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四、脅迫したいな。⑧

「じゃあ暇に触られてるって思って目を閉じてみなよ」 「そんな。吾妻君に悪いし」 「良いから、ほら」 「や、んっ  だ、だめってば、んっ」 頬を染めつつも、首を振るルイ君の反応に喉が鳴る。 これぐらい素直で、これぐらい可愛い反応して、これぐらい純粋だったら。 だったら花渡だって暇だって、手を出してしまうんじゃないのかな。 カーペットの上を、ルイ君の足が快感で仰け反っていく。 爪先までピンと張りつめて、涙をためて俺を見る。 「だめ、し、死んじゃう」 ちょっとだけ震えだしたから、過去のトラウマも蘇ったのかもしれない。 俺は手を離すと、頭を撫でて頬に口づけした。 「ごめん、じゃあテレビ見ながらやっていいよ」 「……う、うん」 もじもじと足を崩しつつも、テレビの暇を見る。 いつの間にか、暇は相手を組み式、足を大きく開かせていた。 『あっ 、す、げっ』 ゆらゆらと腰を穿ちつつ、暇の身体に目が釘つけになる。 引き締った身体。 滴り落ちる汗。 意地悪な言葉で相手を辱めても、動きや触り方は優しい。 作られた偽物の暇だった。 本人は毎回、毎回、身体を売っては自己嫌悪で一晩俺を買うというのに。 「な、なんかす、ごい」 ルイ君のドキドキが伝わってくる。 演技上の暇は、確かに格好いいのかもしれない。 ルイ君がもじもじしていた足を小さく開き、硬くなった自身を握りながらテレビを見る。 小さく荒く吐く息が可愛くて、俺だって我慢できなくなっていく。 「ルイ君、一緒にシよ」 恥ずかしがるルイ君の手を奪い、俺の下半身に導く。 真っ赤になりながらも俺のズボンを下ろして、下着の上から触れてきた。 「同じぐらいだろ?」 「ぷ。も、もう、吾妻君ってば」 「お互いのを触ってみよっか」 暇の体の揺れに合わせて、男優が喘ぐ。 その声に触発されて、ルイ君は恥ずかしそうに乱れていく。 後で自己嫌悪に陥る癖に、それでも止めない。 それでも怖くてまだ本番まではやろうとしない。 「あ、づまくんの、熱いね」 ルイ君の顔が快楽で落ちていく。 素直で可愛いなって思う反面、どうしてここまで自分を押し殺して親の言いなりなんだろうって思う。 「ルイ君、もういいから、さっさと手」 「ん?」 「しごいてよ」 たった一言で真っ赤になるや否や、大きく頷いて触りだした。 ルイ君とはこんな風にいちゃいちゃして遊んでいるように見えるけど、暇の次の太客だ。 友達のように、時には恋人のように過ごしても、根っこではこれ以上は無駄だとブレーキがかかる。 こんなに今は距離が無いのに、お金で結ばれた縁が俺を苦しめていく。 ――馬鹿なのは俺の方。 デートクラブに何を求めているのか分からなくなって頭が真っ白になる。 快楽で溺れて誤魔化そうと思ってももう遅い。 俺はこれだけじゃ満たされない。

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