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ニ、百万円です。

その昔、雨が一向に振らず畑や田んぼが枯れていき、飢えで村の人たちが衰弱していった。 すると、やんごとなき身分の貴族が、牛車から降り立ち町の人々に食料を配った。 その後、その貴族の指揮で川や池が作られ、少ない税しか貰わず人々から慕われた。 やんごとなき美しいお姫様と、凛々しいご当主は、その地に根付き――。 「何それ、おとぎ話? 超眠くね?」 欠伸をした暇が、むにゃむにゃと枕に抱きつきながら退屈そうに言った。 「家柄とか血筋とか、何それ。超退屈」 「……まあそうか。そうだよな」 「今どき、そーゆうのに縛られるのってさ、呪いだよ、呪い。俺達には明るい未来があっても、――過去はいらねえよ」 ぽいっと枕を放り投げて、暇が俺に両手を差し出した。 「今、この時間さえあればいい。吾妻の時間をちょうだい」 「……はいはい。そうでしたね」 急いで服を脱ぐと、ベッドに上がった。 すでに暇は船を漕いでいる。 俺の名字が格好いいって言うから、名家だぜって説明してやったのに。 青桐 暇。 ゲイ男優らしいけど、俺のバイト先のデートクラブのお得意様であるアダルトグッズ会社の息子でもあるらしい。 だから、店長は無理なリクエストも多少は叶えようとしたらしい。 それで指名されたのが俺。 初めて店長に呼び出されて会ってから、この関係は三回目だった。 初めて会ったのは、バイトして一年目。 高級デートクラブ『ハーツ』 はっきり言って、これが田舎で偽善者の顔をして生活していた土御門さまの本当の収入源だ。 社長の如月家は代々土御門家に仕えていた家来らしい。 俺は経営権は社長に譲るって言ってるのに、拒否された。 まぁ後に、花渡に勝手なことをするなと怒られることになるし譲らなくて良かった。 それにバイトとして進入も、楽々できたし。 「私も別に経営権は要りませんですえ。面倒やから」 「……相変わらずデタラメな方言だよね。どこ出身?」 「ふふ。出身地を悟られないように、ね」 嘘癖え。狐みたいな目で、上手に嘘を吐く大人。 年齢不詳。着物着て長髪だけど、性別も不詳。 でもそんな騙し合える相手の方が退屈じゃなかった。 「で、呼び出した例のお得意様ってのは?」 「ええ。青桐 暇さん。年齢は貴方より年齢はいくつか上。ゲイ男優としてデビューしたばかりの男前よ」 「で、内容は?」

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