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エピローグ⑧
二人はヒートアップして花渡さんに暴言(?)を浴びせ始めた。
「じゃあ、何? 優しくしてって言えばいいの? 花渡の分際で生意気!」
「そうだそうだ。俺だってタイプじゃなくても仕事で勃たせなきゃいけないときあって苦労してるし」
「暇はちょっと黙っててよ」
……もう。
喧嘩してるのかイチャイチャしてるのか分からないけど、うるさい。
全然集中できないじゃん。こっちは大きすぎて頬張った不細工な顔のままだぞ。
でも混乱に生じて、いつもなら逃げられていた俺からの奉仕をさせて貰えたからよかったのかな。
……拓馬の馬鹿。
俺だって仕事始めて忙しくなったら、同じ家に居ても擦れ違うかもしれないんだぞ。
大体、付き合ってまだ一年も経ってないんだから、色々経験させてくれても良いじゃんか。
もっと、色々してみたい。
拓馬は大人になりすぎてて、色々達観し過ぎだ。
えいっと喉の奥まで押しやると、どろりとした苦い味が口の中に広がる。
えっ
よくよく感じてみれば、口の中の芯がさらに太く――熱くなっている気がした。
「っくそ。おい、花渡」
「はい、社長」
キスして黙らせていた花渡さんが髪を掻きあげて、吾妻の口から離れた。
「一時間だ。一時間でそいつらを躾け直せ!」
「……それは食い千切れと言ったことでしょうか?」
「一時間で盛りが止まらねえんならそうしろ」
「了解致しました」
へ?
二人のやり取りに視線だけ動かしていたら、ぐいっと身体を抱きかかえられた。
「拓馬?」
「俺に肉の御預けをさせた恨みは、――大きいぞ」
「へ? は?」
「部屋に戻って一時間で終わらせる。で、さっさとメシだ」
俺を肩に抱き抱えたまま、易々とカードキーで施設から出てエレベーターに向かう。
ズボンだってちょっと乱れてるのに、堂々としちゃって。
「い、一時間で俺が満足するわけねえし」
「あ? お前が俺を満足させるんだろ?」
「なんでだよ! 俺の就職祝いだろ」
「誘って、舐めてきたのはお前だし」
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