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ゴー! ゴーゴゴー!⑧
唇が離れた瞬間、ぺろりと自分の唇を舐め取る夏目さんが俺を焼き焦がすように見下ろしてくる。
「逃げるなら、さっさと逃げとけよ」
息を整える俺を見ながらもう一度親指で舌をなぞる。
その男らしい仕草に何もかも奪われる。
……いや、奪われたいと思った。
「あのさ、夏目さん」
「あ?」
「俺、ちゃんとはっきりさせるけど!」
腰の力が抜けて起き上がれないので、寝ころんだまま夏目さんを睨みつけると、両足で夏目さんの腰をがっしり捕まえた。
「夏目さんが、す、好きなんだけど」
言いながらボッと頭が発火するように熱くなった。
「キスしたってことは、夏目さんも俺に何か言うことがあるんじゃねえの!」
耳まで熱くなった俺を見て、夏目さんがふんっと笑う。
「超愛してる。……全部、食ってやるよ」
「は、反則! 格好いいことを言うのは反則!」
「聖の恋人にさせろ、って言った方が良いのか?」
「え、ふぁっ」
ぷしゅーっと俺の頭から湯気が出てきた。
俺の経験以上の甘い雰囲気に頭から湯気が出ている。
「大人しくそこで沸騰しとけ」
額にキスすると、夏目さんは俺から退いて、運転席へ座った。
って、え。
お、おおおおおおお?
俺、つい夏目さんと再会しちゃった勢いとか嬉しさとか興奮から、すっげ大胆なことをしたような?
「うぎゃーっ」
「暴れてもいいが、体力は残しとけよ」
「う?」
「俺とイチャイチャする体力だ、馬鹿」
うぎゃー!
なんか、夏目さんの声とか背中とか、運転してるその恰好とか、もう何から何まで甘いんだけど。
数ヶ月前、たった数日一緒に住んでただけだけど、あの時の思い出が美化されて、再会した時にどうなるか心配してたのに。
……今、美化された思い出の中の夏目さんより、目の前の夏目さんが格好良すぎる。
男の俺が、男の夏目さんにこんな風にドキドキして泣きだしそうになってしまうのって、なんだろう。
すっごい不思議だけど、当然なのかなって思う。
夏目さんを、好きにならないわけない。
心臓がドキドキじゃなくて、ドッドッと太古みたいに叩かれて震えあがっている。
俺、変だ。
めっちゃ、ドキドキ通り越して、……夏目さんが好きすぎて、胸がぎゅうっと締めつけられてる。悲しいわけじゃないのに、胸が痛い。
痛いし熱いし、息もできない。
「着いたぞ、降りろ」
「……夏目さん」
「なんで泣きだしそうな顔してんだ?」
「俺も、分かんない。なんか、すっごい好きすぎて、どうしていいか分からねえ! 俺、爆発しそう、やばい」
パニックで右往左往してる俺を、夏目さんはククっと笑うと、唇を重ねてきた。
さり気無くキスするこの人は、慣れすぎだ。
風が吹くかのごとく簡単に奪われてしまったじゃんか。
「お前、可愛いから爆発しても可愛いんじゃねえのか?」
「男に可愛いとか言ってんじゃねーよ!」
「いいから、さっさと部屋帰るぞ」
帰るぞ、と言われまた胸が締め付けられる。
この人の一言一言が俺を喜ばせ殺そうとしてくる。
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