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サン! 変化⑪
「向こうから一か月以内に何も接触がなかったら、俺がゲイだと気付いていないのかもしれないから、その時は延長ってことだ」
「え、あ、うん。うん!」
「長引くならバイトを探しても構わないが、今は仕事以外はずっとお前と一緒に居たいから、まだ止めてもらいたい。どうしても金がいるなら俺の会社でバイトがないか聞いてみる」
早口で、感情が声に乗っておらず何を考えているのか分からなかった。
でも偽装恋人の契約中にバイトを探そうとしている俺に怒っているのかもしれない。
「ごめん……」
「っち。別に怒ってるわけじゃないし、聞いてくれたのは助かっている」
とは言ってくれてるけど、歯切れが悪い。
空気がなんだか重くなってしまった。
「契約後にお前が何をしようと俺が口を挟むのは他人だしおかしいかもしれないが、今は契約中だから言わせてもらうぞ」
「う、うん」
「他の奴とは、こんな危ない契約、すんじゃねーぞ?」
「……できるわけないじゃん」
過保護な友達だっているし。
夏目さんみたいに、心が大きい人じゃないと俺みたいな我儘でメンタル弱い奴は相手にされない。
「……そんなに自分の顔がいやか? 怖い、顔面凶器、歩く18禁と言われるよりいいじゃねえか」
「最後のは、顔関係ないんじゃない?」
夏目さんが無駄に色気を撒き散らしてるのがいけないと思う。
「別に、好きでこの顔に生まれたわけじゃない。姉ちゃんだって俺より色も白くないし、顔が入れ換わったんじゃねえかなって思うけどさ」
「そんな女々しい考えが顔に出てるんだよ、馬鹿」
ニタっと笑った夏目さんの顔は、確かに悪役そのものだった。
「お前、大学後はどうすんの?」
「……安定した公務員」
「っけ。夢がねーなあ! 夢が!」
「夏目さん……」
急に胸が痛くなった。これ以上はもう話したくない。
「なんだ?」
「これ以上は、先の事話すの嫌だ。苦しい」
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