29 / 132
四、脅迫したいな。⑦
慌てたら、ルイ君がおでこにチュッと口づけを落とした。
「ふふ。浮気見つけて修羅場ってる恋人みたい」
何故か嬉しそうなルイ君に、思わず吹きだしてしまったけどもう一度小さく謝った。
今は俺はルイ君とデートしてるんだから、違う奴の事で上の空はいけなかった。
「俺ね、性欲を吾妻くんで解放したいわけじゃないんだ。今は、学生みたいなイチャイチャした時間を経験したいだけで……でも吾妻君が落ち込んでいるなら、こっちかな」
鞄の底から英語のDVDのケースを取り出したかと思うと、ルイ君は頬を染めて中を開けた。
「この前、君のデートクラブの社長から貰ったんだ。裏DVD」
「は?」
「俺、ゲイビは初めてで。……一緒に見てくれる?」
「ルイ君っ」
余りにも可愛い発言に、思わずガバッと抱き締めてしまった。
俺の周りの大人たちが歪んでいるせいで、こんな発言しちゃうルイ君が可愛すぎて癒される。
「あ、で、でもむ、無修正らしいんだ。吾妻君はゲイじゃないならきつくないかな?」
「全然」
なぜなら俺は一度、花渡に舐めてもらってるし。
「良かった! 実は一人で見るの恥ずかしくて! ほら、でも見てみたかったんだあ。この男優さん、すっごく素敵な身体してて」
「へえ。どいつどいつ?」
ウキウキとルイ君が何も書いていない真っ白なDVDをデッキに入れる。
「あのね、青桐暇って言うんだけど、すごいよ。むっきむきだし、巨根なんだって」
「うえ!」
「あ……無理なら良いんだよ?」
顔色を曇らせたルイ君に、慌てて抱きつく。
「いや、巨根って男的に悔しいなって思っただけ。ぜーんぜん。ゲイビ見ながら興奮しちゃうルイ君、可愛いだろうなあ」
「もう、吾妻君ってば」
耳まで真っ赤になったルイ君が、ソファまで下がる。
俺も隣で何気なくテレビを見た。
『ノンストップ! 触ってません、揺れて当たっただけなんです!』
なんともふざけたタイトルと共に、電車の窓に押し付けられた裸体が浮かぶ。
マニアックな。
よりによって痴漢ものかよ。
このタイトルは笑った方が良いのか迷っていたら、すぐに画面が変わった。
満員電車じゃなくて、酔っ払い風の暇が座席で眠っているだけ。
そこにイケメン風の男優が乗り込んできた。
何故か爆睡している暇の隣に座ってからの、突然のエロ!
なんでいきなりズボンのファスナー下ろすんだよ!
ってか痴漢ものタイトルじゃなかったの?
揺れてたせいにできないほど、いきなりのエロ!
俺が爆笑をこらえつつ、ルイ君の様子を伺う。
するとルイ君は、ソファの上のクッションを両手で握りしめ、食い入るように見ていた。
「わ、いきなり握っちゃうんだ」
「俺もルイ君の握ったことあるじゃん」
「で、でも見て、まだ反応してないのに男優さんの両手もちだよ! 大きい!」
わくわくしている子どもの様な可愛い反応。
でも。
「わっ」
クッションとルイ君の間に手を入れてズボンを触ってみた。
……半起ちじゃんか。
「コーフンしてるの?」
「……い、言わないでよ」
もじもじするルイ君は、本当に可愛かった。
こんなに可愛いのに。
それなのに、親に逆らえず女と結婚しちゃうんだよね。
ちゃんと女とえっちできんのかな。
「ルイ君、俺に触られるのは嫌?」
「……や、じゃない」
ともだちにシェアしよう!