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三、本番はしないけど。②、5

「なんかこの先、親は絶対俺を見捨てないんだなって。俺がしたい仕事や好きになる相手の性別とか全部頭から押し付けて、俺の意見は聞かなくて。――それでも幸せだと思わせようとしてる。逆らうなんて行動、俺に全く与えない様な洗脳された籠の中だった」 「ルイくん」 「一度だけ、俺を連れ去ってくれた人としたエッチな悪戯が、唯一の親の言いつけどおりじゃなかったこと。親に逆らったスリルがたまらなかった。ふふ。俺、いつからおかしくなっちゃったんだろうね」 ワインなんて本当は飲めないのに、恰好つけてテーブルに置いてみたけど、俺は君にまで嘘の自分で隠そうとしてたって、馬鹿正直に吐露した。 花渡や、暇や、――ルイくん。 三人の話は、俺の世界をぶちこわす。 俺が知っている世界とは、本当に同じ世界で生きてるのかなって。 「――じゃあ、今日はイケないことしよう。そんなクソジジイの言いつけ、忘れてしまおう」 「や、その、本当にそれは」 「でも、――硬くなってるよね?」 ズボン越しに触れると、硬くなりズボンの中心を膨らませている。 それを掴むと、小さく息を零した。 「どんなことされたの?」 「……んっ だめ。あっくん、待って」 言葉では嫌がるのに、下半身が反応している。 言葉では拒絶していても、期待に頬を染め、ゾクゾクと身体をしならせるルイくんは、可哀相なほどに可愛かった。 逆らう? 馬鹿だよね。 親が会員になってくれたデートクラブ内だけで、性癖を吐露するだけ。 本当に愛する人とは結婚もできないで、与えられた範囲でこの始末。 だったら会員費分ぐらいは相手してあげるのに。 「俺と居る時間は、――悪いこといっぱいしようか」 「……うん。ありがとう、あっくん」 「吾妻で良いよ。それより、ズボン、自分で脱げる?」 俺の言葉に素直に頷く。 土だらけのじゃがいもくん。 男のちんこなんて触っても何も楽しくねえよ。 なのに、ぞくぞくした。退屈なデートじゃねえ。裸で抱きしめて眠るだけじゃない。 ルイの心の底で願っていることを、俺の手で叶える。 ぞくぞくした。そして、少しだけ悲しくなった。 ここは欲望を叶えるデートクラブじゃないじゃんって。 *** 暇とのデートの日。 「……なんかさ。思ってたのと違う」 「え、ああ。ごめん、今日は癒されたい気分じゃなかったんで」 ペロッと舌を出す暇は、最新のゲーム機二個持って俺にレベル上げをさせて一緒に対戦してほしいと言ってきた。 今日のホテルはいつものあの海の中って感じのホテルじゃなくて、恐竜のテーマパークみたいなラブホ。 廊下は壊れた檻や、恐竜の鳴き声が聞こえ、遠くからは叫び声、足音、部屋の中も窓ガラスが割れて密林が部屋の中に飛び出しているこだわり。 一応、一か月前から予約していたらしいからウける。 「いや暇じゃねえよ。なんていうの? もっとさ、高級デートクラブって言うから、厭らしいことされたり、大金払って身体売ったりするかと思ったら、拍子抜けするぐらいえっちな方向に行かないんだけど!」 「……そりゃあデートクラブだからじゃない? ムラムラするなら俺、風俗行くわ。行く必要ねえけど」 「はあ? だってお前、俺、時給三万とか五万とかでキスも手もねえデートばっかだよ!」 ルイくんに至っては、膝枕とか手を繋いで夜景の見えるデートスポットを散策とか。 手で抜いたり、キスしたり、俺が積極的にすると、ゾクゾクって簡単に蕩けるのに。 そっちよりもイチャイチャの方が好きみたいだし。 「そりゃあ、地位ある奴はなかなかゲイだって言えないんじゃねえの。だから、金で愛を買うわけよ。一時でもさ、偽物でもさ、安心できる時間を買いたいんだよ」

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