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サン! 変化⑧

いや、なんでラブホのこと詳しいんだよ。誰かと来たことあるのかな。 肉情報以外も色々知ってるんだろうな。 なぜか、女性と空室を探す夏目さんを想像すると複雑な気分になる。 俺と来るよりは自然だ。大自然だ。 「驚き過ぎだ。恋人なんだからこれぐらいのパフォーマンスさせろ。お前も今後の勉強になるぞ」 「なんの勉強だよ! 馬鹿じゃねえの!」 もう、今日は会社に着いてから散々だ。 色々と刺激が強すぎる。 それなのに、怖いとは思わないのは……夏目さんのことを信用してるからなんだけどさ。 「お、空いてた。ここにすっか」 ちょうど俺達で満車になったようで、俺達を追っていたあの車はもし入って来れても停める場所がない。 そう考えると、まあ良かったのかな? 車から降りて、ガチコチに緊張しながら夏目さんの隣を歩く。 「緊張し過ぎだ。右手と右足が同時に出てるぞ」 「え、ふ、普段は出ないっけ?」 「出ねえよ」 くしゃくしゃに笑う夏目さんが、ラブホという状況でも男前なのが少し悔しかった。 「パネルに乗ってる部屋をさ、一緒に選ぶのとかも楽しいぜ。次はそっち系にする?」 「ば、馬鹿!さっさと入るぞ」 『次』と言われ、二度目もあるのだと思うと、口から心臓が飛び出してきそうだった。 この雰囲気に、だろうか。 この雰囲気に緊張しているのだろうか。 それとも、二人きりでこんな場所で過ごすから? ガッチャンとドアが音を立てて閉まった。すぐに取っ手を引いてみたがびくともしない。 「金を払わないと、内側から開かねえぞ」 「ひい!」 「おー、それより見ろ。食事のメニューも豊富だ。季節の御膳だとよ」 紫のぎらついたソファに座ると、ネクタイを解きながらメニューを見ている。 なんだろう。 この人、お肉の話になると、少年みたいな浮かれ方をする。 俺もとなりにちょこんと座ると、確かにメニューが豊富で驚いた。 ミニパフェなんて10種類もある。 部屋は一見、普通のホテルと変わらないんだけど、ベッドサイドに変な電気マッサージ機置いてあるし、冷蔵庫の隣にアダルトグッズの自動販売機があるので、喉から変な声が漏れた。 「お、あるじゃねえか。温水プール。夜景を一望しながらどうぞ、だとよ」 「へ?」 俺は、最新DVD見放題と、ゲーム機貸出に興味津々だったのだが、夏目さんはさっさと服を脱ぎだしていた。 「ほら、入るぞ」 「う、うわー!」 無理だ。無理。 温水プールと言えども、そんな人前で裸になるなんて。 そううろたえる俺を余所に、夏目さんはベッドサイドに置かれていた電話の受話器を取る。 「250gのヒレステーキと、チーズ四種と赤ワイン、あと男用貸出水着を二枚、それから――お前何食うんだっけ?」 「え、あの、じゃあハンバーグ?」 首を傾げつつもそう告げると、さっさと受話器を置いた。 「水着は無料貸し出しだ」 「そうだったんですね!」 「流石にぶらぶらさせて入れねえだろ。お、水着来たか」 入り口の横にある小さな窓部分から靴箱の上に水着が二枚置かれた。 それを夏目さんは慣れた手つきで持って来てくれる。 「……」 「なんだ?」 「い、いや、夏目さん、慣れてるようなあって」 まるで我が家かのように色々と部屋内を動いてるし。 なんか、ちょっともやもやするのはなんでだろう。

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