーは、普通の会社みたいで、妖しい玩具を作っている会社とは思えない。 二階の展示室案内所って部分は見ないふりしたけど、それ以外は普通の会社だ。 受付で花渡さんが夏目さんを呼ぶ。 俺みたいに、Tシャツ、ジーンズ、横がけ鞄の大学生は珍しいのかチクチクと視線が痛い。 「おお、聖。待ってた」 甘い声と同時に、エレベーターから夏目さんが現れる。 針のむしろ状態だった俺には、夏目さんの登場がスーパーマンみたいで格好良かった。 でも夏目さんは多分、会社でも俺の事を恋人だと思わせる為に呼んで、演技をしてるんだと思う。 「早く会いたくて、……仕事場まで来ちゃった」 だから俺もその演技に乗っかるように、照れながらそう言う。 これで合ってるかな。わざとらしくないかな。色々不安だったが、夏目さんは笑顔のままだ。 受付の綺麗なお姉さん二人が目を見開いたが、夏目さんは俺の頭を撫でてくれた。 「少し打ち合わせが押しててな。社長室で待っててくれるか? テーブルの上のお菓子は好きに食べていいぞ」 「子供扱いするなよ。食べるけど」 上機嫌で、いつも以上に甘い声で優しい夏目さんは、演技と分かっていても油断するとときめいてしまう。 この人、恋人に本当にこんな風に優しくするのかな。 「案内する」 「ひぁっ」 ぼーっとしてたら腰に手が回されて思わず変な声が出てしまった。 「驚かせた? 怖がらせたか?」 一瞬夏目さんの顔が素に戻った。 しまった、ちがうのに。 「ば、馬鹿。緊張してんだよ。なんか、夏目さん、本当にこんな大きな会社の社長なんだなーって」 「そうか。俺の偉大さが漸く分ってきたか」 よしよしとまた頭を撫でられた。 くっそう。 悔しいけど、人間としても男としても、何もこの人には勝てないもんな。 エレベーターに乗り込み、閉まるまで俺の腰にしっかり手を回していた。 恥ずかしい。 けど、閉めた瞬間に手を離す。

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