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愛について。①
Side:暇
断言する。
俺が生きるよりも段ボールの中に見捨てられた子犬が生きる方が幸せだ。
俺の生涯なんて犬畜生より碌でもない。
年月と吐き出す二酸化酸素の無駄だと思う。
***
兄貴と花渡に強制送還を言い渡された日。
俺の家の前で犬が捨てられていた。
なので可哀相だから獣医に見せて色々予防接種して今は俺と父さんと狂った母さんと犬のイソギンチャクの4人家族だ。
「なんでイソギンチャクなんだ?」
何犬だろうか。耳は垂れてるけど鼻は黒いし手足は短い。雑種なんだろうな。
父さんは、母さんとイソギンチャクに手を振りながら笑っている。
「母さんが決めたんだ。まあなんで、と俺も尋ねたが母さんは首を傾げていた。知らないらしいよ」
「……そうか」
母さんは俺が拾って来たと知ったら虐待でもするんじゃないかって思ってたけど、違った。
俺には全く興味がないらしい。というか多分、息子だと忘れてるだろう。
「お前、しばらく仕事は休んで、ここで事務でもしないか?」
「なんで? 昨日も会社の周りにあいつらの車でもあったの?」
質問に質問で返すと、父さんは『そうだ』と隠さずに断言した。
「でも違約金高いし。『ビキニ焼けのお尻がキュートな攻めごっくん10連発!』っていう俺が発射10回する話だし、このビデオの為に日サロ通ったし』
「……それはちょっと面白そうだな。息子の喘ぐ姿は見たくないが、それなら見てみたい」
「まじかよ。親父すっげー。今度貸すわ」
親父、と呼んでいいのかいつも違和感があるものの、遠慮すれば兄貴が怒るからこれでいいかと諦めている。
本当は親父の母方の青桐さん宅に養子に行ってるから、とっくにこの家には籍はないのに。
「そういえば親父、お願いがあるんだけど」
「ああ、お前がお願いとは珍しいな」
嬉しそうな親父に、俺は頭をぽりぽり掻きつつ覚悟を決めて言う。
「俺にちゃんとした弁護士雇ってほしくて。花渡は兄貴の会社の企業弁護士だろ」
「ちゃんとって、そっち方面の強い弁護士ってことか。そう言われてみればそうだなあ。花渡君が自分からすると言ってくれてたんだけど」
「だめ。花渡は、俺の大切な友人……? の大切な人だから危険な仕事は止めてほしんだ」
吾妻と俺の関係は友人ではないように思えたがいい言葉が浮かばずそう言うことにしておいた。
「なるほど。すぐに手配しよう」
「頼むっス。兄貴はすぐ心配するから黙っててね」
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