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恋人生活④

「っ。お前は」 苛立った拓馬の声も、快楽を吐きだす感じで掠れてセクシーで、更に身体が熱くなっていく。 声が、体温が、優しい言葉が、好き。 巨根だって関係ない。大きくたって、俺は絶対に受け入れてみせる。 俺にガツガツ当たってるくせに、実は全部入ってないとか言ってて驚いたことがあるけれど、それでも拓馬は気持ちが良いらしいのでよしとする。 好きだ。 すげえ好き。 奥を暴いていって、俺に愛を注いでくれる拓馬が好きだ。 離れたくない。 「あっ ふ、かっ――んんっ」 受け止めきれない快楽が、言葉になって外へ吐きだされる。 尖った俺の先も、肌がぶつかる度に拓馬の腹に当たって刺激をうけていた。 「た、くまぁ」 揺れる視界の中、片手を伸ばす。 すると、額に汗を滲ませる極上の男が俺を見下ろしていた。 「――ん?」 「俺、イイ男になってやるから、だから絶対、離すなよ」 俺からは離れないからな。 恰好良く決められない言葉だったけれど、拓馬は口の端を上げて笑う。 それは、拓馬が嬉しくて照れてる表情だと俺は知ってる。 「じゃあ今日は朝まで離してやらねえ」 「え、あっ、ぁぁっ」 円を描くように腰が押し付けられて、一気に昇りつめた。 一緒にイけって言ったろ。 泣きそうになりながら睨みつけると、拓馬はにやにや嬉しそう。 そして、再びキスしてくると、舌が入るのと同時に更に深く深く繋がって目を見開いた。 それだけで翻弄されてしまう。 けど、大切にしてくれているのも感じられて嬉しい。 今夜は一晩中、こうやって心も身体も繋がっていたい。 ずっと、この時のまま、止めてくれたらいいのに。 「聖」 耳に唇を寄せて、甘く囁かれた。 「俺にはお前しかいねえよ」 その言葉で理性を失った俺は、真っ白になりながらキスを強請り、背中に手を回し、熱くて伝えきれない気持ちを、お互いにぶつけながら朝までずっと抱き合っていた。 ――俺もだよ、拓馬。 *** 朝目覚めると、すでにスーツは跡形もなくなっていた。 寝た振りしている拓馬を揺さぶり問いただすと、さっさとクリーニングに出したらしい。 ホテルみたいに大きなフロントのあるマンションだと思っていたけど、そんなサービスもしてるんだ。 「……腰、痛くねえか?」 「痛い。あそこも痛い」 にひっと笑うと、複雑そうな顔をされた。 「けど、――すげえ幸せ」 とうっと勢いよく拓馬の胸に飛び乗ると、呻き声一つ上げずに抱きしめてくる。 俺の恋人、恰好良すぎなんだけど。 「朝飯、俺が作ってやろうか?」 「作れるのか?」 「オニギリぐらいなら」 何もできないまま嫁には出せないと、ちょこっとだけ姉ちゃんに習った。 形は不細工だし、ぽろってなるかぎゅっと締めすぎて硬いけど。 「そうか。だが俺は朝から肉を食う奴だから」 「なんだよ、オニギリは嫌なのか」 「オニギリも肉も食う前に、――も一回ぐらい食っておこうかなって思ってる」 「は?」 「まだ、俺は満腹じゃねえってことだよ」 遠慮しなくなった恋人は、そう言うと俺の喉に噛みついた。 ああ、不覚。 このまま食べられてもいいなんて、思ってしまう俺がいた。

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