113 / 115

エピローグ⑨

「……だってさせてくれないから」  俺だって恋人に気持ちよくなってもらいたいんだ。  ただでさえ拓馬はじぶんのブツが大きいのを知っていて我慢してきたことが多いだろ。  俺にぐらいもっと解放敵でいいんだ。  朝まで繋がっているの、けっこう好きだし。 「ああ、だから今からいっぱいさせてやるぞ。感謝しろ」 感謝……。 「恋人なんだから、……感謝じゃなくて気付けよ。ばか」 「お互い様だろ」 言いくるめられた感が否めなくて、ちょっと悔しい。 舐めたいとか。奉仕したいって気持ちの底に、――拓馬への溢れんばかりの恋心があるってなんで気付かないんだよ。 少しでも拓馬が喜んでくれたり、俺に何か頼んでくれたら俺だって安心すんだよ。 「……もう立たねえからな! 萎えた」 「あ? お前が立たなくてもえっちできるぞ」 カードキーで颯爽とドアを開け、寝室のドアを蹴る。 そしてベッドに俺を下ろすまで、俺は打たれた獲物のように大人しく力を抜いて諦めていた。 くっそ。 男心のわからない巨根野郎め。 なんでこんな奴好きに……。 いいとこしかないから、好きになるしかないけど。 俺を一番に優先しちゃうところは嫌だ、馬鹿。 なんて後悔しそうになった瞬間を、見計らったかのようにベッドに大きな紙袋を置いてきた。 「なに?」 「就職祝い」 拓馬が俺に? がばっと起き上がり、紙袋と拓馬の背中を交互に見る。 「開けていいぞ」 お言葉に甘えて、黒の紙袋から箱を取り出す。 すると高そうな皮靴が出てきた。 「すげー、ありがとう!」 「まだ」 「あ?」 紙袋を更に覗きこむと、箱が何個も入っている。 ネクタイ、靴磨きセット、定期入れ、鞄? まるで幼稚園とか小学校の入園準備みたいな、必要そうなものが全部そろっていた。 馬鹿だな。 こんな子ども扱いしやがって。 親に捨てられてから、こんなふうに全部一から準備してもらったことがなくて、なんかちょっと悔しい。 のに、嬉しかった。 「あんま高いとお前がうるせえから、――そこそこにしといた。拒否るなよ。要らないとか言ったら、代わりに下に突っ込むぞ」 「ばっ ……嬉しいから拒否れねーし。ありがとう」 窓際で照れくさそうにしている拓馬の背中に抱きつく。

ともだちにシェアしよう!