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四、脅迫したいな。⑭

Side暇 昔々、そのまた昔。 俺は生まれてきてはいけなかったと、俺を産んだ女性が発狂したらしい。 生まれた瞬間、この手で殺して、相手に送りつけよう。 その復讐の為だけに産んでくれたらしい。 兄貴と、兄貴の父親が生まれた瞬間俺を逃がしてくれて俺は生きてる。 残念ながら生きてる。 女性は、俺のことを大事に、――大事に可愛がって、愛を持って産んだって笑ってる。 純粋な処女みたいな、汚れの無い綺麗な顔で笑ってる。 俺はその顔をたまに、物珍しく見に行っていた。 もしかしたら、今日こそは母親の部分を感じられると思って。 だけど、無理。 その美しい女性を見ても、母親だと感じられなかった。 俺の身体は汚れているし、女性に興味もてない。 というか、女性が妊娠するってことが怖かった。 だけど、どうしても寂しい日はあるし、どうしても狂いそうなほど身体が熱くなる日もあった。 そんな日は本当に誰でもよかったんだけどね。 『ん、ぁっ  ゃ、めっ』 ――ああ、超最悪。 電話越しに吾妻の声を聞いたら、俺のトラウマ絶好調で再発。 電話を切るのが怖くて、そのままスピーカーにしてバイクに跨った。 んで、花渡の家を探しに兄貴の家へ向かう。 兄貴の車があるのを見て、安堵したのは覚えてる。 それと同時に、兄貴の顔を見た瞬間、吐いたのも。 「どうした! 暇? 暇!」 「揺さぶらないで。超リバースしちゃうー」 ぐらんぐらん兄貴に揺さぶられて、自分でも分からないけど笑っていた。 「花渡の家の住所教えて欲しいんだ」 「は?」 「男の子が、襲われてる?かも? いや、違うかもしれない、けど、やばい、かも」 また吐き気がこみ上げてきて、ウウッと手で口を押さえた。 「顔色が悪いぞ」 「うーん。なんでだろうね。セックスしてるって思ったら気持ち悪くなっちゃった。俺、ゲイ男優なのに」 だめだー、はくー、とトイレにダッシュしたら兄貴が心配そうについてきた。 「もしかしたら、二人とも愛そっちのけで、セックスしようとしてるから助けに行きたいんだよね。妊娠はしないだろうけど、ね」 だから車貸して、と言ったら兄貴は無言で貸してくれた。

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