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ロック!!襲うぞ!!③
連れて行かれたのは、俺でさえ名前だけは知っている高級焼き肉店。
100g何千円って世界は、夏目さんとの食事では当たり前になってきてたけど、コンビニで働いている俺にとってはびっくりな値段だ。
四日分の給料……。
網の前に座り、適当に注文する二人を見ながら、ちびちびと水を飲む。
「で、暇も巨根じゃん」
「ぶっ」
吾妻がいきなり本題に入るので、飲んでいた水を思い切り吐いてしまった。
「汚ねえな」
「大丈夫? 舐めようか?」
「い、いい!」
暇さんは少し考えてから、水に手を伸ばした。
「俺、ゲイビ男優だけど、大きすぎて本番は大体入ってるフリなんだよね。モザイクで誤魔化してたり。でも受け入れる側は需要ねえのか依頼こねえんだよなあ」
「……暇さんが受け入れる側……」
俺よりがっしりしてるのに。
「でも、そんなの関係なくねえ? 本当のゲイカップルは一方に負担書けるだけ行為はしないで、マッサージしながらお互い高めあったいり、触りあったり、……いきなり全部受け止めようとするのはおチビちゃんだけ負担が多いから、兄貴はしねえよ」
「ほら、俺の言った通りじゃん」
「リラックスすればいいのか!」
「ちょーい待って。緊張して身構えて、おチビちゃんは今、がっちがち過ぎる。心も身体もリラックスしなきゃね」
「む、難しい。でも今日も練習したいし」
「練習って本番はなんだよ、試合ってか」
「じゃあ、リラックスできるローションでマッサージ講座してやるよ」
「え」
何かピンと来たのか、暇さんはにやりと笑う。
「お、いいね。肉食べた後ってムラムラしちゃうし、分かるー」
分からない。
二人の気持ちや考えていることは分からない。
でもマッサージか。
それぐらいなら、教えてもらった方がいいんだよな?
「お、お願いします!」
俺が頭を下げると、二人がにやりと笑った気がした。
「にんにくいっぱい入れて喰え」
「店員さーん。牛タン三人前追加!」
二人ともハイスピードでお肉を食べながら、……俺は。
俺はお肉は夏目さんと食べたかったなと、焼き肉のたれがしみ込んだ割り箸をかじかじと噛んだ。
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