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四、脅迫したいな。⑩
「さあ。なんか耳ざわりだったんだよね」
嫌な言葉につい反応してしまっただけ。
まあ俺の事か分からないけど。
俺の事でも別に構わないってちょっと投げやりにさせた。
それぐらい俺の花渡への気持ちは、沸々と怒りにも似た感情が芽生えていたらしい。
自分の容姿が人より良いのは理解してるから、友達とか自分から作りに行ったことがないせいで、周りに今居ないやつらに興味が無かったのは本当だ。
きっと同じ大学だったら暇ともつるんでいたと思う。
それできっと。
一人でも平気だって澄ましてる花渡を目で追って、からかって、近づいて。
今みたいに一人で沸々しちゃうんだろうな。
「やばい。俺、今超心が渇いてる」
「まじか。合コン? 合コンしちゃう?」
「私が良い子紹介しちゃうよー」
「ってか私にしちゃうー?」
少し騒いでも、マイクを持って講義してる教授の目には映らないのも面白くて、適当に返事をしておく。
実際、ルイ君みたいにバイト感覚でなら彼女も作れそうだなって思ったら、馬鹿みたいに笑えたから。
数人の友人に囲まれて喋りながら、校門をくぐっていると一台の古いベンツを見つけた。
中に乗っている花渡も、俺を見てすぐに視線を逸らした。
きっと俺が友達と居るからだろう。
女友達の一人が腕を組んできてるのも気にしてくれたのかな。
「じゃ、ここで」
するりと腕から抜けると、皆から不満そうな声が聞こえてくる。
それを笑顔で交わしつつ車を指差す。
「親戚の兄貴。多分、最近遊んでるから説教だわ」
頭をポリポリ掻きつつ、皆に手を振るとドッと笑われたので冗談と思われたかもしれないが抜け出せた。
本当の事を言っても得にならないし、本当の今の俺と花渡の関係があいまいだったから。
だって俺はお金をあげてないけど、ご当主の位置で。
自分でもう十分稼いでる癖に花渡は未だに土御門御殿に住んでいるのだから。
「宜しかったんですか?」
無言で乗り込んだ俺に、表情変えずに尋ねてくる。
携帯画面を眺めているより、若干マシなぐらいの無表情さ。
「あんたが俺に会いたいって言ったら、他は断るに決まってるだろ」
まるでお前を優先してやったと押し付けるような発言に、花渡は表情を変えなかった。
「……お前、超つまんねえ」
何か反応してほしかった。
何でも良いから、いっそ嫌ってるならもっとゴミを見る様な目で見ればいいのに。
「もういいよ、話って何?」
「土御門御殿の老朽化について、です」
なんで俺の言葉とか散々無視しといて、そっちの話は即答なんだよ。
「実際に見てもらおうかと思って」
「ふうん」
お前の好きにしていいって言ってるのに、なんで俺にあの家の事を聞く必要があるんだよ。
老朽化が激しいなら修繕するか、壊して土地ごと売ってしまえばいい。
「あ、そう言えば数日前に暇に会ったから金貰ってたんだった。隠したくてバイト先に預けたままだ」
「一カ月に一回じゃなかったんですか?」
「……さあ。何かすげえ落ち込んでたから」
お前に相手にされなくて、とは言わないけど、暇が花渡に執着してると分かったらどんな態度に出るんだろうか。
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