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サン! 変化⑨

「そりゃあ聖より10年も生きてるし、逆に何も知らねえでオロオロしてるほうが嫌じゃねえか?」 「そうかもしれないけどさ!」 なんかもやもやするんだよ。理由は分からないけど。 「それより、俺とは言え男と密室でも怖がらないお前は成長したんじゃねえか? 着実にすこしずつ克服していってる」 さっさと着替え終わった夏目さんが、水着一枚になったので思わず視線を泳がす。 いや、俺はすでに夏目さんの何も身に纏っていない朝の姿を確認してるじゃんか。 なんで水着姿の夏目さんに動揺してんだよ、俺。  それに、水着の上からでも分かるんだよ。でけえって。  どんだけ肉を食えばあんな大きさになるんだ。 「夏目さんとは契約してるから安心できるけど、根本的なモノは何一つ克服できてない。……多分」 「ふ。俺だけ安心か。悪くねえな。本来俺は安心な男だからな」 「意味分かんない! さっさと泳いでくれば!」 しっしっと追い払うと、夏目さんはニヤニヤしながら温水プールへ向かう。 俺も行くべきなんだろうけど、夏目さんに渡された黒のきわどいビキニを目の前に、どうしても動けずにいたのだった。 「夏目さん」 「お前、なんで腰にタオルを巻いてるんだ、馬鹿か」 先に外で煙草を吸いつつ温水プールに入っていた夏目さんは、露骨に嫌な顔をした。 「なんかラインがはっきりしてるから嫌なんだよ!」 「タオルを湯に入れるのはマナー違反だ。脱げ」 「嫌だ。ばか、変態、親父!」 しかも温水プールって銘打ってるわりには、狭い。 外に出てすぐに洗い場もなく温水プールがある感じ。 しかもプールの癖に泳げない。 夏目さんが長い脚を伸ばしたら、向こうの壁に届いてしまいそうなレベルだ。 「狭い」 「そんなもんだろ。寄り添う場所なんだから広さは要らねえって。な?」 にやりと笑った夏目さんに、どうしていいのかわからない。 ちらりと夏目さんの水着を見れば、どうしてそれがそこに収まれたんだ!? ってぐらい盛り上げっててなんか、すごく見てるこっちが男の癖にドキドキしてしまう。 「こ、交代で入ろう。俺、ゲームでもしてくる」 「ダメだ」 にゅっと夏目さんの大きな腕が伸びてくる。 背を向けようとしたせいで、反応が一瞬遅れてしまった。 掴んで引っ張られたタオルが、夏目さんの腕に奪われる。 「わっ」 「返して欲しければ、入ってこい、聖」 にやりと夏目さんは笑うと、俺の顔からだんだんと視線を落として行く。 慌てて水着部分を隠した。 「恋人に隠すなよ。んだ? 小さいのか?」 「ばっ セクハラ! 大体、夏目さんにかかれば全員小さいだろうが! 巨根野郎め!」 俺が本気で顔真っ赤にして怒ってるのに、夏目さんは楽しそうにケタケタ笑っている。 くそう。油断した今だ。 タオルを取り返そうとして手を伸ばす。 するととっさに掴んでいたプールの縁を握る手が、豪快にスルンと滑った。 「危ないっ」 ひらりとタオルが舞い、バシャバシャと水が俺の背中に落ちてくる。 思い切り、夏目さんを温水プールの中で押し倒し、俺は夏目さんに馬乗りになっていた。 「お、積極的だな」

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