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ロック!!襲うぞ!!⑤
Side:氷田 聖
色んなローションを会社から強奪した暇さんが、なぜか夏目さんのマンションにやってきた。
そして俺と夏目さんが乱したシーツを洗濯したり、軽く掃除したあと、俺も使わせてもらっていた部屋に連れて行かれた。
その部屋のクローゼットから、マットを取り出す。
そのマットを見て吾妻は「本格的かよ」と爆笑した。
でも俺は、何が面白いのか分からなかった。
このマット、海で使う浮き輪ではないよな。うん。
「ほら、さっさと聖も上を脱いでよ」
「お、おう」
マッサージだし男同士だから上の服ぐらいは脱いでも変じゃないよな。
「大丈夫。おチビちゃんが俺を怖がったらダメだから、俺が二人に色々指示するよ」
……ん?
二人?
ちらりと吾妻を見ると、俺の顔を覗きこむ。
吾妻が俺にマッサージ。なんかちょっと色々複雑というか恥ずかしい。
「俺なら怖くないだろ」
「そうだけど……」
「ネコ同士がイチャイチャしても浮気にならねーよ。本番もしないし」
「そうなのか?」
「男の友情で抜きあいっこしてるだけだから」
「ふうん……?」
確かに吾妻は日頃からボディタッチは多かった。
それに、男同士のそーゆう話は俺よりこの二人の方が詳しいわけだし。
上の服を脱いで、吾妻と一緒にマットに寝そべる。
すると、キュポンと音を立てて吾妻がボトルを開ける。
ふわりと甘い匂いが強く香ると、すぐにとろりと胸にぬるぬるしたローションが掛った。
「まずは俺がマッサージしてやると」
唇を舐めながら、吾妻は強気に笑った。
「……どう? こうやって身体をマッサージするとさ、身体の力が抜けていってふわわんってしない?」
吾妻の胸と俺の胸を合わせながら水音を立てる。
薔薇の香りというか……消臭剤とか芳香剤みたいな香り。
それでいて、ちょっとアルコールもあんのかな?
なんか酔いそうな香りだ。
「そう。身体の力をもう少し抜いて」
胸を優しくマッサージされて、吾妻だから嫌な感じもしないし擽ったいだけ。
こんな風に俺が夏目さんをマッサージすればいいのかな。
「ほら、今は何も考えなくて良いから、俺のやってることを覚えて行ってよ」
「え、う、うん」
ちゅっと鼻にキスされる。
「乳首の開発は、俺がしたら怒られちゃうかな」
胸の尖りのまわりを撫でるが、中心だけはなぞらなかった。
そのもどかしい動きはちょっとむずむずする。
でも甘い香りで頭がふわふわしてそれ以上の感情が浮かばない。
「おー、ネコちゃん二人がいちゃいちゃって可愛いよな」
デレデレと笑う暇さんの後ろのドアが、急に勢いよく開いた。
「何がどうしてて可愛いんだ? あ?」
「な、夏目さん!」
「今すぐ、聖の上から退け」
夏目さんは俺を一切見ずに、吾妻の首根っこを掴むとぺいっと床に投げた。
「お前もだ、聖」
「え?」
きょとんと俺が夏目さんを見上げると、冷たい瞳で見下ろされた。
これって、怒ってる?
焦っておろおろとする俺に、夏目さんが大きく舌打ちをした。
「兄貴、聖にマッサージの仕方教えてたんだよ。俺が触れたら怒るだろうから、ネコちゃん同士で」
「そうだよ。別に俺は聖は友達で恋愛対象ではないし」
「うるせえな」
夏目さんはたった一言言うと、胸がべちょべちょな俺を顎で指示する。
「お前は今すぐ風呂だ。全部洗い流してこい」
「あ、あのさ、二人を怒らないでほしい。俺が相談したら色々親身になってくれたんだ」
「いいから! さっさと行け!」
怒鳴られて、びくりと大きく身体が揺れた。
恐怖ではなく、驚いてだったのだけれど、夏目さんが一瞬焦った様な顔をしたので、笑って誤魔化す。
「あ、はは。ごめん、なんか俺、間違えたみたい。びっくりしただけだから」
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