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それは甘い、恋の痛み。⑨

22時ジャスト。 店内に人もおらず、タイムカードを時間丁度におす。 ここはどんなに忙しくても、時間になるとそこで残業もせずに終われるので楽だ。 「お疲れ様っした」 「聖君、肉巻きおいしかったし押し寿司も美味しかったってお礼言っておいて!」 「なんかお礼に持って行っていいけど、コンビニなんてお口に合うかねえ」 「いいよ、いいよ。俺が代わりにお礼しとくから。じゃ、今度は水曜に来ます」 挨拶もそこそこにロッカーへ向かうとさっさと着替える。 前は家から五分もしなかったからここにバイト決めたけど、拓馬の家に住むとなると遠くなるのは不便だよなあ。 それに姉ちゃんがここを引っ越すとなると、俺も居なくなるべきだろうし。 せっかく時給も上がってくれたし、良い場所だったんだけど、どうしようか。 「何を考え込んでるんだ?」 首傾げて唸りながら裏口から出ると、既に拓馬が車から降り煙草を吸いながら待っていてくれていた。 「拓馬!」 「店の前で待つと迷惑だろうから裏で待っていた。偉いだろ? 褒めろ」 煙草を携帯灰皿に押し付けながら、にやりと笑う。 そんな、いつもどおりな拓馬の行動に、衝動的に抱きつきたくなった。 が、一応いつ誰がくるか分からないのでこんな場所でそんなことしていいわけねえ。 「どうした? さっさと乗れ」 「あ、うん。腹減った」 「差し入れは喰わなかったのか」 「喰ったけど腹減ったの。な、ラーメン屋行こう、ラーメン。この先に美味しいとこあるんだ」 「ラーメンか」 「そこのチャーシュー美味しいから、オススメだよ」 肉の情報に機嫌がよくなったのか、拓馬は上機嫌でラーメン屋まで連れて行ってくれた。 そのまま二人でチャーシューメンを替え玉して食べて、腹いっぱいにして食べた。 「お前、そんなに喰って身体は大丈夫なのか?」 「へ?」 「昨日、激しくしたつもりはねえけど優しくしたわけでもねえしな」 部屋に帰って第一声が、いきなり昨日を思い出させるようなことだったので、俺は焦った。 耳まで熱くなって、沸騰したやかんみたいになっていたと思う。 「ちょ、ちょっとまだ下半身は動かすと入ってた感触とかするけど、痛くて動けないとかは、ない、かな」 冷蔵庫から炭酸ジュースを取り出して、ソファに座りながら飲む。 すると、ネクタイを緩めた拓馬はしばらく沈黙していたが、同じく冷蔵庫から缶ビールを取り出すと隣へ座った。 「へえ。そうか」 なんで隣に座るんだよ! き、昨日の今日だし、今日は流石に、なし? ……俺は別に、痛いだけじゃなかったし良いんだけど。 あ、でもラーメン食べてぽっこりしたお腹を見せるのはどうだろうか。 萎えないかな。 というか、これだけ食べたらお腹圧迫しちゃうのかな。 缶ビールを飲み干した拓馬がその腕をソファの背に回した。 大きく軋むソファに、俺は変に身構えてしまった。 「……聖」 「はああい!!」

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