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ロック!!襲うぞ!!②
Side:氷田 聖
「おっはよーう。おいで、聖」
すっごい含み笑いで俺を見ながら手招きしてくる吾妻に、俺は警戒しつつ二人分ほど離れて座る。
すると、速攻で席を詰められた。
「まーさか最後までしてないよな?」
ピンク色の唇がやけに色っぽく見える吾妻に探られて、やんわりと逃げる。
「……俺はしたかった!」
「良かったよかった。無理やりしてたらタダじゃ済まなかったし」
「……吾妻」
今度は俺から距離を詰めて吾妻の顔に近づく。
身長だって吾妻がやや高いだけ。
顔の構造とかは全然吾妻の方が綺麗だけど、身体はそう変わらないはず。
「何? 俺を誘惑しようとしてる?」
ピンクの唇をじっと見つめていたら、妖艶に笑って俺の髪を撫でる。
「いや、その……吾妻はその、あのさ」
「はっきり言えよ」
「……最初ってどれぐらいほぐしたら合体できた!?」
「ほ!? が?」
俺の大声に、慌てて左右を確認してからチョップが飛んできた。
「おま、ばっか。お、まじ馬鹿!」
「吾妻の語彙力がなくなってる」
吾妻は髪を掻きあげると、少しだけ頬を染めた。
「俺の初めては、どう説明すっかなあ。最初は玩具で半レイプだったしなあ」
「え、本番しないんじゃなかったの?」
「その人は特別。ってか、俺の話はいいだろ、聖なら焦んなくても色々挑戦したらいいじゃねーか」
「挑戦?」
「相手がアダルトグッズ会社の社長だぞ。色んな道具使えば、後ろなんて簡単にほぐれるから」
「ほ!」
「俺のオススメは、最初はこの細いやつ。で、ビーズみたいな奴の方が抜くときに快感が」
「ぎゃー!」
頭に鞄を被って机に伏せる。
い、い、いかがわしい形のグッズが並んだ携帯画面を見せられて思わず思考が停止してしまった。
「……道具いや?」
「で、できれば、道具に頼らず俺その……」
「ようし。暇、呼ぼうぜ。ゲイ男優なら分かるだろ。俺も聞いとこうかな」
早速連絡し出した吾妻に、お礼を言うべきか恥ずかしくて穴に入るべきか迷う。
「仕方ねえよ、俺らは女じゃねえんだから。でも愛しあいたいなら、……探るしかないからな」
女じゃない……。
その言葉にちょっとだけ胸が痛む。
俺が女だったら、きっとこんな悩みは要らなかったんだろうな。
「お、暇、今から来るって」
「早っ」
「三限目空いてるから昼から抜けれるよな。どこで奢らせようかな。あの人、ちょろいから」
「吾妻っ」
悪い顔をした吾妻が、『牛タンが食べたい!』と可愛い顔文字で書いてるのを見て、ちょっと引いた。
天性の、人を振り回せる悪い奴だ。
だけど、二限目を終え、大学の前に止まっている黄色のオープンカーを見た時、俺は固まった。
「やっほー。今日も可愛いね、吾妻」
「何これ、目立ちすぎ」
「まあね。派手なの好きだから」
この人も……振りまわすの好きそう。
「おー……、おちびちゃん、お久しぶり」
「おう」
「……お兄ちゃんって呼んでもいいから」
「うるさい」
微妙な空気が流れた。
ってことは、俺と夏目さんの関係に気付いてるのか。
「暇さんは実は結構ブラコンだからね。さっさと行こうぜ」
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